暑さが日に日に増してきました。
七十二候は明日から「麦秋至(むぎのときいたる)」になります。
麦の穂がたわわに実り、収穫を迎える時期。「麦の秋」ともいい、初夏の季語です。
季節は「初夏」なのに「秋」ということばの組み合わせには少し違和感がありますが、もともと「秋」ということばには、稲などの穀物が成熟した時期という意味があるのだそう。
たしかに黄金色の麦畑は、秋に収穫する田んぼの風景に似ているので「麦の秋」ということばはぴったりなのかもしれませんね。
また、農家さんにとって麦の収穫は梅雨入りが迫った短い期間に行うので大忙し。
大変だからこそ溢れる収穫のよろこび、そんな活気に満ちた様子を表している言葉が「麦の秋」なのかもしれません。
さらに、麦が熟するころに降る雨を「麦雨(ばくう)」、収穫のころに吹くすがすがしい風を「麦嵐(むぎあらし)」といいます。ほかにも初冬は「麦蒔(むぎまき)」、早春は「麦踏(むぎふみ)」、春は「青麦(あおむぎ)」など様々な季語があることからも、麦が日本人の暮らしを支える大事な穀物であったことがわかります。
しかしそもそも「麦」って、普段あまり見かけない穀物だと思いませんか...?
かつては米不足を補う主食であり、現在はパンやお菓子などに使われているにも関わらず、麦自体はあまり見たことがありません。
そんなことを思っていたら、昨年幸運にも麦を収穫する機会に恵まれたのです。
場所は、奈良県の南エリアに位置する畑。
無農薬で育てられた「ミナミノカオリ」という品種の収穫を体験する企画に参加しました。
広大なエリアにはたくさんの麦が実っていて、ひとまず手当たり次第、鎌で刈り取りしていきました。
実際に麦を近くで見るのも触れるのも初めてで、想像していたよりも茎はしなやかで丈夫、穂先部分はトゲトゲしていて驚き。軍手をしていてもチクチクと軽く痛みが伝わってくるほどでした。色も、近くで見ると黄褐色でした。
刈り取りが終わったら、しばらく乾燥させて次は脱穀。
しかし脱穀機がなかったので、手でシャカシャカと揉みながら実を落としていきます。
やってもやっても...終わりが見えず...根気との勝負。原始人になった気分でした。
そうして一通り終わったら、残りの籾殻を取り除いて完成。
できあがった小麦は砕いて全粒粉にして、お菓子や料理でいただきました。市販のものよりも香ばしく、小麦の風味が口いっぱいに広がり幸福で満たされました。
収穫の大変さを実感しながら自然の恵みを味わい尽くした、貴重な体験だったなぁと思います。
今年も全国各地で実りある「麦の秋」となりますように、と願いながら梅雨の時期を静かに待ちたいと思います。
〈参考文献〉
新村 出『広辞苑 第三版』 岩波書店(1983年)
高根恭子
うつわ屋 店主・ライター
神奈川県出身、2019年に奈良市へ移住。
好きな季節は、春。梅や桜が咲いて外を散歩するのが楽しくなることと、誕生日が3月なので、毎年春を迎えることがうれしくて待ち遠しいです。奈良県生駒市高山町で「暮らしとうつわのお店 草々」をやっています。好きなものは、うつわ集め、あんこ(特に豆大福!)です。畑で野菜を育てています。
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