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キョウチクトウ

旬のもの 2026.08.06

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こんにちは。俳人の森乃おとです。

夏の盛り、濃い緑の葉の間から鮮やかな花を咲かせるキョウチクトウ(夾竹桃)。開花期が長く、強い陽射しの中でも次々と美しい花を咲かせるため、強い生命力の象徴であり、希望を感じさせる植物です。サルスベリ(百日紅)やノウゼンカズラ(凌霄花)、ムクゲ(木槿)と並び、「夏の花」の代表格の一つといえるでしょう。

竹のような葉が、桃のような花を挟む

キョウチクトウは、キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木です。原産地は地中海沿岸からインドにかけての地域とされています。日本へは江戸時代中期、中国を経て渡来。現在では、本州以南を中心に街路樹や公園樹として広く植えられています。

和名は漢名「夾竹桃」の音読みです。細長い葉はタケ(竹)に、花色がモモ(桃)に似ていることから名付けられました。「夾」は挟(はさ)むの意で、竹のような葉が桃のような花を挟んでいることから。また、葉の形をハサミに見立てたという説もあります。
樹高は3~5m、枝はよく分かれてこんもりと茂ります。細長く厚みのある葉は光沢があり、3枚ずつ輪生します。

開花期は7~10月。径4~5㎝の甘い香りを放つ花を、枝先に多く集めて咲かせます。花冠は筒状で上部が5裂し、花弁が風車のように重なりながら開くことが特徴です。植物学ではこのような花冠を「回旋花冠(かいせんかかん)」と呼びます。花色は濃いピンクがよく知られていますが、淡いピンクや白、赤などさまざまな品種があります。

学名は Nerium oleander(ネリウム・オレアンデル)。地中海沿岸を原産とする系統はセイヨウキョウチクトウとも呼ばれ、古くは分類上、亜種として扱われることもありました。属名のネリウムは古代ギリシア語で「湿地」、種小名のオレアンデルはオリーブの葉に似ていることを意味します。

強い毒を秘めて炎天下に咲く

「美しい花には毒がある」という言葉のとおり、キョウチクトウは強い毒をもつ植物としても知られています。葉や枝、花、根、樹液に至るまで全草に、心臓の働きに影響を与える強心配糖体が含まれています。

古くからその毒性は知られ、海外では枝を串代わりにして肉を焼いたところ、毒が食材に移って中毒を起こしたという逸話も伝えられています。そのため、枝を折ったり、葉や花を口にしたりしないよう十分な注意が必要です。

また、キョウチクトウは乾燥や暑さに非常に強く、大気汚染や排気ガスにも耐えるため、高速道路や幹線道路の街路樹としても多く植えられています。乾燥した環境にも適応した根を発達させ、厚みのある葉が水分の蒸散を抑えることで、真夏の炎天下でも青々と葉を茂らせ、次々と花を咲かせることができるのです。

花言葉は「たくましさ」「危険な愛」「用心」

1945年8月6日の原子爆弾投下後、「75年間は草木も生えない」とまでいわれた広島の焦土で、いち早く花を咲かせた植物の一つがキョウチクトウでした。その力強い姿は復興への希望の象徴となり、1973年には広島市の花に選ばれています。
キョウチクトウの花言葉には、「たくましさ」「危険な愛」「用心」などがあります。暑さや乾燥に負けない生命力と、毒をもつ性質が、その花言葉にも映し出されているのでしょ

夾竹桃 炎(も)ゆ広島も 長崎も

これは現代俳人・関口比良男(せきぐち・ひらお)の句。燃えるように咲くキョウチクトウの姿に、原爆の炎と、その焼け跡から再び歩み始めた広島・長崎を重ね合わせた、鎮魂と平和への祈りが込められた一句です。
夏の青空によく映えるキョウチクトウの花は、今年もまた、私たちに生命の尊さと争いのない世界への願いを静かに語りかけています。

キョウチクトウ(夾竹桃)

学名:Nerium oleander
英名:oleander

キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木。原産地は地中海沿岸からインドにかけての地域。開花期は7~10月、芳香のある花を枝先に多数集めて咲かせる。全草に強心配糖体を含む有毒植物。強い生命力を持ち、復興のシンボルとして広島市の花に選ばれている。

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森乃おと

俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に『草の辞典』『七十二候のゆうるり歳時記手帖』。『絶滅生物図誌』では文章を担当。2020年3月に『たんぽぽの秘密』を刊行。(すべて雷鳥社刊)

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