今日の読み物

お買い物

読み物

特集

カート内の商品数:
0
お支払金額合計:
0円(税込)

こよみの学校 第255回 五季、それとも二季? 真夏日、猛暑日、酷暑日、熱帯夜

この記事を
シェアする
  • X
  • facebook
  • B!
  • LINE

大阪・関西万博の熱中症対策

今年の梅雨は短く関西でも6月末に梅雨明け宣言となり、7月から8月初旬にかけて連日うだるような暑さが続きました。目下開催中の大阪・関西万博も熱中症対策が欠かせません。主催者側は涼しい場所の増設をめざし、パラソルを150基追加して300基以上にしたり、スポットエアコンを入場ゲート前に60台設置するなど、さまざまな対策を講じています。個人向け対策としては東ゲートにレンタル日傘を800本用意したり、スタッフに熱中症リスクを知らせるスマートウォッチの着用を義務づけたりしています。そして、はからずも円形2kmの大屋根リングが格好の避難所となっています。

五季それとも二季

中国の伝統的季節感は春夏秋冬の四季ですが、日本には梅雨のシーズンがあるので五季だとする説もあります。しかし、昨今では別の意味での五季が話題となっています。というのも、地球温暖化の影響でしょうか、真夏日(摂氏30度以上)や猛暑日(摂氏35度以上)が年々増えているからです。気象庁の統計では2003年の東京都内では真夏日は40日に達せず、猛暑日はなしでした。ところが20年後の2023年になると、真夏日が約90日、猛暑日が約20日となりました。そのため四季を前提にしてきたアパレル業界に異変がおきているというのです。そこでは夏を「初夏・盛夏」と「猛暑」に二分する企業もあれば、「暑く長い夏」と「遅れる寒い冬」の「二季」に再定義するところもあるというのです。

アパレル業界の対応

さらに突っ込んで、アパレル業界における具体的な対応策を探ってみましょう。最近の新聞記事によると、20年前は約50日あった秋物期間が昨今は約30日に短縮され、厚手の秋物衣料がふるわなくなっているとのこと。そのため、袖なしコートなど重ね着ができる衣料品を増やしたり、秋らしい暖色系の夏物衣料を提案したりしているそうです。実際、夏物衣料の販売期間は約160日にも達し、20年前より1ヵ月も増えていて、そのため薄手のサマーニットの生産が急増しているとのこと。他方、冬の定番だったマフラーや手袋も大幅に落ち込むようになり、春夏用の手袋の生産を増やして活路を開こうとしているそうです。逆に、熱中症対策を逆手にとって断熱性のある生地や気化熱で温度を下げる生地を採用するところもあるとのこと。いずれにせよ、アパレル業界では四季の変化に合わせるのではなく、気温の高低に応じた衣料品の開発にポイントを絞っているようです。

酷暑日と熱帯夜

猛暑日とは2007年4月1日に気象庁が1日の最高気温が35度以上の日と規定しました。他方、日本気象協会は2022年夏に40度以上の日を酷暑日と命名しました。酷暑日は昨年7月末現在、東日本に多く(66回)、北日本(4回)や西日本(6回)はわずかで、九州・沖縄にいたっては皆無です。沖縄は海洋性の気候のため、気温が上がりにくい(下がりにくい)からです。

ところで、夜の最低気温が25度以上の場合、熱帯夜という言葉が使われ、30度以上の場合は超熱帯夜とも言われています。しかし、これには異議ありです。なぜなら、熱帯の夜は意外と涼しいからです。わたしが体験したのはもっぱらブラジル・アマゾンですが、そこでは年間の平均気温はあまり変わらず、夜は10度まで下がります。もちろん日中は45度まで上がることもあるので、寒暖差の激しさは極端ですが、夜には川面から「もや」が立ちのぼるくらい冷え込みます。「もや」は気温が水温よりも低いときに起こる現象です。というわけで、アジアやアフリカの熱帯はいざ知らず、こと南米アマゾンに関しては失礼な「熱帯夜」という用語は返上してほしいものです。

この記事を
シェアする
  • X
  • facebook
  • B!
  • LINE

中牧弘允

文化人類学者・日本カレンダー暦文化振興協会理事長
長野県出身、大阪府在住。北信濃の雪国育ちですが、熱帯アマゾンも経験し、いまは寒からず、暑からずの季節が好きと言えば好きです。宗教人類学、経営人類学、ブラジル研究、カレンダー研究などに従事し、現在は吹田市立博物館の特別館長をしています。著書『カレンダーから世界を見る』(白水社)、『世界をよみとく「暦」の不思議』(イースト・プレス)など多数。

こよみの学校