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二十四節気と暮らしの道具/小雪しょうせつ

二十四節気と七十二候 2024.11.22

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小雪 11月22日~12月6日 十月中〈冷ゆるが故に雨も雪となりてくだるが故なり。『暦便覧』〉

フカフカ座布団

だいぶ冷えてきましたね。小雪です。まだ初冬で本格的な寒さにはなっていないものの、山々の嶺は雪化粧をしています。木枯らしも吹いて、そろそろ木々の葉も散り果てそう。冬に向かって、身の引き締まるころです。

冬支度のひとつ、あったかな座布団を出しました。押し入れにしまってあったので、よく日に干してフカフカに。部屋でくつろぐのに、自分専用の座布団は頼もしき相棒のような存在です。お膳を前にすわるときはもちろん、ゴロリと横になるときは、枕にもなります。ぺったんこになった座布団なら、二つ折りにすればちょうどいい高さに。

いまは一般的に椅子の生活が多いので、揃いの座布団がある家庭は少ないかもしれません。もちろん、畳の部屋があるおうちはその限りではないと思いますが。

こどものころは、家に揃いの座布団があったので、それを部屋に並べて飛び石を渡るように踏んづけたり、ひっ転がしたりして遊んでいました。が、よく考えてみれば、あれは来客のための座布団だったのですね。家族が敷いている座布団とは違う、ちょっと典雅な柄のついた艶のある皮でした。しまいにはどれだけ遠くまでいくか、などと部屋の中で蹴っ飛ばして遊んでいましたっけ。

そんな座布団ですが、大人になって、その座布団にも表裏と前後があると知りました。座布団の表裏は、皮の縫い目でわかります。縫い目が、上からかぶせてある方が表。手で触ればすぐにわかります。また、座布団の前後は、皮が「わ」になっている側が前です。ここが、すわったときに膝の前にきます。

それまでは、表裏や前後などおかまいなしにかっ飛ばしていた座布団。表裏と前後の存在を知ったとき、これは知ることができてよかったな、と思いました。なにかの機会に大事なお客さんにお勧めすることがあっても、もう慌てないぞ。それにしても、座布団をあんなに痛めつけてごめんなさい。

後年、大事なお客様ということではありませんが、それに似た機会が訪れました。町内会の集まりで、公民館の座敷で座布団を並べることになったのです。町内会の役員をしていた立場上、自分が率先して並べなければならず、そのとき確信をもって、ただしく座布団を並べられたのはなによりでした。

これからさらに寒さが募ってくる季節。あったか座布団を相棒に、お部屋でぬくぬく過ごしたい。そのときも、座布団の置き方はわかっているよ。

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平野恵理子

イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。

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