カゼにかかりにくい人

旬のもの 2023.10.21

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寒暖差、気圧差など、私達を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。この記事を書いているのは10月中旬ですが、あれだけ暑かった夏の暑さも今はなく、朝夕は肌寒さも感じるほどに。この時期はカゼをひく方が一気に増えます。

暑い時期に体は、熱を逃がそうと毛穴を開き汗をだします。寒くなると体温を維持するために、毛穴をとじて、熱を逃さないようにします。それだけでなく、心拍、血圧、血流などありとあらゆる箇所が微調整され続けています。この調整は、環境の変化が激しいと、忙しくなりエネルギーを消耗し、疲労に繋がります。すると、体を守る力も低下しますので、カゼなどの感染症にやられてしまうわけです。

中医学でカゼは、「風(ふう)」という自然現象が体に悪影響を及ぼす要因となり、襲った状態です。この風は厄介なことに、冷えや乾燥、熱といった他の外的要因も連れだって体を襲うので、風に侵されると、寒気や悪寒、発熱や炎症、咳といった症状にも同時に悩まされることとなります。

でも同じ環境にいてもカゼをひく人とそうでない人がいるのはなぜでしょうか。

中医学ではその違いは、衛気(えき)の強さにあると考えます。

中医学で衛気とは、体を守る抵抗力を表すエネルギーのことを指します。衛気は、外部からの病気や邪気(じゃき、風や熱、冷えなどの体調を悪化させる要因や花粉、ウィルス、細菌など)から身体を守る役割を果たします。衛気は皮膚や呼吸器、消化器系などを通じて体の表面に存在し、邪気が侵入することを防ぎます。カゼに罹りにくい人は、強力で健康な衛気を持っていると言えます。

衛気は飲食物を原料とし、五臓の肺によってめぐらされています。なので、胃腸が元気であることと、肺をよく刺激することも大切です。胃腸は冷たいもの、過剰な水分、脂っこいもの、生もの、甘いお菓子などで弱りますので、それらはできるだけ少なくしましょう。

また、肺は乾燥や冷えに弱いので、暖かく過ごし、加湿器も適宜使用しましょう。肺を元気に保つには、肺が管轄している皮膚を刺激することもおすすめです。服の上から肌をこする乾布摩擦をぜひやってみてくださいね。どこ擦ってもいいです。テレビを見ながらでもいいので、服の上から優しく肌をゴシゴシしましょう。

変わりゆく季節への適切な適応力もカゼにかかりやすい人とそうでない人を分けていると中医学では考えます。カゼにかかりにくい人は、季節や気候の変化に適応し適切な季節に適切な服装を選び、体温を正しく調整できる人です。

もちろん、ちゃんと夜寝ていることも大切です。日中疲れた体は睡眠によって回復します。体力だけでなく気力も、睡眠によって回復されています。睡眠習慣がおざなりになっていると、体内の故障箇所を修復できず、そのまままた次の日を過ごすことになります。一日二日程度ならその後の睡眠で回復できるかもしれませんが、多くの方で睡眠の不足は継続します。その場合は、体の病気に対する抵抗力は下がるでしょう。

感冒にかかりにくい人は、生活習慣、食事、運動、ストレス管理によって健康を維持し、カゼに対する抵抗力を高める暮らしをしています。これを食べれば完璧!や、これをすればカゼは怖くないという食品や漢方、養生はありません。日々ちゃんと寝て、ちゃんと食べるという単純なことが、一番重要で、一番効果的です。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

櫻井大典|ゆるかんぽう

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