こんにちは。ライターで僧侶の小島杏子です。年々寒さに弱くなり、厚着をして着ぶくれることになんの疑問も感じなくなりました。今年の冬は裏起毛の極厚タイツに大変お世話になっております。みなさんはいかがお温まりでしょうか。
今回のテーマは「余寒見舞い」。余寒とは、立春を過ぎてからもまだ続く寒さのことをいいます。春寒という言い方もあります。暦のうえでは春が訪れたといえど、春とは名のみの寒さがぶりかえす季節。あの人はどうしているかしらと相手の家を訪ねたり、お手紙を送ったりするのが、余寒見舞い。立春よりも前だと寒中見舞いになります。
この季節の寒さのことを、余寒や春寒という言葉で味わおうとするこころが私はとても好きです。「寒さの余り(余寒)」、「春だけど寒い(春寒)」なんて字面を見ていると、「寒いけれど、それももう終わり。だっていま春だし!暖かい日々はすぐそこまできているはず」と寒さに凍える自分たちを励ましているような、はたまた強がりのような、そんな心情を感じませんか。

励ますといえば、このごろ、「お元気ですか?」と尋ねられることが増えました。久しぶりに連絡をとる方からのメール、電話、LINE 、年賀状の冒頭にはよく「元気にしていますか?」とこちらを案じてくれる言葉が添えてあるものですが、去年から今年にかけては、それほどご無沙汰ではない人からもよくそう言っていただくような気がしているのです。どうしても家に籠りがちになったり、体調の心配が絶えないこのごろですから、誰もが一言目には「あなたは元気でしょうか」と尋ねたくなるのでしょう。
たとえ定型句のようなものだとはいえ「元気にしてる?」と聞かれると私はとても嬉しくなってしまう質です。けれど、ここ最近は誰かにその言葉をもらったときの嬉しさが以前よりも大きいものに感じるのです。きっと気づかぬうちに、自分がひとりぼっちのような気持ちになっていたのかもしれません。ステイホームが続いてちょっと疲れてしまった心に、誰かの「元気ですか?」は思わぬ温もりを与えてくれました。誰かに案じられていること、それを表明してもらうことの効能はこんなに大きいのか、と驚きます。
そう気づいてからは、私も誰かと連絡を取るときにはできるだけ相手の心身を案じる言葉を添えるようにしました。ただの定型句と読み流してしまうような言葉ですが、どこかには私のようにたった一言の「元気ですか?」に助けられる人もいるかもしれないと思ったのです。

余寒見舞いや、暑中見舞い、寒中見舞いなどの「見舞い」とはそもそも相手の安否を尋ねるという意味を含みます。だから、送ることそのものが「あなたを案じています」というこころの表明でもある。
「あの人はどうしているかな」「元気かな」と頭に浮かぶ人がいるならば、簡単な言葉でもいいし、自分の近況報告だけでもいいから数行書いて、思い切って送ってみてはどうでしょうか。
私はと言いますと、「最近どうしているかな?」と思い浮かべる友人はいるものの、いきなり要件も特にないような手紙なんて送りつけては驚かせてしまうかもしれないし……と、どうしても遠慮してしまいます。
でも、今年はちょっと勇気を出そうと思っています。綺麗なハガキか便箋を用意して、余寒見舞いの手紙を書いてみるつもりです。いろんな方の「元気にしてる?」に助けてもらっているので、今度は私も誰かに「元気にしてる?」を送りたいのです。それが、寒さ残るこの季節の、わずかな温もりにでもなればと願いつつ。


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