暗闇のなかで、小さな灯りが息をする。
飛び回ったり、交流したり、とどまったり。
消え入りそうなか細い光を発しながら、
低くて鈍いカエルの声と混じり合う。
人間は静かにじっと、いのちの輝きを見つめる。
今日のテーマ「蛍火(ほたるび)」は、蛍が発する光のこと。
5〜7月頃に夜空を舞う、初夏の風物詩です。
日本で見られる蛍は、光らないものも含めると40種類以上あり、そのうち約20種類は沖縄に生息していると言われています。
光る蛍のうち、一般的によく見られるものは、ゲンジボタルとヘイケボタルの2種類。蛍のなかでも特によく光ると言われていて、光り方の違いはゲンジボタルは大きくゆっくり、ヘイケボタルは小さな光がすばやく点滅するように光ります。
地域や種類によって観賞できるシーズンは少しずつ違ってきますが、あたたかい地方ほど早く見ることができます。
しかし、蛍はとても繊細な生き物です。どこでも見られるわけではなく、観賞できる条件は決まっています。
まず、水がきれいであること。
流れがゆるやかで、水温は約15〜20度が適温。蛍のエサになるカワニナが豊富に棲んでいて、アルカリ性、有機毒物が少ない水であることが大切な条件です。
次に、生あたたかく、風がない日であること。
気温は約20度、曇っていて風がない日に蛍はよく飛ぶと言われています。
また、自分の光が目立たない明るい夜や、雨の日、寒い日は葉っぱの陰に隠れてしまうそうです。
蛍は、19時半頃から飛びはじめ、20時台がピークで21時頃から徐々に減ってきます。
そもそもなぜ蛍は光るのでしょうか。
それは「結婚相手を見つけるため」です。
オスは光を発しながら、自分の相手になるメスを探します。メスもまた、弱い光を発して草や木の葉の上でオスを待ちます。出合ったときは強い光を発して、オスがメスのもとへ飛んでいく。つまり「蛍火」は「プロポーズの合図」とも言えます。暗いなかで相手に気づいてもらうため、出合うために自分を輝かす、大きな光なのです。
私はここ数年、毎年欠かさず近所の水辺へ蛍を見に行っています。
19時頃から待機して、蛍があらわれるまでじっと待つ。周りには同じように蛍を見にきた人たちがひそひそ声でお喋りをしていますが、蛍があらわれると一気に静かになる。
ひとつひとつの小さな光を逃さないよう、暗闇に慣れてきた目で一生懸命追いかける..。
たまに強い光を発する蛍を見かけると、心のなかで「やったね」と拍手したくなります。
逆に弱い光で彷徨い続ける蛍や、おそらくフラれてシュンとしたような蛍には「がんばれ」と声をかけたくなります。
ただ、蛍の寿命は短く、羽化して成虫になったあと2週間ほどで死んでしまいます。その僅かな時間で光るいのちの交流。有限であるからこそより尊く、うつくしく映るのかもしれませんね。
今年もまた同じ場所で観賞できることに感謝しながら、たくさんの「蛍火」を見届けたいなぁと思います。
高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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