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こよみの学校 第260回 公現祭の三博士-生誕シーンに欠かせない人物

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降誕から公現にかけての降誕節

1月6日は公現祭(エピファニー)の日です。カトリック教会では大切な祝祭ですが、日本ではあまり知られていません。イエスの降誕を祝うクリスマスからイエスの公現までの12日間は降誕節とよばれる聖なる期間であり、かつてイングランドでは休息がもとめられました。公現とはイエスが非キリスト教徒(異邦人)にはじめて姿を現したことを意味し、それを象徴するのがいわゆる「東方の三博士」です。最終日は十二夜と称され、特別のケーキを食べたり、仮装を楽しんだりして、社会的地位の逆転や大騒ぎを伴っていました。十二夜のケーキは「王様のケーキ」、「十二夜のケーキ」、「ガレット・デ・ロワ」(フランス)などとよばれ、切り分けたとき、そのなかに隠されていた豆粒(あるいは小さな人形など)に当たった者は「祝祭の王」として王冠をかぶり、その晩だけは他の人に命令をくだすことができるのです。また、音楽やダンスに興じるのは常で、角笛やカウベルなどで騒がしい音をたてたりするところもあります。無礼講が許され、悪魔祓いも意図されているのです。

東方の三博士

新約聖書の「マタイによる福音書」には東方の博士たちが星に導かれ、生まれたばかりのイエスをさがしに、黄金・乳香・没薬(もつやく)などの贈り物を持ってベツレヘムを訪ねるくだりが記されています。博士(ギリシャ語では複数形のマゴイ。マジックの語源でもある)とは占星術の学者たちであり、のちには宗教画に描かれ、降誕劇にも登場しました。また、クリスマス・プレゼントの由来にも一役かいました。博士たちは三賢人、三賢者、三王と訳されることもあります。かれらはユダヤ人ではない異邦人でありながら、「ユダヤ人の王」の誕生を間近で祝したことにより、後世に名を残しました。

その個人名は福音書には記されていませんが、西欧では後年、カスパール、メルキオール、バルタザールとなりました。また図像ではふつう青年、壮年、老人の姿であらわされ、それぞれ黄金・乳香・没薬をもつようになりました。ただし、シリアやエチオピアなどでは別の名前をもち、図像によっては博士のひとりはアラブ系や黒人系として描かれることもあります。黄金・乳香・没薬も王・神・人をあらわすとする説もあれば、たんに占星術上の道具だとする見方もあります。いずれにしろ、三博士は、主の栄光が照らされるのを見たという羊飼いたち(「ルカによる福音書」)とともに、イエスの生誕シーンには欠かせない人物となりました。

こどもたちに贈り物をする日

スペインでは公現祭の日に三博士がこどもたちにプレゼントを届けてくれることになっています。クリスマスには親から、公現祭には三博士から贈り物をもらえるのです。1月5日の夜には「三博士のパレード」もあり、沿道のこどもたちに向けグミやキャンディーを投げながら行進します。ラテンアメリカのスペイン語圏でもこども向けのプレゼントの運び手は三博士です。こどもたちはメキシコでは聖誕シーンの脇に置かれた3つのプレゼントに目を輝かせ、キューバでも欲しいおもちゃのリストを三博士に送り、かれらが乗ってくるラクダのために牧草と水を用意して床に就きました。

東方正教会の神現祭

欧米では公現祭の日はクリスマスツリーや生誕シーンを片付ける日でもあります。また職場の休暇も学校の休みもこの日をもって終わるのがふつうです。しかし、東方正教会ではエピファニーを神現祭あるいは「主の洗礼祭」とよび、ロシアでは1月19日(グレゴリオ暦)に祝います。イエスの降誕はグレゴリオ暦の1月7日(ユリウス暦の12月25日)にあたり、その12日後というわけです。正教会ではキリストがヨルダン川で洗礼を受けたことを記念する日として親しまれています。たとえばブルガリアでは聖職者が信者とともに川や湖に行き、水中に十字架を投じ、若者たちが拾い上げるという風習があります。そのルーツは東ローマ帝国の時代、司祭がおこなった水の聖別にあり、人びとはその水を持ち帰って屋敷や畑にまき、新年の繁栄を願ったのでした。

「東方の三博士」銀貨の発行中止

2025年10月、ドイツでは「東方の三博士」を描いたクリスマス記念の25ユーロ銀貨の発行を中止しました。理由は銀の急騰です。原材料の価格が貨幣の額面価格を大幅に上回るからだそうです。三博士の“公現”は、相場をにらみがら待ち望むほかありません。

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中牧弘允

文化人類学者・日本カレンダー暦文化振興協会理事長
長野県出身、大阪府在住。北信濃の雪国育ちですが、熱帯アマゾンも経験し、いまは寒からず、暑からずの季節が好きと言えば好きです。宗教人類学、経営人類学、ブラジル研究、カレンダー研究などに従事し、現在は吹田市立博物館の特別館長をしています。著書に『カレンダーから世界を見る』(白水社)、『世界をよみとく「暦」の不思議』(イースト・プレス)、『こよみの学校』全5巻(つくばね舎)、編書に『世界の暦文化事典』(丸善出版)など多数。

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