10月の和菓子『月見団子』

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季節の和菓子帖とは?

年中行事と、結びつきのある和菓子を毎月ご紹介します。 あの頃食べたなと懐かしく思う気持ち、どんな味がするんだろうとワクワクする気持ち。
暮らしの中の行事を楽しみながら、その季節でしか食べられない和菓子を味わってみませんか?

年中行事「お月見(おつきみ)」

秋は月がきれいな季節ですね。その中でも旧暦8月15日の十五夜に浮かぶ月は「中秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ)」と呼ばれ、一年の中でもっとも美しい月といわれています。古くから月を観賞する風習があり、年中行事として親しまれてきました。
中秋とは旧暦8月のこと。旧暦では7、8、9月が秋になり、それぞれ初秋・中秋・晩秋と呼ばれました。

2020年は10月1日が十五夜にあたります。他にも、10月29日の「十三夜」や10月31日の「ブルームーン」など、お月見イベントが目白押し。月見団子を食べながら、空気が澄んで、きれいな月が輝く秋の夜空をじっくりと楽しみたいですね。

※ブルームーンとは、1ヶ月に2回、満月が見られること。2020年10月は2日と31日が満月です。

和菓子「月見団子(つきみだんご)」

今日はお月見だんごをはじめとした、月にちなんだ和菓子のお話をします。

十五夜には、「月見団子(つきみだんご)」をお供えするというイメージがあります。それは、なぜでしょうか。
お月見は、収穫をお祝いし、感謝する行事で、平安時代頃に行われていた記録があるそうです。もともとは、秋の収穫した穀物(お芋や豆など)をお供えしていましたが、だんだんと(江戸時代頃には)お米でつくったお餅やだんごをお供えするようになったそうです。

「月見団子」には、地域による違いがあるのも面白いです。
主に関東では、お餅を丸めたものが多いですが、京都を中心とした関西の一部では、里芋型の白いお餅の半身にあんこをまとったもの、愛知県ではしずく型(涙型)をした白、ピンク、茶色の3色のお餅が主流です。地域により、さらに異なる形もありますし、同じ形をしていても餡入り、餡なしの違いがあることも!
お月見の時期に、基本的にその地域に行かないと出会えないので、まだまだ知らない「月見団子」がきっとたくさんあると思います。ぜひ、みなさん、お住まいの地域の「月見団子」を教えてくださいね。

「月見団子」のほかにも、月をモチーフにした和菓子、月夜の情景をあらわした和菓子(上生菓子や羊羹でできたものが多いです)、月に見立てた形の和菓子など、すてきな和菓子が数多くあります。今回ご紹介させていただくのは、その中のごく一部です。

この時期には、和菓子屋さんに月にちなんだ和菓子を探しに行き、十五夜、十三夜、そして、なんでもない月のきれいな日に、月を見上げながら、和菓子を味わってみませんか。

「京都のお月見だんご」

京菓子司 笹屋伊織(ささやいおり)

【 月見団子 】
「月見団子」の代表として、今回は、「笹屋伊織」さんの「月見団子」をご紹介します。
笹屋伊織さんの「月見団子」は、里芋型の白いお餅の半身にあんこをまとった、京都を中心とした関西地域に多く見られる形の「月見団子」です。

十五夜は里芋の収穫の時期で「芋名月」とも呼ばれることから、このような形のお団子になったといわれています。ころんとした形がかわいらしく、もっちりとした歯ごたえと、柔らかさが同居しているお餅。みずみずしく、すっきりとした甘さの餡をまとっています。 どこのお店でも「月見団子」の販売期間は短いですが、タイミングが合えばぜひ、「笹屋伊織」さんの「月見団子」をはじめ、地域の和菓子屋さんの「月見団子」を味わってみてくださいね。

【 月見団子の販売期間】
十五夜までの数日間。2020年は9/29、30、10/1の3日間のみ。
※一部店舗のみで販売

【 店舗情報 】
京都市下京区七条通大宮西入花畑町86(本店)

【 お店の紹介 】
享保元年(1716年)創業。300年を超える和菓子の老舗です。「イオリカフェ」や「笹屋伊織・別邸」、「十代目伊兵衛菓舗」というブランドなど、時代に合わせた和菓子の提案もおこなっています。代表銘菓の「どら焼」はとても歴史のある御菓子で、月に数日のみ販売されます。一般的などら焼とは見た目も味わいも全く異なります。とても美味しいので、味わっていただきたい逸品です。京都市内の本支店をはじめ、京都、大阪、東京のほか、全国の一部百貨店内に販売店を構えています。

 

「月といえばうさぎさん」

中村軒(なかむらけん)

【 うさぎ薯蕷 】
お月見の時期には、うさぎをモチーフにした和菓子もよくみられます。うさぎモチーフの和菓子の代表として、京都の「中村軒」さんの「うさぎ薯蕷」をご紹介します。
中村軒さんには「麦代餅(むぎてもち)」を目当てに訪問したのですが、「麦代餅」はもちろん、お土産に持ち帰った御菓子のどれもが美味しかったです。中でも特に気に入ったのが「うさぎ薯蕷」。うさぎ型のおまんじゅうです。
手に持つと、まず、ふんわりと山芋のやさしい香りがします。まんじゅうの皮はしっとりとし、なめらかですっきりとした栗餡が中に入っています。そして、山芋の香りとほくほくとした栗の風合いと香りが合わさり、何とも言えない美味しさです。

【 うさぎ薯蕷の販売期間 】
秋(WEBサイトの「本店和菓子予定表」でご確認ください)
お取り寄せ:あり
テイクアウト:あり


【 店舗情報 】
京都市西京区桂浅原町61

【 お店の紹介 】
明治16年(1883年)創業。桂離宮の門前で現在の場所にてお饅頭屋さんになり、「なつかしい昔の味、 あっさりした美味しさ」を基礎にお饅頭をはじめとする和菓子を作り続けておられます。 代表銘菓は「麦代餅(むぎてもち)」 です。
本店のほか、「麦代餅」をはじめとする一部の和菓子は、京都、大阪、愛知の一部百貨店でも定期不定期で販売しています。

 

「月に見立てて」

中津川 松月堂(しょうげつどう)

【 創作栗きんとん「栗苞(くりづつみ)」】
お月見の時期には、うさぎをモチーフにした和菓子もよくみら「最中」など、月が由来になっている御菓子もありますが、私がおすすめしたいのは“身近な和菓子を月に見立てて食べる”愉しみ方です。身近なところでは、おせんべい。まんまるで、ごつごつとした表面がまるで月のようです。

今回、わたしが月に見立てたのは、岐阜県中津川市の「松月堂」さんの創作栗きんとん「栗苞」。

「栗苞」は、中津川「松月堂」さんの代表銘菓である「栗きんとん」を本葛で包み込んでいる御菓子です。透明な本葛を通し、「栗きんとん」の薄い黄色が透けて見えて、夜空に輝く月のようだなぁ、と思いました。

食べてみると、びっくりするほどにぶるぶる、もちもちとした本葛のあとに、なめらかでしっとりし、ほっこりとした甘さの栗きんとんが登場します。食感の振り幅が大きくて愉しいですし、秋の味覚と月を感じられるのもうれしい御菓子です。少しだけ冷やして食べても美味しいですよ。

【 栗苞の販売期間 】
通年(WEBサイトや店頭で確認ください)
お取り寄せ:あり
テイクアウト:あり


【 店舗情報 】
岐阜県中津川市太田町2-5-29

【 お店の紹介 】
明治40年(1907年)創業。栗の里として有名な中津川にお店を構えている、主に栗菓子をつくっているお店です。代表銘菓は「栗きんとん」、「栗苞」、「栗きんつば」など。都内の一部百貨店にも販売店があります。

  

「月夜の情景を描く」

薄氷本舗 五郎丸屋(うすごおりほんぽ ごろうまるや)

【季節の薄氷 月うさぎ】
月にちなんだ「干菓子」の代表として、富山県小矢部市の「薄氷本舗 五郎丸屋」さんの「季節の薄氷 月うさぎ」をご紹介します。

「五郎丸屋」さんの代表銘菓である「薄氷」は長方形や台形のような形をしていますが、季節の情景を映した「季節の薄氷」もつくっています。
「薄氷」は、表面に和三盆が塗ってあります。ほんの少しだけひんやりし、すべすべとした触り心地です。食べると、パリッ、ミシッ、サクサクサクという音が響き、寒い朝に氷を割って歩いたような記憶が呼び起されます。その後は、さらさらさらと、口の中からいなくなり、和三盆のやさしい甘味がほのかに残る・・・。まさに「薄氷」の情景や感覚が御菓子に投影されています。
今の季節は「月うさぎ」。半月型で、月とうさぎの両方をシンプルに表現しているように思えます。
「干菓子」の愉しさの1つに、自分自身が想い描いた情景をつくれることもあると思います。少し大きなお皿の上に、月を観るうさぎや、うさぎが戯れる様子を描いてみたり・・・。そのまま食べるだけではなく、自由に配置し、目でも愉しむことができますね。
「薄氷」は、煎茶や抹茶はもちろんですが、秋の夜なら、温かいほうじ茶や麦茶、味の濃い紅茶、ミルクティも合いますよ。

【 月うさぎの販売期間 】
秋(WEBサイトや店頭で確認ください)
お取り寄せ:あり
テイクアウト:あり


【 店舗情報 】
富山県小矢部市中央町5-5

【 お店の紹介 】
宝暦2年(1752年)創業の富山の老舗。
寒い朝に水田などに氷が張った様子を御菓子にした、富山産のお米と阿波(徳島)産の和三盆でつくっている「薄氷(うすごおり)」が看板商品です。「薄氷」の食感や味わいを現代風にアレンジし、5つのTONE(色合い)とTASTE(味わい)を表現した「T五」も人気商品です。選び抜いた材料を使い、配合や工程、デザインからも余計なものを削ぎ落し、自然の色や形などを御菓子に映すことを大切にされています。

 

<Special Thanks>

梅田なお実

和菓子ライフナビゲーター・デザイナー
東京都出身。好きな季節は初夏。「毎日が和菓子日和」主宰。
全国の和菓子屋さんを訪ね、繋がりをつくりながら、味わった和菓子のイラストや記事を描き、和菓子の魅力を広める為のイベント等、様々な活動を行っています。

WEB「毎日が和菓子日和」
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\ 暦生活のオリジナル和菓子ができました /
お月見や秋の味覚をテーマにした京都の和菓子6点セット!

夏に販売しご好評いただきました「和菓子ばこ」の秋バージョンができました。
和菓子6点と和菓子にあうコーヒーのセットです。

秋といえば、お月見があったり、紅葉を見に行ったり、美味しい秋の味覚が収穫できたり。
自然と触れ合う機会がたくさんあります。
今回はそんな秋ならではの自然の情景や味覚を和菓子で表現してみました。
和菓子は季節を反映した、日本ならではの美しくおいしい文化。ぜひ秋の味覚を味わってみませんか?

 

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暦生活編集部

日本の季節を楽しむ暮らし「暦生活」。暮らしのなかにある、季節の行事や旬のものを学びながら、毎日お届けしています。日常の季節感を切り取る #暦生活写真部 での投稿も募集中。暦生活の輪を少しずつ広げていきたいと思います。

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