おはようございます、こんにちは。編集者の藤田華子です。
那須の田舎で育った私にとって、映画『となりのトトロ』は夏の原風景。夕立の匂い、入道雲、採れたての野菜を川で冷やして食べる…どれも懐かしい思い出が蘇ってくるシーンです。
一方で、馴染みがなく幼少期から憧れているのは、「蚊帳」が登場する場面!すでに網戸が普及していたので、日常で蚊帳って使ったことがないんですよね。羨望の眼差しであのシーンを観る方も多いのではないでしょうか?

蚊帳は、虫除けのためのツールとして古代から現代に至るまで使用されてきました。天井から吊るすシンプルな作りからも何となく想像がつくように、歴史は非常に古く紀元前まで遡ります。古代エジプトでは、植物の繊維を使って蚊帳のようなものが作られ、クレオパトラも愛用していたとか。古代ローマも同様で、豪華な素材で作られた蚊帳が貴族たちの寝室で使われていたそうです。

日本には中国から伝来し、江戸時代になると庶民にも普及していきました。面白いのがそのデザインの移り変わりです。日本の蚊帳といえば、萌黄色(日本の伝統色で、鮮やかな黄緑色)の網に赤い縁取りが定番。トトロに出てくるのもまさにこの色です。最初は茶色い麻の色で爽やかさに欠けるデザインだったそうですが、一体何があったのでしょう?

実はこのデザインを考案したのは、いまは寝具の老舗として有名な西川株式会社の江戸時代初期の2代目当主。ある日、木陰で休憩中に、緑色のつるくさが一面に広がる野原にいる夢を見たそう。そこから「涼味あふれる緑に囲まれたシーンを目にすれば、蚊帳の中にいる人の気持ちを和ませ、爽快な気持ちにさせるであろう」と着想を得ました。そして「近江蚊帳」として売り出すやいなや、爆発的ヒット商品になり、後世に受け継がれるデザインとなったのです。

蚊帳は、マラリアなどの感染症の原因が蚊によるものだと判明した20世紀にさらに需要が高まりました。特に発展途上国では、蚊帳の無料配布や啓発活動が行われ、感染症の予防に大きく寄与しています。また、技術の進歩により、蚊帳には殺虫剤が組み込まれ、より効果的な虫除けが可能になりました。私も、日本では使ったことがありませんが、アフリカやタイの山奥を旅した時には蚊帳に助けられたのを覚えています。

現代は、冒頭で触れた網戸をはじめ、便利な虫除けアイテムもたくさん揃っています。でも古き良き風情ある夏の演出に、蚊帳を導入してみるのもまた一興。風鈴、蚊取り線香、蚊帳、うちわ…寝苦しい季節にも、涼やかな夢が見られそうです。ぐっすり休んで、素敵な夏をお過ごしください。

藤田華子
ライター・編集者
那須出身、東京在住。一年を通して「◯◯日和」を満喫することに幸せを感じますが、とくに服が軽い夏は気分がいいです。ふだんは本と将棋、銭湯と生き物を愛する編集者。ベリーダンサーのときは別の名です。
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