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俳句、まとめました

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このページでは、TwitterやInstagramで週に一度配信している「今週の一句」をまとめました。俳句が写真と組み合わさると、俳句に詠まれた風景がイメージしやすくなったり、物語のワンシーンのようにも感じられたりして、俳句だけで見るのとは異なる味わいがあります。「俳句には今まで触れたことがない…」という方も、ぜひお楽しみください。

秋は夕暮食パンを買ひに出る 長峰竹芳

古来、秋の夕暮は格別に風情があるものだとされてきました。「もののあはれ」の極みです。
いかに「もののあはれ」にしっとりしていても、生きていれば腹が減るというのが現実です。明日の朝のパンを買いに行ってきます。
[季語]秋の夕暮

まだこぼれつぐ秋口の百日紅 高室有子

百日紅は夏の花。夏から秋にかけ百日間咲いている花です。幹はつるっとしていて、猿も滑るとのこと。
いつ咲いて、いつ散るのか、秋口になってもまだ咲いているのが百日紅です。いつしか散り、秋になると実がつきます。
[季語]百日紅

蜩のとめどなく白神の森 井上弘美

夏も終わり、初秋を知らせる蟬が蜩です。朝に夕に澄んだ声で鳴きます。「かなかな」ともいいます。
白神は秋田・青森の県境を東西に連なる山地です。作者はここで蜩のカナカナを聞いたのです。白神で聞くあの透明な声は、永遠を思わせたと思います。
[季語]蜩

われの星燃えてをるなり星月夜 高濱虚子

秋の夜空に星が満天に見え、星明りが月明りのように見えること、これが星月夜です。
あまたある星の中に、これぞわが星と思われる星があるのです。ほかの誰にも分からない、自分だけの星。素晴らしい宇宙観です。
[季語]星月夜

荒草ののぎの影濃き白露かな 宇野恭子

晴朗な日中にはまだ暑さの名残がありますが、気温の下がる夜には草むらなどに露が降ります。
荒地の雑草の禾。その影の濃さ。大雑把な暮らしには見えない細やかな目です。白露をとらえる感触にぴったりの目です。
[季語]白露

きんいろのひかりのなかの秋の蜂 対中いずみ

秋の蜂は元気のいい春の蜂と違い、低いところを静かな感じで飛びます。
秋の凝縮した日のひかりを「きんいろ」と見た句です。辺りに何もない蜂の世界。秋の蜂はひかりをまとい、もっと自在に舞います。
[季語]秋の蜂

木の齢しづかに月をのせにけり はりまだいすけ

今宵は中秋の名月です。天気が上々であればいい月が見られます。
樹齢を重ねた樹の上に月が出ています。あたかも樹全体が今宵の月をのせているようです。樹と月の構図を生き生きと伝えています。
[季語]月

ビーフストロガノフと言へた爽やかに 守屋明俊

新樹の初夏も秋と同じように「爽やか」なのに、歳時記はこの「爽やか」を秋の専用にしたのです。
さてさてこの煮込み料理の名。ロシアに同名の伯爵がおられたそうですが、なんと難しいこと。どうやら無事に言えたようです。おめでとう。
[季語]爽やか

コスモスの押しよせてゐる厨口 清崎敏郎

コスモスの和名は秋桜(あきざくら)。明治時代に渡来した花です。ピンクや白、薄紅などの花が可憐です。この花の茎や根はたくましく、群れて咲きます。
庭の向こうから台所の出入り口まで押し寄せてくる。群れの旺盛な様子が見えるようです。
[季語]コスモス

秋燕の歸燕とならん日は今日か 高橋睦郎

春に渡って来て夏を過ごした燕が、秋にはまた南へ帰ります。
燕には帰燕(きえん)となる日があるのですが、それがいつなのか不明です。「いつの間にか」「いつしか」いなくなるのです。
[季語]秋燕

うつくしさ上から下へ秋の雨 上田信治

秋の雨は、眺めているだけで寂しげに感じられます。ものの芽を育む春雨とは異なる情趣です。だけど美しい。
もののあはれとは無縁の目で見ると、雨とはきわめて即物的なもの。雨は確率百%、上から下に落ちるものなのです。
[季語]秋の雨

いい手紙ふつうの手紙小鳥来る 加藤かな文

秋になり、日本で過ごすために遠方から飛来する鳥、また国内を移動する鳥、山から里に来る鳥。
そんな小鳥がやって来ました。同じように手紙も届きました。おおむねは普通の手紙。でも中にいい手紙があったのです。バンザーイですね。
[季語]小鳥来る

みちのくの地酒に戻り鰹かな 尾池和夫

春から夏にかけて、黒潮にのって日本列島沿いに北上した鰹が秋には南下します。この鰹を戻り鰹と呼び珍重します。脂がのってまことに美味。
それを肴に地酒で一杯やっているこの句を目にした人は、だれもが「美味そう」と声をあげます。
[季語]戻り鰹

ゆたんぽを入れてふとんの端たたく 小原啄葉

この句の季語は「湯婆」、ゆたんぽのことです。手足や体を温めるため、熱湯を入れて布団の中に置きます。
足元に入れたはずのゆたんぽを、つい確かめるようにトントンと布団の端をたたいています。
[季語]湯婆

七五三しつかりバスにつかまつて 綾部仁喜

今日は七五三のお祝いの日。男児三歳と五歳。女児三歳と七歳。神社に詣で、生育の無事を願う日です。
神社へ行くのでしょうか、バスがゆらゆらします。いつもとは違うよそ行きの洋服、女の子は和服でしょうか。どうぞ息災な将来でありますように。
[季語]七五三

【出典】
『俳句の日めくりカレンダー 2021』(新日本カレンダー株式会社)

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暦生活編集部

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