こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
日本には、いにしえから脈々と受け継がれ、日本人の心の奥深くに根付いた精神文化――「あらゆるものに魂(霊力)が宿る」といった考え方があります。
それは、たとえば海や山など「自然」そのものであったり、特定の「動物」を神格化したものであったり、時には大切に扱ってきた道具など「物」に宿るものでもありました。
そして、その中のひとつに「言霊」と言って、言葉の内側に宿る霊的な力に対する信仰も存在していたわけです。
たとえば、「口に出したことは現実になる」といった考え方に基づいて、「良い言葉を使うことで良い未来を作る」ということも、古くから実践されてきたことです。
また、結婚式などでは縁が切れることを連想するような、縁起の悪い「忌み言葉」をさけるといったことも、悪い影響を回避する逆の意味での言霊信仰の現れです。
実は、この「言霊」についての記録は、約1300年前に編纂された日本最古の歌集、『万葉集』の中にも登場しています。
そのひとつの歌の中で、日本は『言霊の幸(さき)わう国』と表現されているのですが、これは「言葉の力で幸せがもたらされる国」という意味です。 とても素敵な言葉ですよね。
私たちは太古の昔から、言葉の持つ力を信じ、言葉を大切に使いながら生きてきた民族なのです。
そういえば、近年では「引き寄せの法則」や「アファメーション」といった言葉も、よく耳にするようになりました。
これらも言葉の力を使ったアプローチの手法で、明るい未来や成功を呼び寄せるといった効果があるとされ、実践している人も少なくないでしょう。
「言霊信仰」と聞くと重くとらえる方も多いかもしれませんが、その考え方は意外と、この時代においても身近に存在しているのかもしれません。
もし、自分が日頃から何気なく使っている言葉が「よい言霊」であれば、その力で誰もが自分自身と周りの人たちを幸福にすることができ、その輪が広がってゆくことでもより良い世の中を目指すことができるのではないでしょうか。
具体的に「よい言霊とは何か」と考える上で、私はいつも「言葉のイメージ」をしてみることにしています。
もしも、言葉の姿かたちが、目に見えたら――。
自分の口から生まれる言葉は、あの人の口から生まれた言葉は、どんな色で、どんな形をしているでしょうか。
もちろん実際には、言葉の姿が私たちの目に映ることはありません。
それでも、その言葉たちが与える影響は、きっと相手の心に届くときに「何かしらの感触」を残しているはず。
あたたかいのか、冷たいのか。
やわらかくて心地よいのか、トゲトゲしていて痛いのか。
透き通っているのか、濁っているのか。
光っているのか、よどんでいるのか。
自分が生み出すものならば、それは美しくて心地よく、やさしいものでありたいと思わずにはいられません。
願わくば、日頃から「よい言霊」を生み出せる人が増えていき、この世の中がどんどん素敵な場所になっていきますように。
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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