こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。
今回は、赤ちゃんを運んでくる鳥で有名なコウノトリを紹介しましょう。

コウノトリは、背丈が約110cm、翼を広げると約2m20cmもある巨大な鳥です。くちばしと脚が長くツルに似ていますが、ツルとはかなり縁遠い関係で、けっこう違いがあります。例えば鳴き声です。「鶴の一声」という言葉があるように、ツルはラッパのような大きな声で鳴きます。しかし、コウノトリはほとんど声を出しません。そのかわりに、くちばしを打ち鳴らして音を出す「クラッタリング」と呼ばれる方法でコミュニケーションをとるのです。他にも、木の上や電柱のてっぺんにとまるなど、ツルには見られない習性があります。

水鳥のコウノトリは、川や湖沼などの湿地帯がすみかです。また、人工的な湿地でもある水田を多く利用し、今では水田にいることが多いかもしれません。主な食べものは、湿地にすむ魚やカエル、ザリガニ、バッタなどの昆虫、ヘビなどで、本当にいろいろな生きものを捕食します。あの巨大なくちばしにもかかわらず、小さな獲物も捕らえることができ、意外と器用な一面があるんだなと思います。

世界でコウノトリがいるのは、東アジアに限られます。ロシア極東地方や中国東北部で繁殖し、中国南部や台湾、韓国、日本が主な越冬地です。じつは、日本もかつては繁殖地の1つでした。江戸時代には全国に普通にいた鳥で、東京の浅草でも繁殖していたといいます。しかし、明治時代に乱獲され激減。1956年には23羽にまで減ってしまったのです。そして、1971年に、兵庫県豊岡市にいた最後の鳥が保護された後に死亡。ついに日本のコウノトリは絶滅してしまいました。

野生のコウノトリがいなくなる一方、飼育による増殖事業が進められ、1988年に東京都多摩動物公園でコウノトリのペアが国内初の繁殖に成功。1989年には兵庫県コウノトリ飼育場でも繁殖に成功し、それからは毎年、ヒナが誕生するようになりました。そして、2005年には5羽のコウノトリを兵庫県豊岡市内に放鳥し、野生復帰計画がスタート。2007年には、豊岡市内に建てられた人工巣塔で初めて繁殖が成功し、2012年からは兵庫県以外でも繁殖するようになったのです。2023年10月の時点では、全国12府県で繁殖が確認され、383羽が日本の空を飛んでいます。

ところで、コウノトリといえば「赤ちゃんを運ぶ鳥」として有名ですね。これはヨーロッパに古くからある伝説で、それが日本にも伝わったのでしょう。じつは、ヨーロッパのコウノトリはシュバシコウという名前で、日本にいるコウノトリとは別の種類。見た目もくちばしが真っ赤で、サイズも少し小さく可愛らしい感じです。

また、習性にも違いがあり、例えば、シュバシコウは、繁殖地のヨーロッパと越冬地のアフリカを行ったり来たりする渡り鳥ですが、日本のコウノトリには渡りをする習性がありません。このシュバシコウの渡りをする習性にちなみ、春になるとヨーロッパに帰ってきて、人家の屋根の上に大きな巣を作り繁殖することから、赤ちゃんを運んでくるという伝説になったという説があります。ですから「シュバシコウが赤ちゃんを運んでくる」が正確なところなのです。

では、なぜ「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」という話になったのでしょうか。それはシュバシコウとコウノトリは、かつては同種と考えられていたから。どちらも一昔前は、コウノトリという名前で呼ばれていたので、その頃の名残が今でもあるのでしょうね。

日本のコウノトリには渡りの習性はないのですが、安住の地を求めてかなりの距離を移動することがあり、ダイナミックに日本の空を飛んでいます。たとえば、午前中に東京の空を飛んでいるのが目撃されたと思ったら、同じ鳥が午後には静岡の池にいたなんてこともあり、特に秋は、その年に生まれた若鳥が冬のすみかを求めて、日本の空を飛び回る時期。これまで全都道府県に飛来した記録があるので、みなさんが暮らす街に姿を見せる可能性は十分にあります。もし、近所にコウノトリが現れたら、近づかないでそっと見守ってあげてください。

柴田佳秀
科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。
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