こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
皆さまは、この日本の国にも、その歴史の始まりを伝える「神話」があることをご存知でしょうか。
日本では、戦後、学校における義務教育の中で、自国の始まりを紐解く神話や歴史について、深く教わる機会が失われてしまいました。
現代では、「神話って日本にもあるの?」という認識の子どもたちも、きっと少なくないのではないでしょうか。
ですが、日本人であるならぜひ知っておいていただきたいのが、『古事記』という我が国に現存する最古の歴史書の存在です。
ここには、八百万(やおよろず=数え切れないほど)の神々が登場する天地開闢(てんちかいびゃく)からなる神代(かみよ)の神話、そして歴代の天皇が中心となって治められてきたこの国の歴史が、初代・神武天皇から第33代・推古天皇に至るまで記されています。
日本の国がひとつにまとまってゆく中で、この国のなりたちを示す正式な歴史書が必要と考えられた第43代・元明天皇が、臣下の太安万侶(おおのやすまろ)に命じられ、稗田阿礼(ひえだのあれ)の口述をまとめたものが、和銅5(712)年に成立し献上されたと伝えられています。
全部で上中下巻からなる『古事記』には、個別の物語としても有名なお話が数多くあります。
特に、上巻は、神々たちが生き生きと活躍する神代の物語――すなわち「神話」です。
イザナギノミコトとイザナミノミコトという、男女の神による「国生み」と「黄泉の国」への訪問。
黄泉の国から戻ったイザナギノミコトの禊(みそぎ)によって生まれた、アマテラスオオミカミ・ツクヨミノミコト・スサノオノミコトの「三貴神」。
岩戸に隠れてしまったアマテラスオオミカミを、神々たちが知恵を出し合い外に出す「天岩戸神話」。
暴れん坊だったスサノオノミコトが地上に降りて、八つの頭と尾を持つ大蛇を倒す「ヤマタノオロチ退治」。
気のやさしいオオクニヌシノミコトが、いたずら好きの兎を助ける「因幡の白兎」。
オオクニヌシノミコトの「国作り」と「国譲り」。
アマテラスオオミカミの孫であるニニギノミコトが、三種の神器を携え地上に降りる「天孫降臨」。
……こうしてかいつまんで挙げてゆくだけでも「その話は知ってる!」と、個別の物語としてご存知の方がいらっしゃるのではないでしょうか。
これらの物語も、日本の神話の中で語られてきた、身近な神々たちのエピソードなのです。
日本各地にある神社には、それぞれ多様な神様が祀られていますが、よく調べてみるとこういった神話の中に登場する有名な神様だということも多いはず。
日本の国の原点とも言えるこれらの神話は、今を生きる私たちに、日本人として多くのことを伝えてくれています。
中からひとつだけ挙げるとすれば、やはりこの国を統べる太陽の女神であるアマテラスオオミカミの「天岩戸神話」でしょうか。
天岩戸の中にアマテラスオオミカミが隠れてしまったとき、世界が光を失って困り果てた神々は話し合い、それぞれの得意分野を活かした作戦でアマテラスオオミカミを岩戸の外へと誘い出すことを成し遂げます。
たくさんの神々がお互いを尊重しあいながら、個性を活かした役割分担を行いつつ、力を合わせたからこそ作戦は見事成功するのですが、これって私たち人間の世の中だって、同じことが言えますよね。
自分に授かった才能や培った能力を使って世のため人のためにも貢献し、また他者の持つ力や助けには感謝と敬意を忘れない。
私には、まるでこの神話が「日本人なら、そういう風に生きていきましょう」と教えてくれているように感じられるのです。
『古事記』の中に登場する神様たちは、神様と言っても万能で完全無欠なわけではありません。
私たち人間と同じように、泣いたり笑ったり怒ったり困ったり失敗したり……そればかりか、「神様なのにそんなことしちゃっていいの!?」と思ってしまうくらい、とても人間らしく生き生きとした姿が描かれています。
学びになるような話だけでなく、時には面白おかしくてクスっと笑ってしまうような展開もあるのが、『古事記』の魅力。
いにしえの物語と言えど、今の私たちが読んでも十分おもしろく、共感できることも多いはず。
『古事記』は原文で読もうとするとハードルが高いかもしれませんが、最近では読みやすい現代語訳や漫画、絵本もたくさんありますから、そういったものなら手に取りやすいのではないでしょうか。
私たち日本人の原点となる日本最古の歴史書(しかもおもしろい!)『古事記』、まだ読んでいない方はぜひ、ページを開いてみてくださいね。
そして一度読んだことのある方も、繰り返し読んでみると新たな発見が生まれるかもしれません。

紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
