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お盆の食べもの

暦とならわし 2024.08.09

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連日の猛暑が続いていますね。
みなさん、今年のお盆休みはどのように過ごされますか?

お盆はお正月とともに、日本人の最も大切な節目の行事として続いてきました。日本の盆行事は仏教の影響が強く、仏教行事の「盂蘭盆(うらぼん) 」と、それ以前の日本古来行われてきた先祖供養「魂まつり」の習俗が合わさってできあがったものと考えられています。

お盆には家族や親類が集まって、食事をする機会も多いですね。そのときの行事食は、地域によってさまざま。今回は、そんなお盆の地域性豊かな食べものをご紹介します。

『守貞謾稿』に描かれた江戸時代の精霊棚や盆灯篭(出典:国立国会図書館デジタルコレクションより)

新暦になった現代は、多くの地域で8月15日を中日とした4日間をお盆とし、企業でもこの時期をお盆休みとすることがほとんどですが、もともとの旧暦では、7月が盆月とされ、7月1日を「釜の蓋が開く日」「釜蓋朔日(かまぶたついたち)」などと呼んで、お盆行事の始まりでした。

釜の蓋とはつまり、あの世とこの世をつなぐ扉のこと。その扉が開いて、ご先祖さまたちがあの世を出発する日と考えられたのです。

「釜の蓋まんじゅう」は餡入りの炭酸まんじゅうのこと

栃木県の那須地方では、今でもお盆行事を大切にしており、月遅れの8月1日を釜蓋朔日と呼んで「釜の蓋まんじゅう」を食べる風習があります。

「釜の蓋まんじゅう」は、餡入りの炭酸まんじゅうのことで、黒糖やカボチャなどの素朴な風味のものもあります。昔は各家庭で手作りされ、祖霊を迎えるためのお供えにするとともに、この時季ならではのおやつとしても愛されたそう。この時期限定で、地域の農産物直売所や道の駅などでも売られていますよ。

『都名所図会』に描かれた五山送り火(出典:国際日本文化研究センター 都名所図会データベースより)

一方、「五山送り火」で知られる京都では、お盆を家で過ごした祖霊があの世へと帰っていく8月16日に、アラメ(荒布)を使った料理が作られます。

乾燥アラメは細く刻んであり、真っ黒です

海藻の一種であるアラメは、刻んで乾燥させたものが京都では日常的におばんざいの材料に欠かせません。京都の伝統的な商家では、普段から月に3度ある「八」のつく日には、アラメの煮物を炊いて、「芽が出る」ようにゲンを担いだといいます。

そして、8月16日の朝には、「アラメと油揚げの煮物」をお供えするそう。

このとき、アラメの真っ黒な茹で汁を家の玄関や戸口にまくのです。そうすることで、ご先祖さまの霊魂が、この世に未練を残すことなく、無事にあの世へと帰っていけると信じられてきました。こうした習慣は「追い出しアラメ」と呼ばれ、今も続けられています。

京都のおばんざい「アラメと油揚げの煮物」はお盆にも欠かせません

お盆休みには、故郷へ帰省される方も多いと思います。
伝統的なお盆の食べものや風習について、ご実家で話を聞いてみるのも興味深いかもしれません。

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清絢

食文化研究家
大阪府生まれ。新緑のまぶしい春から初夏、めったに降らない雪の日も好きです。季節が変わる匂いにワクワクします。著書は『日本を味わう366日の旬のもの図鑑』(淡交社)、『和食手帖』『ふるさとの食べもの』(ともに共著、思文閣出版)など。

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