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第21回|アドベントカレンダー-もういくつ寝るとクリスマス

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もうすぐクリスマス

クリスマスが近づくとヨーロッパではアドベントカレンダーが子供のいる家に飾られます。一般的なのは紙製のもので、冬景色の民家やクリスマスツリーの絵に12月1日から25日までの日付がついています。日付の部分は両開きに開けられるようになっていて、指折り数えてクリスマスを待ちわびるという趣向です。凝ったものになると、チョコレート等のお菓子や飾り物など、日毎に異なったものが詰まっています。子どもたちにとっては「もういくつ寝るとクリスマス」といった感じの楽しみなのでしょう。

アドベントとは?

アドベントとはキリスト教の待降節(カトリック、ルーテル教会)あるいは降臨節(聖公会)のことです。「到来」を意味するラテン語が語源で、「キリストの到来」=クリスマスにいたる約4週間のことを指します。教会暦では11月30日の「聖アンデレの日」にもっとも近い日曜日からはじまります。しかし、子ども向けのアドベントカレンダーはふつう12月1日が開始日です。

アドベントカレンダーの歴史

アドベントカレンダーは19世紀の初めにドイツのルーテル教会(ルター派)がはじめたといわれています。現存する最古のものは1851年の手づくりのもので、印刷されたカレンダーとしては20世紀初頭にハンブルクでつくられたものがあるそうです。そして、ドイツからフィンランドやスウェーデンなどルター派の強い北欧へ、あるいはドイツ語圏のオーストリアなどに広がり、さらには宗派を越えてイギリスやフランス、アメリカやカナダに伝播していったのです。いまでは中南米やオセアニア(オーストラリアやニュージーランド)、さらには日本にも伝わり、子どもたちの人気を集めるようになっています。ただし、東欧やロシアなどの東方正教会にはアドベントという概念はなく、教会暦にも民間の慣習にもアドベントカレンダーは存在しません。

クリスマスのイメージはどこから?

ところで、トナカイに乗ってやってくるサンタクロースのイメージがモミの木のクリスマスツリーとともに世界を席巻しています。これは北欧系のアメリカ移民がニューヨーク(旧ニュー・アムステルダム)ではじめ、アメリカ経済の影響力のもと次第に全世界に広まった慣習とみられています。

サンタクロースの正体

サンタクロースは聖ニコラウスと同一視されていますが、オランダのシンタクラースの例は興味ぶかいものです。シンタクラースの日は12月6日です。かれは長い白髭をつけ、赤い聖職者風の帽子をかぶり、赤マントをまとい、従者をしたがえ白馬に乗ってやってきます。そして5日の晩に、良い子にはプレゼントを配り、悪い子にはお仕置きをするのです。秋田の「なまはげ」をおもいだすような聖人です。聖ニコラウスはギリシャの生まれで、トルコで司教となりました。隣の家の煙突から金貨を投げ入れ、3人の娘の結婚をたすけたという伝説や、塩漬けにされた3人の子どもを生き返らせたという奇跡譚が伝わっています。

馬に乗ってやってくるシンタクラース

5日(イブ)のシンタクラースはスペインから船でオランダにやってきます。そして馬に乗って屋根伝いに子どもたちの家々を訪問し、その従者が煙突からプレゼントを配ります。子どもたちは暖炉に靴下をぶらさげ、プレゼントを心待ちにするのです。いっぽう、24日(イブ)にも最近はサンタクロースが来るようになりました。その場合、馬はトナカイのソリとなり、北欧風の赤いサンタ帽と赤いサンタ服を身につけています。オランダではサンタクロースのほうが新しい習俗なのです。とはいえ、子どもたちにとってはプレゼントをもらう機会が増えたわけで、「一粒で二度おいしい」のがクリスマスなのです。

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中牧弘允

文化人類学者・日本カレンダー暦文化振興協会理事長
長野県出身、大阪府在住。北信濃の雪国育ちですが、熱帯アマゾンも経験し、いまは寒からず、暑からずの季節が好きと言えば好きです。宗教人類学、経営人類学、ブラジル研究、カレンダー研究などに従事し、現在は吹田市立博物館の特別館長をしています。著書『カレンダーから世界を見る』(白水社)、『世界をよみとく「暦」の不思議』(イースト・プレス)など多数。

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