すずめかしら。街で見かける手のひらサイズの鳥に、よく見ると羽根にあざやかな黄色が入っている。そんなふうに目にした鳥がいたら、『カワラヒワ』かもしれません。河原や公園、農耕地など、人の住んでいる住宅地や市街にもふつうに住んでいる鳥なんです。
こんにちは、こんばんは。くりたまきです。
河原で見かけることが多いから、カワラヒワと名付けられた鳥。ヒワは漢字で「鶸」と書きます。なんだか弱そうな字面、とお思いかもしれません。諸説ありますが、単純に弱い鳥という意味ではなく、「小さくて、若々しい感じがする鳥」と考えられてきたようです。
『大言海』にも「鶸は弱きにあらず、その形の繊小なる意」とあります。語源の「ひわかし」は可憐で若々しいという意味。たしかに、フレッシュな黄色の混じった羽根と小ささは、その名前にぴったりです。
カワラヒワは全体的に濃いオリーブ色をしていますが、羽根を広げると明るい黄色が目を引きます。カワラヒワやマヒワ(ヒワ類の仲間です)の羽根の黄色は、ひわ色として古くから日本人に親しまれてきました。鎌倉時代、公家装束の狩衣(かりぎぬ)をまとめた『布衣記(ほいき)』にも記載されています。黄味の勝った明るい萌黄色は、江戸時代にも着物の色として使われていました。
ちなみにわたし自身は、この鳥を見かけたことは、ほとんどありません。きっと、見かけても気づいていなかったのでしょう。知らないと、気づけない。もったいないことだなあと思いました。
わたしなんかと比べるのは恐縮にもほどがあるのですが、かの清少納言は鳥類にも詳しかったようです。『枕草子』にヒワを含めた鳥たちについて記しているんです。
鳥は こと所のものなれど、鸚鵡(おうむ)いとあはれなり。人の言ふらむことをまねぶらむよ。郭公(ほととぎす)。水鶏(くひな)。鴫(しぎ)。都鳥(みやこどり)。鶸(ひわ)。ひたき。
引用:枕草子
和訳
「鳥は 異国の物であるけれど、鸚鵡(おうむ)はとてもしみじみとした感じがするものである。人の言うことを真似するそうだ。郭公(ほととぎす)。水鶏(くひな)。鴫(しぎ)。都鳥(みやこどり)。鶸(ひわ)。ひたき。」
この書き出しのあとも、さまざまな鳥の名が連なります。すずめ、斑鳩(いかるが)の雄鳥、たくみ鳥、鷺(さぎ)、おしどり、うぐいす、などなど。現代とちがって、インターネットも双眼鏡もない世界で、それぞれの鳥を細やかに描写していて感嘆しました。ちょっと、いや結構、清少納言のいた平安時代の未来で生きている人間として、恥ずかしくもあります。いろんな身の回りのものを丁寧に見つめて暮らしていきたいものですね。
青い空を飛ぶ姿は黄色の羽根が映えてうつくしい、カワラヒワ。あの羽根の黄色を見かけたら、「とってもラッキーな日だなあ」としあわせな気持ちで一日を過ごせそう。わたしはあたたかいチャイティーを水筒に入れて、ちょっとしたピクニックをしながら探してみようと思います。
みなさんも明るい黄色を目印にカワラヒワを探しながら、公園や河原を散歩してみてはいかがでしょうか?
栗田真希
ライター
横浜出身。現在は東京、丸ノ内線の終着駅である方南町でのほほんと暮らす。桜をはじめとした花々や山菜が芽吹く春が好き。カメラを持ってお出かけするのが趣味。OL、コピーライターを経て現在はおもにライターとして活動中。2015年準朝日広告賞受賞、フォトマスター検定準一級の資格を持つ。
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