アースデイのはじまり

4月22日はアースデイ（地球の日）とよばれる記念日です。地球の環境保護ヘの支援を表明するイベントが世界各地でくりひろげられ、参加者は190ヶ国以上で10億人をこえると言われています。そもそもアースデイという考えが提起されたのは1969年のユネスコ（国連教育科学文化機関）の会議でしたが、アメリカの大学生たちが1970年4月22日の水曜日にティーチインという討論会を呼びかけたことで全米に一気に広まりました。その後、この運動形態は環境討論会から環境行動へ、また大学キャンパスからコミュニティー（共同体）へとシフトしました。地域的にも1980年からはカナダに、2006年からはヨーロッパにもひろがり、2009年には国連総会でこの日を「国際母なるアースデイ」（International Mother Earth Day）とすることが決議され、翌年から実施されるようになりました。「母」という単語が挿入されたのは、人類をはじめ地球の生物のあいだに存在する相互依存関係を反映するからであると注釈が付いています。

環境行動の実例

環境行動の一例を紹介しましょう。アースデイ20周年の1990年にはアメリカ、ソ連、中国の登山家たちがロープで互いにつながりあってエベレスト登頂をはたしました。そればかりか、それまでの登山隊が残した2トン以上の廃棄物を回収しました。また、その頃からリサイクル運動が盛んになり、1992年のリオ地球サミットに道を開く一助になったと言われています。サミットでは持続可能な開発に向けてのリオ宣言が採択され、のちの京都議定書につながっていきました。

日本でも1990年から4月を中心にさまざまなイベントや取り組みがなされるようになりました。今年の場合、アースデイ東京のプログラムを見ると、代々木公園のイベント広場で4月19日と20日の2日間にわたってライブやトークセッションがおこなわれ、ベテラン歌手の加藤登紀子さんも登場し広島の原爆に関する作品の朗読と「100万本のバラ」の歌を披露されました。他方、大阪では3月8日と9日に八尾市の久宝寺緑地で体験型ワークショップ、展示･トークセッションなどをくりひろげ、ライブのステージもおこなわれました。大阪･関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」もやってきて盛り上げ、参加者は2日間で14,300人だったと報告されています。

全国では北海道から沖縄まで67を数えるイベントが企画されています。期間は3月から5月をピークに1月から10月にわたっています。アースデイジャパンネットワークが標語に掲げているように「アースデイ、それは記念日ではなく、ムーブメント」に偽りはないようです。

アースデイと万博との奇しき関係

アースデイがはじまった1970年4月22日は、日本を熱狂の渦に巻き込んだ、あの大阪万博の開催中でした。現在、4月22日には国連本部で「日本の平和の鐘」が鳴らされます。これは1954年に故・中川千代治氏（元日本国連協会理事・宇和島市長）によって寄贈された釣鐘ですが、70年万博のときに里帰りし、その留守をまもったレプリカの鐘が今度は入れ替わりに万博記念公園に設置されたという次第です。

ところで、大阪･関西万博が「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに4月13日に開幕しました。『公式ガイドブック』にはやさしい言葉で「自分のいのち、世界のいのち、・・・いのちに真正面から取り組む史上初の万博」と詠われています。しかし、お堅い表現では、2030年のSDGｓ達成目標にむけた取り組みの一環という位置づけがなされています。SDGｓとは言うまでもなく、国連が採択した17項目にわたる持続可能な開発目標のことです。つまり、今回の万博は半年にわたる単なるお祭りではなく、また「いのち」について考える場であるにとどまらず、5年後の目標に向かっての運動でもあるのです。「万博、それはお祭りではなく、ムーブメント」と言うこともできそうです。