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忙しいときの食養生

旬のもの 2026.10.10

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忙しくなると、まず食事が雑になる

忙しくなってくると、食事って真っ先に雑になりませんか。朝は時間がなくてコーヒーだけだったり、昼も仕事をしながらパンやおにぎりを急いで食べたりして、気がついたら夕方。なんか甘いものが欲しくなって、とりあえずお菓子をつまんで、夜になってようやくちゃんとしたものを食べることも。しかも今日は全然まともなものを食べていないなと思って、そこで一日分を取り返すようにたくさん食べてしまうとか。忙しい時期には、そうなりがちです。

で、こういう話をすると、「忙しくても栄養バランスのいい食事を心がけましょう」と言われがちですよね。野菜を食べましょう、たんぱく質も摂りましょう、朝食も抜かないようにしましょう、できれば自炊しましょう、って。

でも、それができたら苦労しないんですよね。そもそも忙しくて食事まで手が回らないわけで、そこに献立を考えて、買い物をして、料理して、洗い物までして、さらに栄養バランスまで考えるとなると、食事そのものがもうひとつの仕事みたいになってきます。

なので今回は、忙しいときに何を食べたらいいか、という話だけではなくて、忙しいときには食事をどう考えたら少し楽になるのか、そんなところから食養生を考えてみたいと思います。

忙しいのは頭だけじゃなく、胃腸も同じ

中医学では、食べたものを消化して、そこから体に必要な気や血を作っていく働きを「脾」が担うと考えます。ここでいう脾は現代医学の脾臓そのものではなくて、もう少し広く、消化吸収を中心とした働きを表すものなんですが、面白いのが、中医学では考えすぎること、つまり「思」も脾に影響すると考えてきたことです。

仕事のことを考えたり、メールの返信を考えたり、明日の予定を組み立てたり、家族のことが気になったり、今日これが終わったら次はあれをやって……とか。忙しいときって体を動かしている以上に、頭の中がずっと動いているんですよね。ご飯を食べながらも次の仕事を考えていたり、スマホでメールを確認していたり、食べているのに頭は全然そこにない、みたいなこともあります。

そういうときに、さらに疲れているから栄養をつけなきゃとたくさん食べたり、野菜不足だから大盛りのサラダを食べたり、体に良さそうだからといろいろ足していくと、今度は胃腸がそれを全部処理しないといけなくなります。

忙しいときほど栄養を入れなきゃ、ではなくて、忙しいからこそ胃腸にもあまり仕事を増やさないようにしようと考えてみるのも大事なんです。

元気な日の食事と、疲れた日の食事は違っていい

薬膳というと、「疲れているときには何を食べたらいいですか?」とよく聞かれます。もちろん食材にはそれぞれ性質がありますし、体の状態に合わせて選ぶことも大切なんですが、疲れているときには、何かを足すより食事そのものを簡単にすることが合っている場合もあります。

たとえば、ご飯と味噌汁だけの日があったり、卵を入れたうどんだったり、お粥に梅干しだったり、ご飯にしらすと海苔など。そのくらいでもいいと思うんです。食欲が落ちて胃が重いのに、元気をつけなきゃと焼肉を食べたり、野菜不足だからと冷たいサラダを山盛り食べたりする必要はなくて、今の自分が無理なく受け取れるものを食べる。これも薬膳というか、食養生なんですよね。

体にいいものを足すことばかりが養生ではなくて、食べる量を少し減らしたり、品数を減らしたり、脂っこいものを今日はやめておいたりとか、胃腸がやらなければいけない仕事そのものを減らしてあげることも、何かを足すより大事なこともあります。元気な日と疲れている日で同じ食事をする必要はないですし、むしろ体調によって食べ方を変えるほうが自然だと思います。

一食で全部なんとかしようとしない

昼がパンだけになってしまったら、夜に野菜やたんぱく質を少し足したり、朝に食欲がなくてあまり食べられなかったら、昼や間食で補ったりしてください。一食を完璧にしなくていいです。1日でバランスをとるようにしてみてください。

毎回、主食があって、主菜があって、副菜があって、野菜もたんぱく質もあって……と考えていると、だんだん食事が宿題みたいになってきます。もちろんバランスは大切なんですが、今日のお昼は野菜が少なかったな、じゃあ夜の味噌汁に少し入れようかな、今日は全体的にあまり食べられなかったから明日はもう少し食べようかな、くらいでいいです。

一日の中でなんとなく整え、それでも無理なら数日くらいで戻していくぐらいで良いです。人間の体は一食だけですべてが決まるわけではないので、そのくらいの幅を持って考えるほうが楽だし、続きます。

「何を食べるか」を毎回考えなくてもいい

あと、これは忙しい人には結構おすすめなんですが、忙しい日に食べるものをある程度決めておくのもいいです。

たとえば朝なら、ご飯と味噌汁と卵。疲れて帰ってきたら、うどんに卵とねぎ。もう本当に何も作りたくなければ、パックご飯と納豆と即席の味噌汁とか。もちろんこれは自分が食べやすいものでいいんですが、「今日はもう無理」という日に何を食べるかを、元気なときにいくつか考えておくんです。

疲れて帰ってきて、冷蔵庫を開けて、「さて、何を食べよう」って考えるのって、意外としんどいんですよね。仕事で一日中いろいろ判断して、家に帰ってからも家事や家族のことでいろいろ考えて、最後に夕飯までゼロから考えるとなると、それだけでも疲れます。

薬膳では食材の効能に目が向きやすいんですが、食べるものを考えるところからすでに養生は始まっている、と考えてみても面白いと思います。何を食べるかだけではなくて、食べるまでに自分をどれだけ疲れさせないかも、忙しい人にとっては、こっちも結構大事です。

何もしたくない日は、食べものの「温度」を見てみる

料理をする元気もないし、献立を考えるのも嫌だ、という日は、食べるものを変えなくても、温度を少し変えてみるのもいいです。冷蔵庫から出したお惣菜をそのまま食べずに温めたり、冷奴ではなく湯豆腐にしたり、レンチンしてみたり、いつも冷たいお茶を飲んでいるなら常温や温かいものにしてみたりとか。

中医学では、脾胃は冷えを嫌うと考えます。だからといって、一年中冷たいものを食べてはいけないという話ではないんですが、疲れていて食欲も落ちている、胃が重い、便も少しゆるい、なんてときには、何を食べるかを全部変えるより、今食べているものを少し温かくしてみるほうが簡単です。

新しい料理を覚えたり、薬膳食材を買ってきたりしなくても、昨日まで食べていたものを温めるだけならできますし、忙しいときの養生って、そのくらいでいいんです。

夕方のお菓子を悪者にする前に

夕方になると無性に甘いものが欲しくなる、という人も多いと思います。でも、それもすぐに「甘いものを控えなきゃ」と考えなくていい場合があります。

朝はコーヒーだけで、昼も小さなおにぎりひとつ、それで夕方までずっと働いていたら、お腹が空くのは当たり前なんですよね。そこで夕方に限界が来て、お菓子をたくさん食べてしまって、また「食べちゃった」と後悔するくらいなら、食べて良いものを準備してみてください。

小さなおにぎりだったり、りんごだったり、ゆで卵や蒸したさつまいも、干し芋、栗なんかでもいいですし、自分が食べやすいものでいいと思います。お腹いっぱいにするというより、夕食までつなぐ感じです。

間食というと「余計なものを食べる」というイメージがありますが、生活時間によっては、むしろ食事と食事の間をつなぐために使ったほうがいい人もいます。

ちゃんとできない日のために、養生がある

養生というと、どうしてもちゃんとした生活を想像します。早く寝て、朝起きて、運動して、旬のものを食べて、できれば自炊して。でも、それが全部できるくらい余裕があるときは、実はそれほど困っていないんですよね。

本当に養生が必要になるのは、仕事が重なっていたり、家族のことでバタバタしていたり、疲れて何もしたくなかったり、そういうときだったりします。

なので忙しい時期は、いつもより簡単な食事になってもいいし、同じようなものが何日か続くこともあるし、作れなければ買ってきてもいい。一食で整わなかったら次の食事で少し補って、それでも無理だったら数日くらいかけて戻していくとか、それくらいでいきましょう。

余裕が戻ってきたら、また旬の野菜を買ったり、出汁をとったり、少し手の込んだものを作ったり、楽しんで見てください。元気なときの養生と、疲れているときの養生が同じである必要はありません。

忙しいときは今の自分が無理なく食べられるように、食事のほうを少し自分に合わせてみる。食養生って、肩肘張らず自分なりに整えて行く方法だと思います。

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櫻井大典

国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。

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