青葉、若葉の美しい季節になりました。日毎に勢いを増す大地の芽吹き、山菜採りの最盛期です。山の中には太古の時代を思わせる羊歯の力強い渦巻きがあちこちに見られ、なんとも幻想的です。シダ類は海から進化した植物界の開拓者。最古の陸上植物です。最古のシダの化石は4億年前といいます。人類よりも遥か昔から同じ姿で命を紡いでいる不思議を思わずにはいられません。羊歯や裏白は裏のない心をあらわすおめでたいものとされ、新年の季語ですが、「羊歯萌ゆる」といえば、晩春の季語です。
わらびやぜんまいなど、シダ科の山菜は、古くから重要な山菜として日本になじみのある郷土食。なかでもこごみはアクも少なく、色も鮮やかで食べやすい山菜です。胡麻和えにすると美味しくいただけます。摘み草の風習は食料としての美味しさだけではなく、大地に触れる喜びそのものといえるでしょう。自然の恵みに感謝し、自分の手で摘み取った野草はまた一段と有り難く感じられます。