こんにちは。料理人の川口屋薫です。
今日のお話は「ぜんまい」です。
ぜんまいの先はくるくると葉が巻かれて綿毛に覆われていますが、その形が昔の小銭に似ていることから「銭巻(ぜんまい)」と呼ばれるようになり、名前の由来になったとされています。ちなみに漢字は「薇」と書きます。
ぜんまいは、日本全国の野原、沢沿い、山の急斜面、林道などに群生しています。シダ植物の仲間で、春になると芽をだして葉へと成長していきますが、葉が開く前の若芽を採取して主に茎にあたる部分を食べます。
ぜんまいには胞子をつける葉(胞子葉)と光合成をする葉(栄養葉)があります。胞子葉は強い苦味があるため食用向きでなく、食べてしまうと子孫を残しにくくなるため、基本的に食べられているのは栄養葉の方だと言われています。
また、胞子葉を「男ぜんまい」、栄養葉を「女ぜんまい」とも言うそうです。
ぜんまいは、有毒成分を取り除くためにアク抜きの下処理をしなければ食べることができません。一度茹でこぼした後、鍋やパットに並べて木灰か重曹をふりかけ、上から熱湯をかけて一晩おきます。その後水にさらし、新しい水に変えてはさらす作業を行います。乾燥ぜんまいにする場合は、手揉みして広げての作業を繰り返しながらしっかりと乾くまで天日干しにします。
さて、ぜんまいを使った代表的な料理と言えば、山菜おこわ、山菜そば、炒め煮、和物、味噌汁など滋味溢れる和食や韓国料理のナムルがあります。
ご家庭ではスーパーなどで買えるぜんまいの水煮が使いやすいと思います。
私はご飯のお供に炒め煮を作ってみました。材料は、ぜんまいの水煮、牛ミンチ、薄揚げ、雪下にんじん、新玉ねぎです。ごま油で炒めて、白だし、水、醤油、砂糖、みりんを加え、落とし蓋代わりにクッキングペーパーを使って、味が染み込みやすくなるようにしました。途中で味見しながら、少し醤油と砂糖を加えて味を整え、汁気が無くなるまで煮詰めました。調理時間は約20分。下処理の手間と時間を考えると、なんだか少し申し訳ないような気持ちになってしまいましたが、大切にいただきました。
今回、ぜんまいのことを調べておりましたら、若芽から取り除いた綿毛は、防虫、保湿、防水性に優れているそうで、綿毛を織り込んで紡いだ糸で織った「ぜんまい紬」があることを知りました。
自然の恵みを余すことなく使ってきた昔の人達の知恵に敬服いたします。
川口屋薫
料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁
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