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麦嵐むぎあらし

季語 2021.05.07

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こんにちは。気象予報士の今井明子です。
1年でもっとも気持ちの良い季節がやってきました。日は長く、少し汗ばむような陽気に、カラッとした風。新緑や花々の色が実に鮮やかで、この季節に散歩すると、世界がキラキラと輝いて見えます。

さて、この季節の季語に「麦嵐(むぎあらし)」というものがあります。これは麦の収穫の頃に吹くすがすがしい風のことをいいます。「嵐」という言葉とは裏腹に、さほど強い風ではありません。まるでドライヤーで吹かれた髪のように、ざわざわと麦の穂が揺れるさまが、まるで嵐のように見えるのでこのような言葉で呼ばれるようになったのでしょうか。

そう、この季節は麦の収穫期。いわゆる「麦秋(ばくしゅう)」です。なぜこんな言葉があるのだろうと、私は長年疑問だったのですが、あるとき収穫期の麦畑をたまたま目にして納得しました。

なんとなく、秋は稲が実るので黄金のイメージがあります。その一方で、この季節は新緑がまぶしい明るい緑色のイメージです。そんな色のイメージにとらわれたまま黄金の麦畑を目の当たりにすると、ハッとします。「あれっ、新緑の季節なのに、なぜここだけ黄金なんだろう!」と意表を突かれるのです。そんな強い印象を受けるから、きっと「麦秋」という言葉ができたんだろうなあと思うのです。

話を麦嵐に戻しましょう。この季節に吹く風がなぜ心地よいのかというと、湿度が低いからです。これがもう少し先の季節になると、湿気が加わって晴れた日でもあまり快適とはいえなくなります。この乾燥したすがすがしい空気をもたらすのは、中国大陸からやってくる移動性高気圧です。大陸由来だから空気が乾燥しているのです。

移動性高気圧は、西から東に進みます。移動性高気圧のあとには低気圧もついてくるので、春は晴れと雨が周期的に変わります。特に2月~4月は、「三寒四温」と呼ばれるように、天気が目まぐるしく変化し、寒暖の差も大きいのですが、5月ごろになると晴れの日が続くことが増え、気温の寒暖差も少なくなります。

稲が実る季節に来る嵐はご存じ、台風です。台風が近づき、風が強まるたびに、稲がなぎ倒されないか、無事収穫できるのかとやきもきしてしまいます。でも、麦の実る季節に来る「麦嵐」はそんな心配はあまりありません。収穫の期待が高まる風、といえますね。

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今井明子

サイエンスライター・気象予報士
兵庫県出身、神奈川県在住。好きな季節はアウトドア・行楽シーズンまっさかりの初夏。大学時代はフィギュアスケート部に所属。鯉のいる池やレトロ建築をめぐって旅行・散歩するのが好き。

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