3月になると、『春の歌』を口ずさんでしまうエッセイストの藤田です。
子どものころ、雛祭りが大好きでした。ふだんは静かな和室に七段飾りの雛壇がどーんと現れ、16体もの人形が並ぶ賑やかさ!
人形というより、年に一度、私に会いにやってきてくれるお客様のような感覚でした。「お姫様がいらしたのだから」と、雛あられの横にせっせとクッキーを並べたり、ぼんぼりを灯したり、オルゴールを鳴らしたり、子どもながらおもてなしに励んだ記憶があります。
雛祭りは、女の子の健やかな成長を願う行事です。由来は諸説ありますが、古代中国から伝わる「五節句」が有力。
五節句とは1月7日の「人日(七草がゆ)」、3月3日の「上巳(桃の節句)」、5月5日の「端午(菖蒲の節句)」、7月7日の「七夕(星祭)」、9月9日の「重陽(菊の節句)」のこと。季節の変わり目に邪気をはらい、無病息災を祈る年中行事です。私たちに馴染み深いものばかりですね。
3月3日の桃の節句に、中国では川に入り体を清める習慣があったそう。日本では紙などで作った人形で自分の体を撫で穢れをうつし、川に流すことで邪気ばらいをしました。これは現代にも残る「流し雛」のルーツです。時代とともに職人さんの手によって精巧な人形が作られるようになり、流すのではなく飾るタイプへと変化してゆきます。それがやがて雛人形となり、当時貴族のあいだで流行っていた「ひひな遊び(おままごとのようなもの)」と相まって雛祭りになったといわれています。
「流し雛」のとおり、女の子の身代わりになって邪気を受け止める雛人形。あの優美な佇まいで体を張ってくださっていたとは、我が人生の守り神ともいえましょう。
雛人形は、女の子が無事に成長したらその役目を果たしたことになるので、神社やお寺で供養するのが良いそうです。誰かに譲ったり、箱に入れたままにしておくのはいけません。
とはいえ、ここで素朴な疑問。
「女の子が成長したら」って、いったい、いつを指すのでしょう?成人を迎えたとき?でも100年人生と言われる昨今、ハタチはまだまだ幼いです。多様な生き方が認められるこのご時世、お嫁にいくことが成熟の証でもないですし…こう考えると、雛人形に込めた祈りが満願になるタイミングに、明確な基準はなさそうです。調べたところ、結婚して家を出ても、いくつになっても、ひな人形は飾って良いのだそう。それならば私はずっと、誰にも、何が起きるかわからない人生を、お供してもらえたらうれしいなと思います。
そう思い立ちここ数年を振り返ってみたところ、忙しさにかまけてきちんと雛人形を飾れていなかったなと反省しています。今年は七段組み立て全員集合で、子どものころのようにおもてなしをしよう。赤ちゃんのころから見守っている女の子がおとなになった姿を見られるというのは、きっと人形冥利に尽きるでしょう。まだ引退しないでねと言われるのは、想定外かもしれませんが。
藤田華子
ライター・編集者
那須出身、東京在住。一年を通して「◯◯日和」を満喫することに幸せを感じますが、とくに服が軽い夏は気分がいいです。ふだんは本と将棋、銭湯と生き物を愛する編集者。ベリーダンサーのときは別の名です。
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