こんにちは。科学ジャーナリストの柴田佳秀です。
今回は、ちょうど今頃が子育ての真っ最中であるフクロウの仲間、アオバズクの話です。

青葉が茂る5月上旬に日本へ渡ってくるミミズクだからアオバズク。名前の由来はそんな感じです。でも、この名前はちょっと変なんです。日本ではフクロウの中でも、ウサギの耳のような飾り羽が頭にある種類を区別して、ミミズクと呼んでいます。ところが、このアオバズクの頭には飾り羽がありません。だから本当はミミズクではなく、フクロウなんです。それなのに、なぜミミズクなのか。いろいろ調べてみましたが全くわかりませんでした。

ちなみにシマフクロウは、頭に立派な飾り羽がありミミズクの条件をクリアしているのにフクロウという名前です。まあ、両者にはあまり厳密な区別がないのでしょう。それにアオバフクロウじゃ、なんだか語呂が悪い感じもします。

さて、そのアオバズク。全長29cmのハトくらいの大きさの鳥で、北海道から南西諸島まで全国に広く分布しています。ただ、北海道から九州までの地域では、5月上旬から10月くらいまでの期間に見られる夏鳥ですが、奄美大島以南の南西諸島では一年中見られる留鳥と違いがあります。森林性の鳥類ですが、どちらかというと人里近い森で見ることが多い身近なフクロウで、特によくいるのが神社やお寺です。ご神木として大きな木が大切にされていて、こんな巨木にはたいていアオバズクの巣となる穴が開いているからです。

フクロウの仲間ですから、もちろん夜行性で、昼間は高い木の枝にとまって寝ていています。そのときは目を閉じているので、チャームポイントである金色の目が見えずちょっと残念です。それでも、ときどきカラスなどを警戒して目をパッと見開くことがあり、そんな瞬間を見たときは、ちょっとドキッとします。もう少し目をよく見たいなと思って粘りたいところですが、安眠の妨害になりそうなので、私はあまり長居はしないようにしています。

アオバズクの存在を知るのは、たいていが鳴き声です。あたりがすっかり暗くなった頃、「ホホッ、ホホッ」と二声ずつテンポ良く鳴き続けます。ときどき「ホーホー」と間延びして鳴く事もあり、どうも世の中的には、この声をフクロウだと思っている方がたくさんいらっしゃるようですが、これはアオバズクの声なんです。フクロウはもっと低音の「ホッホー、ゴロスケ、ホッホッ」と鳴き違います。必ず「ホホッ」と二声ずつ鳴くのが特徴で、夏の夜、開けた窓からこの声が聞こえたら、近くにアオバズクが来ているはずです。

ところでフクロウの顔って、丸いお皿のような形をしていますね。でも、アオバズクの顔は、フクロウ類なのにあまり平たくありません。そのわけは、主な獲物がカブトムシやガ、キリギリスなどの昆虫だからです。平たい顔のフクロウ類の獲物は主にネズミで、暗闇の中、音を頼りに探します。平たい顔は集音器のような働きがあり、ネズミが立てるわずかな音をキャッチできるのです。
一方、アオバズクの場合は、獲物が昆虫ですので音を頼りに探すことはありません。ですから顔が平たくないのです。そのかわり、よく見える目で獲物を見つけて捕らえる。そんな生活の仕方が顔に表れています。

前述したように、アオバズクはフクロウ類でもっとも身近な種で、かつては東京23区内でもそれほど珍しくなく、東京都豊島区の鬼子母神などでは毎年、子育てをしていたそうです。それがいつしか姿を消してしまい、アオバズクも身近な存在ではなくってしまいました。少なくなった最大の原因は、食べものである大型昆虫が減ってしまったこと。私の子供時代は、東京でも街灯にたくさんのガやコガネムシなどが集まって来ましたが、今ではそんな光景を見ることがなくなりました。それだけアオバズクの食べものがなくなっているのでしょう。

ところが嬉しいことに、最近、少しアオバズクが復活傾向にあります。明治神宮や都内の公園で再び繁殖するようになっているのです。以前に比べて、カブトムシなどが増えてきている実感があるので、その影響なのかもしれません。夏の夜にアオバズクのリズミカルな「ホホッ、ホホッ」という声が聞こえたら、嬉しくてなかなか寝付けないかも。そんな日常が幸せです。

柴田佳秀
科学ジャーナリスト・サイエンスライター
東京都出身、千葉県在住。元テレビ自然番組ディレクター。
野鳥観察は小学生からで大学では昆虫学を専攻。鳥類が得意だが生きものならばジャンルは問わない。
冬鳥が続々とやってくる秋が好き。日本鳥学会会員。
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