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第5回|誤差も積もれば山となる イースターの怪

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もうひとつのイースター

今年のイースター(復活祭)は3月31日(日)でした。ところが、日本カレンダー暦文化振興協会のオリジナル・カレンダーにはもうひとつのイースターがのっています。それはなんと5月5日(日)です。こどもの日がキリストの復活祭にもなっているのです。前者はカトリックやプロテスタントの祝日で、後者は東方正教会の祭日です。今年は1ヵ月以上もはなれているのです。

2つの宗派、2つの暦法

宗派のちがいとはいえ、どうしてこんなことが起こるのでしょうか。それは暦法のちがいに由来します。つまり、ユリウス暦とグレゴリオ暦の相違なのです。ユリウス暦はユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)がエジプトの太陽暦にならってB.C.45年に制定した太陽暦です【第3回「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら」参照】。そこでは1太陽年は365.25日と定められ、4年に一度閏日を1日置いて調節することにしました。

グレゴリオ暦、空白の10日間

ところが、実際の太陽年は約365.2422であり、時間にして11分14秒ほど短いのです。その誤差は128年経つと1日となり、16世紀には10日にも達してしまいました。もちろん修道士のロジャー・ベーコンなど一部のひとはそのことに気づいていたのですが、ローマ教皇庁も東方正教会も暦法を変更しようとはしませんでした。イースターなどキリスト教の重要な祭日が季節に合わなくなっているというのに。教皇庁が重い腰をあげたのはようやく1578年になってからです。ときの教皇グレゴリオ13世が改暦委員会を招集し、1582年にグレゴリオ暦が制定されました。太陽年は365.2425日と決まりました。調整のため、10日間、暦を先に飛ばしました。グレゴリオ暦には空白の10日があるのです。それが今日、われわれが使っている暦です。

グレゴリオ暦のイースター

ところで、イースターは「春分の日を過ぎた最初の満月の日の次に来る日曜日」と定められています。そして春分の日は3月21日に固定されました。今年の場合、グレゴリオ暦では最初の満月は3月27日となります。したがって、イースターはその次の日曜日、すなわち3月31日でした。

ユリウス暦のイースター

他方、今年のユリウス暦の3月21日はグレゴリオ暦の4月3日にあたります。4月3日以降の満月は4月26日です。ならば、次の日曜日である4月28日にイースターがきてもよさそうなのに、なぜ5月5日になるのでしょうか。理由は、ユリウス暦の満月の計算が21世紀では9日ほどグレゴリオ暦の天文学的な満月より早く来るからです。今年の場合はグレゴリオ暦の4月30日(火)です。したがって、次の日曜日である5月5日がイースターになるわけです。

「ちりも積もれば山となる」のたとえがこよみの誤差に影響をあたえている一つの例です。

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中牧弘允

文化人類学者・日本カレンダー暦文化振興協会理事長
長野県出身、大阪府在住。北信濃の雪国育ちですが、熱帯アマゾンも経験し、いまは寒からず、暑からずの季節が好きと言えば好きです。宗教人類学、経営人類学、ブラジル研究、カレンダー研究などに従事し、現在は吹田市立博物館の特別館長をしています。著書に『カレンダーから世界を見る』(白水社)、『世界をよみとく「暦」の不思議』(イースト・プレス)、『こよみの学校』全5巻(つくばね舎)、編書に『世界の暦文化事典』(丸善出版)など多数。

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