栗ご飯

旬のもの 2023.09.20

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こんにちは、料理人の庄本彩美です。なかなか夏が終わらない日々が続いていましたが、秋の旬ものたちは駆け足でやってきています。今日は秋の味覚「栗ご飯」についてのお話です。

自分のためよりも、誰かのためになら頑張れることがある。私にとって「栗ご飯」は、そんな誰かのために作る料理だ。

硬い鬼皮に包まれた栗をひとつひとつむくのは、なかなか時間がかかる。少しでも簡単に向くべく、色々な方法を試してみるのだが、やはり大変な作業だ。
それでも毎年秋が来て、ツヤツヤした美味しそうな栗を見つけると買ってしまう。友人や家族に栗ご飯をもてなして、彼らの顔がほわぁっとほころぶのを見るのが好きなのだ。

思い起こせば、初めて料理の仕事でマルシェに出店した時も、栗ご飯のお弁当を作った。きっと栗ご飯なら多くの人が好きだろうし、どこぞの駆け出しの私のお弁当でも手に取ってもらえるのではないだろうかと思ったからだ。

時間配分がまだまだ未熟だった上に、そんな手間のかかるメニューを選んだものだから、徹夜で栗むきをするはめになった。一生懸命鬼皮をむき終わった後には、渋皮が待っている。そのことをうっかり忘れていて、倍の時間を要してしまった。朝日が昇る頃にどうにか完成し、寝不足と腱鞘炎寸前でフラフラでブースに立っていたが、栗ご飯のお品書きを見て足を止め「美味しいそう〜!」「秋だね〜」と、買ってくださったお客さんたちの顔を見ていたら、「季節を感じられる秋の味覚を食べて欲しい」という思いが届いたような気がして、疲れなんて吹っ飛び、「栗ご飯を作ってよかった」と心から思った。

初心にかえる意味も含めて、毎年栗ご飯を作るようにしている。実はここ2年くらい、驚きの栗に出合ったことで、栗の鬼皮にひるむことも少なくなった。

「ぽろたん」という栗をご存知だろうか?この栗は鬼皮も渋皮もむきやすくて、栗の常識がひっくり返るような品種だ。本来の日本種の栗は果肉の柔らかさや果実の大きさが優れているものの、渋皮がむきにくく、調理に手間がかかるのが特徴だった。研究によって、2000年初めに発表された「ぽろたん」は、純日本種でありながら加熱することで、ぽろっと鬼皮と一緒に渋皮がむける画期的な栗なのだ。「渋皮がぽろんとむける」ことと、ぽろたんのすぐ上の親である品種「丹沢」の”たん”を合わせて「ぽろたん」という名前がついたらしい。

ぽろたん 写真提供:庄本彩美

調理方法は、果実に包丁が届くまで2センチくらいの切り込みを入れて、オーブントースターで7分程加熱するか、3分程湯がくだけ。そのまま食べたい時は、15分程度焼く。アツアツのうちに向くと、ポロっと渋皮まで取ることができる。その感覚が気持ちいい上に、余すことなく栗を食べられるのも嬉しい。大ぶりで、甘くて香りも良い。

栗むきができたら、洗ったお米に栗を乗せ、昆布とお酒、塩を入れて炊飯するだけ。炊き上がりに蓋を開ければ、ほのかに栗とお酒の香る栗ご飯、まさに「秋の味」の完成だ。

ぽろたん栗のおかげで、栗しごとのハードルがぐっと下がった。この秋も、いろんな人へ栗ご飯をお裾分けするだろう。
誰かの笑顔を想像してはホクホクする栗しごとの時間は、誰かのためへの時間のようで、私にとっても大切な時間なのだ。
秋の実りを分け合う幸せを、味わってみてはどうだろうか。

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庄本彩美

料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。

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