愛鳥週間

旬のもの 2023.05.10

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こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。

5月10日から16日までの1週間は、愛鳥週間(バードウイーク)ですね。「野鳥を愛する人を増やし、それをとりまく自然環境を大切にしましょう」というキャンペーン週間です。どんな歴史があって、具体的には何をしているのか、また、この時期にお勧めの鳥の見方などをご紹介しましょう。

ローズマリーを食べるカワラヒワ

さて、日本に愛鳥週間ができたのは、第二次世界大戦後の1947年。当時の文部省と野鳥保護団体が制定しました。といっても、最初は週間イベントではなく、たった1日の「バードデーのつどい」という行事だったんです。

当時の日本は連合国の占領下で、1946年に連合国総司令部(GHQ)天然資源局野生生物科長のオースチン博士が来日し、日本の野鳥の生息状況を調査しました。その結果、野山は荒れ果て鳥があまりいないことが判明。さらに、その少ない鳥をカスミ網で大量に捕獲していることもわかりました。

博士は、このままでは害虫を食べる益鳥がいなくなり、農林業は大変な損害を被ると心配し、日本政府に野鳥を保護するように提言。それを受けて、国民に正しい鳥の知識と愛鳥精神を普及する必要があると考え、その一環として「バードデーのつどい」を開催することになったのです。また、バードデー自体は、1894年にアメリカで生まれたもので、日本でもそれに倣ったという背景もあります。

カルガモの親子

第1回の「バードデーのつどい」は、1947年4月10日に東京の日比谷公会堂で開催されました。そこではオースチン博士の講演や鳥の映画の上映会などが行われたそうです。また、このイベントに関連して、文部省の依頼により日本鳥学会の例会で国鳥をキジに決定。日本の国鳥はこうやって決められたんですね。

国鳥のキジ

そして、1950年には「愛鳥週間(バードウイーク)」に改称され、期間も1週間に拡大。開始日も4月10日からひと月遅らせて5月10日になりました。4月10日だと日本の北国はまだ雪の中で、鳥たちが歌うバードウイークという感じではないため、ひと月スタートを遅らせたのだそうです。

こうして始まった愛鳥週間は、現在でも5月10日から1週間の日程で続いているのですが、期間中はどんなことが行われているのでしょうか。

標識のパイプに営巣したスズメ

一番中心となる行事は、公益財団法人日本鳥類保護連盟と環境省が共催する「全国野鳥保護のつどい」です。ここでは、全国の自然保護活動に尽力された方を表彰する野生生物保護功労者表彰が行われます。また、愛鳥週間と書かれた鳥のポスターを見たことがありませんか? これも関連する行事の1つで、全国の小・中・高校の児童や生徒さんに、愛鳥をテーマにしたポスターを描いてもらい、コンクールが行われます。そのほか、この期間にはバードウォッチングなど、鳥に関係する様々な行事が開かれます。

さて、愛鳥週間のこの機会に、鳥を見に行こうかなと思う方がいらっしゃるかもしれません。ぜひ、近所の公園や河川敷などへ出かけみましょう。服装は特別なものはありませんが、持ち物にはぜひ双眼鏡を。どうしても鳥との距離があるので、双眼鏡があるとないとでは見える世界が違いますし、鳥を驚かさずに観察できるので、ストレスを与える心配も減ります。倍率は8倍がベストです。また、野鳥図鑑があると種類を調べるのに便利ですね。

この時期は、ちょうど繁殖期にあたるので、いろいろな鳥が囀っています。本州の公園ならば、シジュウカラやホオジロなどが目立つ場所にとまって囀っているかもしれません。また、河川敷や湖岸のヨシのてっぺんにとまって「ギョギョシ、ギョギョシ」と大声で囀るオオヨシキリがいると思います。この時期は、森の中だと葉が茂りすぎて鳥が見つけにくいので、見通しのよい開けた場所がバードウォッチングには向いています。

囀るシジュウカラ
ホオジロ

普段の生活の中で、鳥を意識するのもいいですね。買い物に出かけたときやベランダで洗濯物を干しているときなどに、鳥の声が聞こえるかなと意識すると、意外と身近に鳥がいることがわかります。

今、街の中には、イソヒヨドリという美貌と美声を兼ね備えた鳥が棲み始めているので、もしかしたら、みなさんが暮らす街で出会えるかもしれません。この鳥がよくいるのは、駅ビルや郊外の大型ショッピングセンター。「ヒーヨ、ヒーリュリュ」と笛の音のような涼しげな声で囀るので、通勤途中の駅や買い物先で聞き慣れない美しい鳥の声が聞こえたら、イソヒヨドリの可能性がかなりあります。声がする方向に注目すると、赤と青の美しい姿が見られることでしょう。

イソヒヨドリのオス

写真提供:柴田佳秀

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柴田佳秀

科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。

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