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縁起物「お香」

暦とならわし 2021.09.19

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

古くから「香りを楽しむ」ことを愛してきた日本人ですが、今なお根強く残っているのが「お香」の文化なのではないでしょうか。
たとえば、都として栄えた京都の町では、今でもあちこちにお香の専門店を見つけることができます。私も昔、修学旅行で京都を訪れた際、どこか格調高く感じられるお香のお店にドキドキしながら足を踏み入れたことがあったのを思い出します。

ひとくちに「お香」と言っても、その形はさまざま。
香木(こうぼく)、線香(せんこう)、焼香(しょうこう)、練香(ねりこう)、塗香(ずこう)、匂い袋など、形状はもちろん香らせ方に至るまで、掘り下げようと思うと、とてつもなく深い世界が広がっています。

たとえば日本では、神社仏閣や自宅の神棚・仏壇などで、今でも神仏にお線香をお供えする文化があります。
そもそもお香の歴史は仏教伝来の頃にまで遡り、平安時代には貴族のたしなみとして発展し、やがては広く庶民の間でも愛されるようになったと言われています。

香りの世界と言えば、お香以外にも、香水やアロマオイルなどが思い浮かびます。
これは、私の勝手な印象かもしれませんが……。
ヨーロッパからやってきたパルファム・オードトワレ・オーデコロンなどの香水とお香が少し違うのは、香水は香りそのものが個性を持って強い存在感を放つというイメージですが、お香はまるで空気に溶け込むかのように、ふんわりとやさしく周囲にたゆたうような印象を受けるところかもしれません。

近年ではアロマテラピーの流行に伴い、手軽に心身のリラックス効果やリフレッシュ効果を得られるため、心のメンテナンスといった側面からも「香り」に対する注目度は上がっているような気がします。
香りの世界は、それだけ人の「深層心理」や「精神状態」と密接に関わっているのでしょう。

お香、香水、アロマオイル――それぞれに違った魅力や個性がありますが、日本人の精神性ともっとも深い場所で繋がっているように思えるのは、やはり「お香」の世界なのではないでしょうか。

というのも、日本には茶道・華道・書道・剣道といった「道」のつく習い事がたくさんあります。お香にも「道」の一文字がつけられ、香道という世界があることをご存知でしょうか。

香道では、数ある香料の中でも特に繊細な香木の香りを「聞く」のですが、これを「聞香(もんこう)」と言います。音楽でもないのに、なぜ「聞く」と表現するのか不思議に思うかもしれません。
でも、それだけ身体の感覚を研ぎ澄ませ、心を静かにしてわずかな香りの違いを感じ取ることを「聞き分ける」という言葉で表現しているのです。

「道」のつく習い事は、単に技術の習得を目的とするだけでなく、その道を学ぶことを通じて自らの精神をも磨きながら、人生の道標を見出すことにも通じていると言えます。
お香を通じて、「香り」という目には見えないものへ心身の感覚を研ぎ澄ませることも、自分の心を静かにするひとつのきっかけになることでしょう。

昨今は「香道」を体験できる機会こそ少ないかもしれませんが、お香の専門店に足を運んでみれば、自分の好きな香りを心で味わうという魅力に出会えるかもしれません。
自らの五感が司る感受性を、美しいもので呼び覚ますことも、私たちが健やかに生きるヒントになるのではないでしょうか。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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