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菊酒きくざけ

旬のもの 2020.09.06

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こんにちは。日本酒ガールの松浦すみれです。

高貴な花の装いそのままに、可憐な花びらを浮かべた菊酒には、清廉な香りが宿る。古くから、重陽の節句に長寿を祈って酌み交わされた菊の宴。五節句のなかでも、最大陽数の九が重なることから、重陽の日は特に重んじられたといいます。

古来、中国の故事にもとづいて伝わったとされる、菊花酒の不老長寿ご利益。季節を楽しむすべを知り得ていた貴族たちが、優雅な宴へと昇華させたことが想像できます。

数年前、かつての趣に想いを馳せて、菊花祭が執り行われる、京都の石清水八幡宮を訪れました。神前に供えられた黄色の菊花には、たなびく雲が掛かるかのように、白い真綿が載せられていました。平安時代、宮中の女性たちが、重陽の前日に菊花へ真綿をかぶせて、翌朝、真綿に染みた朝露で身を拭い、変わらぬ若さと不老を祈願していたといいます。
いつしか「菊の着せ綿」という風習として、民衆にも広まりました。匂い立つ凛とした菊花の美しさには、いつの時代も変わらぬ、女性たちの願いが映されているようです。

豊かな秋の実りへの感謝も尽きる事はありません。黄金色に実った稲穂がまぶしい頃、夜長に味わう、秋のご馳走。炊き立ての新米のご飯に、栗ご飯や松茸ご飯。夕飯時がいっそう楽しみになるのは、新物のサンマが食卓に並ぶ時かもしれません。お酒はもちろん、旬のひやおろし。すこし肌寒さも感じる夜には、身に染みる燗酒を。秋の夜長の嬉しさをかみしめる日がしばらく続きそうです。

今月のお酒「ひやおろし」

風流な名で親しまれるようになったのは、江戸時代に遡ります。冬にしぼったお酒を春先に一度火入れした後、大桶でじっくりとひと夏を越し、秋を迎える頃に、外の温度と同じくらいの「冷や」(※常温)のままおろした事からこの名が着きました。日本酒で「冷や」と言うと、昔から常温の事を指します。冷やされた「冷酒」として区別するようになったのは、冷蔵設備が整ってからのこと。様々な温度帯によって味わいの違いを楽しめる日本酒の魅力を、秋の味覚とともに、存分に楽しみたいですね。

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松浦すみれ

ルポ&イラストレーター
京都生まれ。京都の神社で本職の巫女を経て現職。現在、滋賀と京都の二拠点生活。四季折々に酔いしれて、絵と文を綴る日々。著書『日本酒ガールの関西ほろ酔い蔵さんぽ』(コトコト)。
photo:©️NAOKI MATSUDA

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