わた雲

旬のもの 2023.04.07

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こんにちは。気象予報士の今井明子です。
暖かい春の日は、空を眺めながらゆったりと散歩する余裕が生まれます。晴れた空にぽっかりと浮かぶのがわた雲。その名の通り、綿をちぎったような形をしています。わた雲とひとことでいってもさまざまな形があり、「この雲は犬に見えるなあ」「いやいや、ロールパンに見えるかも」など、雲を見ながらあれこれ想像するのは楽しいものです。

わた雲は、正式には積雲といいます。わた雲のように立体的な形の雲には「積」という漢字が使われるのです。わた雲は、上昇気流によってできます。たとえば、晴れた日に太陽で地面が温められると、地表付近の空気が温まります。暖かい空気は軽いので、上昇します。すると、上空に行くことで次第に温度が下がり、空気中に含まれる水蒸気が水や氷に変化します。これが雲になるというわけです。空気の上昇はそのうち止まるのですが、上昇が止まった高度が雲のてっぺんとなります。

わた雲は晴れた青空に浮かんでいるのどかなイメージが強いものですが、ときには嵐をもたらす雲に変化することもあります。

夏になるとモクモクとソフトクリームのような形をした入道雲と呼ばれる雲をよく目にしますよね。これは正式には雄大積雲と呼ばれ、わた雲が発達したものです。上昇気流が強いので、空高くまで成長しているのです。

上空に寒気が入るなどの原因で、さらに上昇気流が強くなることもあります。すると、この雄大積雲が成長して雲のてっぺんが対流圏と成層圏の境目にまで到達します。雲は原則として対流圏を越え、成層圏の中にまで突き抜けて成長することはありません(上昇気流が強すぎると、勢いあまって雲の頂上が少しだけ成層圏に突入することはあります)。

ですから、雲は対流圏と成層圏の境目に沿って横方向に広がります。このような状態の雲は「かなとこ雲」と呼ばれます。かなとこ雲は正式には積乱雲といいます。積乱雲といえば、雷雲という別名もあるとおり、大雨や雷、ひょう、突風など、さまざまな激しい現象をもたらす存在です。

のどかに見えるわた雲の存在も、縦方向にモクモクと伸びてくればそろそろ注意が必要です。雨雲レーダーと雲の位置を確認して、急な大雨を避けたいものですね。

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今井明子

サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。

今井明子公式ホームページ

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