こんにちは。
俳人の森乃おとです。
11月も半ばとなると、野や街もすっかり晩秋の色に染まります。川の土手や道端などで、周囲を明るく照らしているのがアキノキリンソウ(秋の麒麟草)の花。塔のように高くそびえ、小さな黄色い花が泡立つように次々と咲き誇り、秋を黄金色に輝かせます。

日本の固有種で、別名はアワダチソウ(泡立草)
アキノキリンソウは、キク科アキノキリンソウ属の多年草で、北海道から九州までの日本各地と朝鮮半島の、日当たりの良い山野に分布します。
和名の由来は、黄色い花の色や形がベンケイソウ科の「キリンソウ」(麒麟草、黄輪草)という小柄の植物に似ているため。キリンソウが春から夏にかけて咲くのに対し、秋咲きの花なので「秋の――」が冠せられました。

別名は「アワダチソウ」(泡立草)。小さな花が集まった姿が、お酒の醸造過程で次々と泡が湧いてくる様子を思わせるからとされます。また、子どもたちがこの花を水に漬けてつぶし、泡を立てて遊んだためという説もあります。
草丈は70~80㎝ほど。葉は長さ7~9㎝の細長い楕円形。開花期は8~11月で、茎の上部に径1.3㎝ほどの黄色い頭状花を多数つけます。キク科の花なので、中心は筒状花、周りは5~15個の舌状花が囲んでいます。全草が食用となり、薬として利用されます。

山形県の鳥海山のふもとに生まれた歌人、鳥海昭子氏は山野に咲くアキノキリンソウの凜とした静かな佇まいを詠んでいます。山道を照らす燈火のような花にまつわる二頭の蝶は、恋人たちの化身なのでしょうか。
ところで、里山に多く見られたアキノキリンソウですが、最近ではあまり出合うことが少なくなったようにも思えます。アキノキリンソウが育つような里山が減り、現代の俳人、北村周子氏が「ダムとなる 村とは知らず 泡立草」と詠んだように、アキノキリンソウが育つような里山が消えていっているのかもしれません。

よく似た近縁種の「セイタカアワダチソウ(背高泡立草)」
さて、アキノキリンソウには名前がよく知られた、近縁種の植物があります。明治時代末に北アメリカから観賞用に移入されたセイタカアワダチソウ(背高泡立ち草)です。

同じキク科アキノキリンソウ属の多年草で、草丈は1~4、5mと超巨大。頭状花は、舌状花の長さ4mm、幅0.2mmとアキノキリンソウよりはるかに小さいものの、巨大なピラミッド形の円錐花序をつくり、茎1本当たりにつく花の数は、優に1000個を超えます。
両種とも、黄色い小花が茎の先に集まって咲く姿が共通しており、混同されがちです。

セイタカアワダチソウには、根から他の植物の成長を抑制する物質を出す、アレロパシーという作用があり、ススキなどの在来種を駆逐してしまうのではと懸念されました。
また、甘い蜜を出す虫媒花なのに、花粉症の原因となる風媒花だと誤解されました。そのため各地で撲滅運動が繰り広げられ、かなり勢力が弱まりました。
その過程でよりダメージを受けたのはアキノキリンソウで、現在セイタカアワダチソウが緩やかに回復しているのに対し、アキノキリンソウは激減しました。
日米両国で愛される黄金の花
アキノキリンソウの花言葉は「予防」「用心」「励まし」。「予防」「用心」は、蜜を虫から守るために、綿毛で包んでいることに由来します。また「励まし」は、鮮やかな黄の花色からの連想です。

ちなみにセイタカアワダチソウの花言葉は「元気」「生命力」。日本ではかつて嫌われ者だったセイタカアワダチソウですが、アメリカでは「Goldenrod(ゴールデンロッド=金の鞭)」と呼ばれ、アラバマ州の州花になるなど大変愛されています。アキノキリンソウと同様、黄金色に輝くふるさとの野山を思わせるのでしょう。

アキノキリンソウ属の学名「Solidago」(ソリダーゴ)は、ラテン語で「傷をつなぎ合わせる」の意です。ローマ時代の昔から、美しいだけではなく薬用・食用として全草利用できる万能ハーブとして利用されてきたことが分かります。
アキノキリンソウもセイタカアワダチソウも、一年の終わりを美しく彩り、私たちを優しく励ましてくれる大切な植物なのです。
アキノキリンソウ(秋の麒麟草)
学名 Solidago virgaurea
英名 Goldenrod
キク科アキノキリンソウ属の多年草。日本、朝鮮半島の日当たりの良い山野に自生。草丈は70〜80㎝ほど。開花期は8~11月、茎の先に黄色の頭状花を穂状につける。アワダチソウ(泡立草)とも。

森乃おと
俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に『草の辞典』『七十二候のゆうるり歳時記手帖』。『絶滅生物図誌』では文章を担当。2020年3月に『たんぽぽの秘密』を刊行。(すべて雷鳥社刊)
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