1月の和菓子『新春菓子』

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季節の和菓子帖とは?

年中行事と、結びつきのある和菓子を毎月ご紹介します。 あの頃食べたなと懐かしく思う気持ち、どんな味がするんだろうとワクワクする気持ち。
暮らしの中の行事を楽しみながら、その季節でしか食べられない和菓子を味わってみませんか?

年中行事「お正月(おしょうがつ)」

新年、明けましておめでとうございます。
日本には様々な年中行事やならわしがありますが、その中でもお正月はいろんな伝統がつまっている行事です。
お正月には、お米づくりの神様である「年神様」をお迎えし、新しい年の幸せを願います。お正月飾りとしてよく見かける「しめ縄」「門松」「鏡餅」はどれも年神様をお迎えするためのものです。

お正月の料理としては「御節(おせち)」や「雑煮(ぞうに)」があります。
御節はできるだけ年神様が静かに過ごせるようにと大晦日までに仕上げて、三が日にいただきます。御節の中には、腰が曲がるまで長生きできるようにと「海老」が入ったり、金運上昇を願う「金団(きんとん)」が入ったりと縁起物が沢山つめられています。雑煮は、その年に初めて汲む水「若水(わかみず)」を使って作るといいとされています。若水には一年の邪気を払う特別な力があるそう。
縁起の良いものを取り入れ、新たな年への願いを込め、清らかな気持ちで一年をスタートさせたいですね。

和菓子「新春菓子」

今回は、お正月に食べたい和菓子のご紹介をします。
お正月には、迎春の上生菓子を用意するご家庭や、「花びら餅」を味わう方が増えてきました。
「花びら餅」の由来は諸説ありますが、平安時代頃に、宮中で歯固めの儀式のときに食べていたものが原型だといわれています。明治時代に茶道の裏千家の初釜で使われるようになった後、京都を中心に、新年の御菓子として食べられるようになりました。最近では、京都以外の地域でもよく見かけるようになりましたね。

同じような見た目と材料をつかっていても、お店によって、様々なこだわりを持ってつくられています。1月中旬から下旬頃まで販売しているお店が多いので、お気に入りの「花びら餅」を探してみるのも愉しそうですね。

また、お正月にいただく「お雑煮」は、年神様にお供えをし、そのお下がりをいただくという縁起物です。地域によって、味噌やダシ、具材、お餅の形、そして食べる時期やタイミングなど、様々な違いがあり、郷土色豊かなところも興味深いです。
和菓子(あんこ)好きの方には、あんこ入りの餅が入った、高知県の「あん餅白味噌雑煮」や、甘く炊いた小豆にやわらかい丸餅を入れた、鳥取県の「小豆雑煮」がおすすめです。

また、お正月に食べたい和菓子のなかから、信州の「福飴」、北陸の「辻占」、宮中行事である「歌会始」に因んだ御菓子などをご紹介しています。ぜひ、ご覧ください。

 

長野 有限会社 飯田屋製菓(飯田屋飴店)

【 福飴(ふくあめ)) 】
信州の「あめ市」や、「福飴(ふくあめ)」をご存じですか。
「あめ市」は、1月から2月にかけて、信州の各所で開催される新春行事です。その由来は大変古く、400年以上前の戦国時代に遡ります。

「福飴」は、「あめ市」で販売される縁起菓子。お店により、内容は異なりますが、「飯田屋製菓(飯田屋飴店)」さんの「福飴」には、「福良(ふくら)」、「寿入(すいれ)」、「福助」などの飴が入っています。

「福良」とは、越後の国から牛の背中に乗せられてきた、塩がたくさんつまった袋(塩ガマス)の形を飴で表現しています。パンパンに膨らんでいる飴の中は空洞なので、サクッ、カリッとした軽やかな食感と味わいです。(塩は入っていません) 「寿入」は、塩が届いた日の喜びをあらわしています。飴に細工をして、筒状のス(空洞)を入れ、飴で「寿」を表現しているそうです。飴の表面は美しくきらめく白。霜柱を踏んだようなサクサクとした食感で、とても口解けがよいです。 「福助」は、とてもかわいらしい「福助」の顔の組飴。ふくよかな顔は、幸運を呼ぶと言われているそうで、眺めているだけで気持ちがほっこりします。ほかに「おかめ」などもいましたよ。

「めでてよし、なめてよし 飯田屋の福飴」。
職人技で、繊細に美しく、優しい甘さで味わい豊かにつくられている「福飴」は、当時の方々の嬉しい気持ちに想いを馳せ、大切に味わいたい御菓子です。

【「福飴」の販売期間】
12~2月の期間・数量限定品です。
期間に関係なく、商品が無くなり次第、販売を終了するため、ご希望に添えない場合もあります。人気商品なので、お早目のご予約をおすすめします。「飯田屋製菓(飯田屋飴店)」の店頭のほか、オンラインショップでもお求めいただけます。

※飯田屋さんの福飴は、例年、松本のほか、大町、会田、松川などの「あめ市」でも販売されますが、2021年の松本の「あめ市」は、感染症拡大防止のため、中止となりました。各地域のあめ市の開催も未確定です(2020年12月22日時点)

【 店舗情報 】
長野県松本市大手2-4-2

【 お店の紹介 】
寛政8年(1796年)創業。美しい飯田屋飴店さんの飴。1度味わったら忘れられない、飴の概念を変えてしまうような食感の飴も多いです。 老舗ながら、モダンで洗練された店内はギャラリーを兼ねており、飯田屋飴店さんの飴と一緒に、地元の作家さんの作品が展示されています。 代表銘菓は、美しい輝きを持ち、サクサクとした食感の「あめせんべい」、落花生を練りこんで薄く伸ばした「まめいた」など。最近は、お酒にあう飴菓子なども開発、販売しています。また、松本市内の老舗飴店3店が協力して開発した「松本三ツ星」は、なんと、3店の飴(りんごが練りこまれた板状の飴)を食べ比べできるセットです。知れば知るほど、飴の魅力にはまるお店です。

 

石川 加賀藩御用菓子司 森八

【 辻占(つじうら) 】
北陸地方、特に金沢を中心とした石川県や富山県で、江戸時代から親しまれてきた迎春縁起菓子「辻占」。「辻占」はおみくじを包んだお菓子です。北陸地方では、年末になると和菓子屋さんだけでなく、デパートやスーパーでも販売されます。

おみくじを包んだ御菓子というと、「フォーチュンクッキー」を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。 「辻占」と「フォーチュンクッキー」に繋がりはあるのでしょうか。実は、1890年代に、日本の「辻占」がアメリカで紹介されたことで、後に「フォーチュンクッキー」が生まれました。中国に伝来したのは、さらに先のことだそうです。

「辻占」は、地域やお店によって、使われる材料や形状が異なりますが、石川県内では、もち粉や砂糖を混ぜて色を付け、矢車や花のような形のものが多いように思います。「森八」さんの「辻占」も、もち粉や砂糖などを使用した「最中種」でつくられています。表から見ると星形で、淡いピンク、緑、白の3種類の色がついています。

「最中種」を割り、とても小さく畳まれた紙を取り出し、破れないように注意深く開くと、短い文章が書かれています。今回、一足早く引いた「辻占」には「苦あれば楽あり」と。2020年は、ほとんどすべての人にとって、大変な年でしたので、その分、新しい年は穏やかな素晴らしい日々になりますように・・・と、前向きな解釈をしたいと思います。いくつかの文章を組み合わせて解釈するのも愉しいですね。

【「辻占」の販売期間】
12月1日より、森八さんの各店舗やオンラインショップで購入可能です。
各店舗で販売個数が決まっている商品の為、無くなり次第終了となります。(店舗によっては年内で完売していることもございます。)

【 店舗情報 】
石川県金沢市大手町10-15(本店)

【 お店の紹介 】
寛永2年(1625年)創業の老舗。美しい飯田屋飴店さんの飴。日本三大銘菓のひとつ「長生殿」のほか、季節の和菓子などを販売。上生菓子や干菓子は、古都金沢らしい、品のある色使いや意匠で季節の移ろいを表現しています。金沢市内に直営店のほか、北陸、関東に販売店を構えています。本店には江戸時代から使われてきた菓子型千数百点を展示している「金沢菓子木型美術館」のほか、「落雁づくり」を体験できる店舗もあります。

 

山形 乃し梅本舗 佐藤屋

【 新年勅題菓「みのり」 】
毎年1月中旬に、宮中行事として開催される「歌会始(うたかいはじめ)」。決められたお題に対し、天皇陛下や皇族、一般の国民の代表(詠進者)の歌が披露された後、翌年のお題が発表されます。

多くの和菓子屋さんでは、12月頃から年明けにかけ、「歌会始」のお題に合わせた創作菓子をつくり、その御菓子のことを、「勅題菓」、「御題菓」、「お題菓子」などと呼びます。
令和3年の「お題」は「実」。
「乃し梅本舗 佐藤屋」さんの令和3年の「勅題菓」は、その名も「みのり」で、“なんだかもやもやした感じの年から一転、明るい新年への切り替えをイメージさせる菓子になったら・・・”と考案されたそうです。
霧のような半透明の白い寒天の中に、マジックアワーのような薄紫色。光の当たり方や角度により、表情が変わる幻想的な美しさを目で感じました。

次に、歯ごたえのある寒天からは、「カルピス羊羹」の爽やかでやさしい甘味と、薄紫色に染めた「柚子の羊羹」の爽やかな酸味を感じました。たしかに、2つの爽やかさが組み合わさることで、もやもやしていた霧が晴れていくような、気持ちが晴れていくような感動がありました。写真には、カットしたものが写っていますが、長さ15センチほどの竿菓子ですので、ご家族で取り分けていただくこともできます。

【「みのり」の販売期間】
1月11日頃までを予定していますが、早めに完売する場合もあります。
「乃し梅本舗 佐藤屋」さんの各店舗のほか、オンラインショップでも購入可能です。

【 店舗情報 】
山形県山形市十日町3-10-36(本店)

【 お店の紹介 】
文政4年(1821年)創業。山形県を代表する銘菓「乃し梅」の最も古い製造記録をもつ1軒です。山形県山形市内に本店と支店、販売店を構えており、モットーは「和菓子をちょっと自由に」。目指すスタイルは「新しい老舗」だそうです。
代表銘菓は「乃し梅」。他にも、伝統の「乃し梅」と白餡とチョコレートや寒天を用いた「たまゆら」や、ラム酒と黒糖羊羹にレモンの蜜漬けを美しく配置した「りぶれ」などが人気です。また、御菓子とお酒のペアリングなども得意な八代目がイベントなどで提案をすることも。昨年は、青い海や銀河のような「空のムコウ」が、美しすぎる和菓子として特に話題を呼びました。八代目のまっすぐな人柄と、老舗の味や地域の風土を大切に守りつつ、新しい挑戦を続けるオリジナリティの高い御菓子で、ファンが多いお店。これからもずっと注目していたい、大好きなお店のひとつです。

 

滋賀 叶 匠壽庵

【 あも歌留多(かるた) 】
お正月には、カルタや百人一首を愉しんだ思い出のある方も多いと思います。「百人一首」を模した和菓子をお正月に味わうのはいかがでしょうか。「叶匠壽庵」さんの創業地のそばに、百人一首の聖地と呼ばれている近江神宮があります。

「あも歌留多」は、近江神宮に眠る百人一首のデザインを、色鮮やかに再現した最中種(最中の皮)で、「叶 匠壽庵」さんの代表銘菓である「あも」の新しい愉しみ方の提案として、2019年に発売されました。やわらかな羽二重餅を、丁寧に炊いた餡で包んだ「あも」をお好みの大きさにカットし、「あも歌留多」に挟んでいただきます。
「最中種」の表面にプリントされた百人一首の絵柄が、想像以上に美しく、ビジュアルだけでなく、味や香り、食感もすばらしいです。おすすめの食べ方は、事前に「あも」を1時間ほど冷やしておくこと。そして食べる直前に組み立てること。ひんやりとした粒餡が、ほっこりした「最中種」と相性がよく、羽二重餅がより瑞々しく感じます。
「あも歌留多」は、「あも」とのセット品だけでなく、単品販売(5組10枚入り)もありますので、季節ごとに発売される「あも」との組み合わせも愉しめますね。なお、期間により、限定の絵柄が登場するそうです。

【 店舗情報 】
滋賀県大津市大石龍門4-2-1(本社工場・寿長生の郷)

【 お店の紹介 】
昭和33年(1958年)創業。代表銘菓は「あも」。鮮やかな赤が美しい「露茜」という品種の梅を使用した「標野」なども人気です。琵琶湖から流れ出る瀬田川のほとりに、六万三千坪の「寿長生の郷(すないのさと)」という、自然と人が共存する場所をつくり、本社工場を構えました。
梅や柚子などの菓子の原料を育てながら、各地の厳選した素材をつかい、職人が季節の菓子をつくっています。
「寿長生の郷」は、「叶 匠壽庵」さんの想いが込められた場所。自然を活かし、季節の草花も愉しめる散策路、お食事処、茶房や茶室、パン屋などもあり、ゆったりと過ごすことができます。

 

<Special Thanks>

梅田なお実

和菓子ライフナビゲーター・デザイナー
東京都出身。好きな季節は初夏。「毎日が和菓子日和」主宰。
全国の和菓子屋さんを訪ね、繋がりをつくりながら、味わった和菓子のイラストや記事を描き、和菓子の魅力を広める為のイベント等、様々な活動を行っています。

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