日めくりカレンダー『暦生活まいにち日めくり』のイラストを手がけた木版画家・大川菜々子さん。365日の情景を描いた日めくりは、めくるたびに色彩豊かな世界が広がり、日々の暮らしに小さな感動を届けてくれます。その制作秘話と創作への想い、さらに個展での新たな挑戦について、お話を伺いました。
木版画家・大川菜々子さんと「暦生活まいにち日めくり」の出会い
木版画を中心に、あたたかく芯の強さを感じさせる作品を生み出してきた大川さん。大学時代から、木版画作品の展示やオリジナル雑貨でのイベント出展を重ね、自身の世界観を大切に育ててこられました。ここ1年ほどでクライアントワークも増えはじめ、新たな表現の場が広がりつつあるなかで出会ったのが、「暦生活まいにち日めくり」でした。
365日分のイラストを描くという今回の取り組みは、大川さんにとっても初めての挑戦。ひとつひとつの絵に、木版画家として自ら主題を立ててきたこれまでの経験と、テーマに寄り添うイラストレーションとしての視点、その両方が生かされています。単なる日付確認ツールではなく、毎日の暮らしにそっと寄り添い、小さな発見と喜びを届ける特別な1冊。そんな「まいにち日めくり」は、いかにして誕生したのでしょうか。
――365日分の日めくりイラストのお話が来た時、どのようなことを感じましたか?
「量的な不安は正直ありました。でも、お題に合わせて描くのは好きなんです。楽しそうだな、きっと本当に楽しい仕事になるだろうなと思いました。」
不安よりも先に、「描いてみたい」という気持ちが湧き上がっていたことが、その言葉からまっすぐに伝わってきます。
瀬戸内の海と小豆島が育んだ色彩感覚
大川さんのイラストレーションで目を引くのは、その色彩と、手のぬくもりを残した線です。特に「島」や「海」をモチーフにした作品が多い印象を受けますが、そのルーツはご自身の育った環境にあると言います。
――小豆島ご出身とのことで、海や島を描かれた作品が印象的ですが、作風の原点はどこにあるのでしょうか?
「海はあまりに身近な存在だったので、住んでいる時に特別感は全く感じてなくて。」
そう語る大川さん。大学で地元を離れてから「こんな綺麗なところだったんだ」と改めて気づかされたそうです。特に高校時代、高松の学校まで船で毎日通っていた経験は、大川さんの感性を育む上でかけがえのないものだったようです。
「片道1時間、毎日船に乗っていましたね。窓辺から海を眺める中で、季節によって海の雰囲気が変わったり、時間によっても違ったりするのがすごく良かったです。そういった景色の変化を間近で見られたのは今になって思えば貴重な時間でした。」
慌ただしい日々に紛れて見過ごしがちな季節の移ろいや、身近な自然の輝きを、大川さんは作品を通して私たちに教えてくれるようです。
日めくりカレンダーの制作プロセスとインスピレーション
365日分のイラストを描く上で、インスピレーションの源泉や制作プロセスはどのようなものだったでしょうか。
――日めくりカレンダーのイラストを描く中で、特に意識されたことはありますか?
「季節感や自然を描くにあたって、絵の色味を大事にしました。季節の色味に頼るところがあるというか、それが描くきっかけにもなりますね。」
インスピレーションは、日常の中に溢れています。畳のイラストでは、単調にならないように畳の上でくつろぐ犬を足してみたり、身近なモチーフから生まれた絵も少なくありません。特に、梅干しのイラストは「描いたことのないモチーフだったんですが思いのほか可愛くできて、新しい発見と感動がありました。」と、ご自身でもお気に入りの1枚だそうです。
また、「色や構図にバリエーションが出るように、自分の中でも新鮮味を大事にしていた」 と大川さん。そのため、イラストサイズの縦横比にある程度自由が出せるよう、紙面デザインの擦り合わせを最初に行いました。こうして同じ構図やモチーフが続かないように工夫し、365枚それぞれに個性と物語が生まれるベースを整えていったのです。
大川さんが目指すのは、「シンプルで、強いけれど、やさしい絵」。1枚ごとに凛とした輪郭を持ちながらも、見る人に安心感とあたたかさを与えてくれる表現が、「暦生活まいにち日めくり」の世界観を支えています。
さらに、本棚に収納できる「背表紙風」のデザインも気に入っているポイントのひとつ。
めくって楽しむだけでなく、飾り、保管し、積み重ねていける。そんなシーンまで含めて、この日めくりカレンダーは工夫が凝らされています。
暮らしに寄り添う日めくりカレンダーの楽しみ方
「暦生活まいにち日めくり」は、一体どのように暮らしに取り入れるとよいでしょうか。
――もし大川さんご自身が「暦生活まいにち日めくり」を使うとしたら、どこに置いて、どのように使いますか?
「仕事用のデスクに置きたいです。日々いつも過ごす場所の小さな変化を楽しみたいなって。」
大川さんにとって、毎日同じ景色の中で過ごすことが多い中で、一枚めくるごとに変わるイラストは、気分転換や心の癒しになることでしょう。「まいにち日めくり」は、日常にそっと寄り添い、豊かな時間をもたらしてくれる存在になりそうです。
個展で広がる世界|デジタルイラストと木版画表現
今回「暦生活まいにち日めくり」でデジタルイラストレーションの魅力を存分に発揮された大川さんですが、普段は木版画を中心に活動されています。今回の制作をきっかけに、あらためて「1枚の絵」と向き合う思い、そして個展の構想について語ってくださいました。
――今回描かれたイラストをベースに個展を計画されているとのことですが、どのような思いからでしょうか?
「日めくりの制作では、先に言葉が決まっているぶん、説明的な絵になってしまいそうだと感じて。そこに引っ張られすぎないようにしたい、という思いがありました。挿絵としての役割にとどまらず、これまで制作してきたオリジナル作品のように、額に飾って1枚の絵としてちゃんと成立するものを作る、という目標を最初に立てたんです。」
その思いから、「それなら実際に額装して展示してみたい」と、自然と個展の構想が広がっていたのだそう。日めくりを通して大川さんを知った方にも、また普段は日めくりを手に取らない方にも、作品そのものと出会ってもらう“入り口”をつくりたい。そんな願いが込められています。
現在構想中の個展では、「暦生活まいにち日めくり」のイラストをもとに、木版画として表現することも検討されています。デジタルで描かれた繊細な世界が、木という素材を通すことでどのような表情を見せるのでしょうか。
「木版画は、要素を絞った絵になりやすい。デジタルは同じ感覚で描いていても、よりペインティングに近い印象があります」と大川さん。
ひとつのモチーフが、異なる手法によってどのように変化するのか。その過程ごと味わえるのも、今回の個展ならではの楽しみになりそうです。日めくりのページから始まった出会いが、額の中の1枚へと広がっていく――そんな素敵な瞬間が、今まさに、生まれようとしています。
木版画家・大川菜々子さんが描く、日々をいつくしむ時間
めくるたび、日本の美しい四季を感じさせてくれる「暦生活まいにち日めくり」。木版画家・大川菜々子さんの作品への深い愛情と、自然への繊細な眼差しが込められたこの日めくりは、私たちの日々に寄り添い、ささやかな喜びと発見を与えてくれます。
ぜひあなたも、「暦生活まいにち日めくり」を手に取り、日々の移ろいをいつくしむ豊かな時間を感じてみませんか?
そして、大川さんが新たに挑戦する個展にも、ぜひ足を運んでみてください。きっと、あなたの暮らしに新しい彩りをもたらしてくれるはずです。
大川菜々子まいにち日めくり展
会期:2026年4月3日(金)〜5(日)/4月10日(金)〜12(日)
営業時間:12:00〜18:00
会場:GALLERY IRO Room2
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-37-7-101
日めくりカレンダー用に描き下ろしたイラストを原案に、木版画として新たに制作した作品を展示します。オンラインショップも予定。
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大川菜々子
Instagram @nanako_okawa
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