おはようございます、こんにちは。
エッセイストの藤田華子です。
洋梨も柿も栗もお芋も美味しい!スーパーや八百屋さんに並ぶ食べ物から、秋の深まりを感じます。
秋といえば、食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋など「○○の秋」といわれますよね。
調べてみると、どれも四季がある日本らしく「暑すぎず、寒すぎず、過ごしやすい気候」が関係しているのですが、一見理由が見えにくいものもあります。今回はそれぞれのルーツを探りながら、特に「芸術の秋」について考えてみましょう。
まず、食欲の秋。
冒頭でも書いたように、食材が旬を迎える秋はいつもより食欲が増すという考えから「食欲の秋」という呼び名ができたそう。
そして実は、秋の食欲は科学的にも証明されているんです。この時期は日照時間が短くなるので、セロトニンの分泌量がダウン。それにより、食欲が増えると言われています。なので、ついつい食べてしまうのは仕方ない。そんな言い訳もできちゃいます(笑)。
続いて、スポーツの秋。
過ごしやすい気候の秋は、体を動かしやすい季節。また、1964年に行われた「東京オリンピック」も「スポーツの秋」の由縁に。開会式が1964年10月10日に行われたことを記念して1966年に10月10日は「体育の日」となりました。体育の日の目的は、スポーツに親しみ、健康な心身をつちかうこと。大きくこのふたつの理由から、「スポーツの秋」と言われるようになりました。
※2000年から「ハッピーマンデー制度」により10月の第2月曜日と改められ、毎年体育の日の日程が変動するようになりました。今年は東京オリンピックの関係で、7月23日が体育の日に。
3つめは、読書の秋。
こちらも、ゆっくり読書できる気候が影響していますが、それに加えて古代中国の漢詩も理由に挙げられます。詠んだのは唐代の詩人・韓愈(かんゆ)。彼の詩にこんな一節があります(和訳)。
「秋になり長雨があがって空も晴れ、涼しさが丘陵にも及んでいる。ようやく夜の灯に親しみ、書物を広げられる」
これが夏目漱石の『三四郎』に引用されたことがきっかけで、涼しい秋の夜は読書に適しているという考えが浸透したと言われています。
最後に、芸術の秋。
他と同じく気候的に過ごしやすいからこそ、心身的な負担が減って芸術を楽しむゆとりが生まれるというのが大きな理由。また秋は、植物が紅葉を始める季節であり、野菜や果物が実をつける季節…つまり、美しい自然美を身近に楽しめます。ちなみに、この「芸術の秋」という言葉を広めたのは雑誌の『新潮』だそうです。
1918年に発行された号に「美術の秋」という言葉があり、それが「芸術の秋」になったと言われています。
芸術は、広く、誰にでも開かれたものです。
誰かと同じ物を観ていても見え方や感じ方は違うし、そのことを楽しいと気づかせてくれる存在です。
重度の知的障害を持った私の叔父は、絵を描くのが得意でした。力強く、大胆な彩色。
叔父の描く絵は、彼の目にうつる世界がいかに鮮やかでキラキラしたものかを教えてくれるようでした。子どものころ、これを個性と呼ぶのかなと思った記憶があります。
のびのびと個性を尊重し合いながら、芸術の秋を満喫してみてはいかがでしょう。
藤田華子
ライター・編集者
那須出身、東京在住。一年を通して「◯◯日和」を満喫することに幸せを感じますが、とくに服が軽い夏は気分がいいです。ふだんは本と将棋、銭湯と生き物を愛する編集者。ベリーダンサーのときは別の名です。
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