9月21日は美しい名月が見られます。
今年も、十五夜の季節がやってきました。十五夜は、お月見や名月、中秋の名月とも呼ばれ、古くから観月の対象となり多くの人に愛でられました。中秋の名月を観賞するならわしは、中国では唐の時代から知られており、平安時代に貴族のあいだで広まりました。
#暦生活お月見
9月21日は「中秋の名月」が夜空に浮かびます。
古くから、この日の月は一年でもっとも清らかで美しいといわれ、人々は月見の宴を催し、歌に詠み愛でてきました。現在も各地で観月会が開かれ、月見酒を飲んだり、月見団子を食べたりして月見の催しが楽しまれています。
中秋の名月の写真を見せ合いっこしませんか?
9月21日の中秋の名月が見られたら、みんなで見せ合いっこしませんか?スマートフォンやカメラで月の写真を撮り、InstagramやTwitterで「#暦生活お月見」のハッシュタグをつけて投稿いただけると嬉しいです。
雨や曇りで月が見られなくても、違う誰かが月の写真を見せてくれるかもしれません。全国で見られる月を、共有できたらいいなと思います。よければ、ぜひご参加ください。
中秋の名月を知る
中秋の名月の日は、SNSで月の写真を見かけることも多く、メディアにも取り上げられるので、この日は意識して月を見上げるかたも多いと思います。でも、そもそも中秋の名月ってどんな月だろう…?よく知らないなあ。というかたも多いのではないかと思います。
私も、暦生活を立ち上げるまでは月を見上げることがほとんどなく、中秋の名月の名前もおぼろげでした。でも、月と暦に興味を持ち、月の名前や由来を知ると、より特別で美しいものに感じました。そこで今回は、お月見をより楽しむことができるよう、中秋の名月について簡単にご紹介したいと思います。
旧暦の「秋」は、七、八、九月
中秋の名月は、旧暦八月十五日の夜の月のことをいいます。
(旧暦とは、明治の改暦以前に使われていた、月の満ち欠けを主にとりいれられた暦です)
その旧暦八月十五日が、2021年は9月21日にあたります。
旧暦で秋は七、八、九月になり、それぞれ初秋・仲秋(中秋)・晩秋と呼ばれます。
中秋の名月の「中秋」は秋の真ん中を意味し、旧暦八月の月は「中秋の名月」と呼ばれるようになりました。
平安貴族の楽しみかた
古来、月の満ち欠けは日々の生活を営むための重要な指針でした。
旧暦十五日の十五夜は、祭儀が行われる大切な節目となる日でしたが、その中でも旧暦八月十五日の月は一年のなかでもっとも美しいとされました。秋は春夏にくらべて空気が乾燥し澄んでいるため、月が鮮やかに見えます。冬だと寒すぎるので、外で見るには秋がちょうどいいのですね。
名月を観賞するならわしは平安時代に中国から伝わり、貴族たちのあいだでとりいれられ、次第に武士や町民に広まっていきました。貴族たちは、舟を出して水面に映った月を観賞したり、酒の杯に月を浮かべて飲んだり、風流な楽しみ方を好みました。
同時に、農民のあいだでは農耕行事と結びつき、収穫祭としての意味合いもありました。
月見の供えもの
月見の供えものといえば、月見団子がまず思い浮かびます。
形や作り方は地域によってさまざまですが、月見団子の数はその年の満月の数にちなみ12個であったり、十五夜にちなみ15個にしたり、というところが多いようです。
月のように丸くて綺麗な月見団子は、月見の気分を盛り上げてくれます。和菓子屋やスーパーでも購入できるので、お家でも気軽に楽しめます。
秋の七草であるすすきも、代表的な月見の供えものです。すすきは稲穂に見立てて飾られ、その年の田の実りに感謝し、豊作への祈願が込められています。
秋の七草は、萩(はぎ)、尾花(おばな=すすき)、葛(くず)、撫子(なでしこ)、女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじばかま)、桔梗(ききょう)の7種の草花のこと。いちどきに咲くのではなく、秋の深まりとともに花開きます。このうち、おみなえし、ふじばかま、ききょうは生育数が激減し、準絶滅危惧種に指定されています。
中秋の名月は「いも名月」とも呼ばれます。ちょうどいも類の収穫の頃で、里いもなどの収穫に感謝し、月見に供えることからこのように呼ばれるようになりました。このように、月見のならわしは庶民のあいだで古くから伝承されてきました。
ちなみに、わたしたちと里いものつきあいは長く、縄文時代から栽培されていたそうです。
今も楽しまれている観月会
今も名月を観賞する観月会は各地で行われ、大切な行事として受け継がれています。招く方は「月の主」、招かれる方は「月の客」などとも呼ばれるそうです。
日本三大名月観賞地として有名なのは、こちらの3か所。
新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言発令につき、開催中止や規模縮小などのお知らせが届いていますが、安心して楽しめるようになったら、ぜひ一度は足を運んでみたいですね。
雨や曇りで月が見られない時は
美しい中秋の名月が見られるといいですが、その日が必ず晴れるとは限りません。雨や曇りの日と重なると少し残念な気持ちになりますが、名月が見えないことを「無月」や「雨月」といい、目には見えない月を思い、その風情を楽しむ心があります。そんなふうに、心で楽しむことができたら素敵なことですね。
中秋の名月の後のお楽しみ、十三夜
中秋の名月(十五夜)の月見は有名ですが、秋の月見にはもうひとつ、十三夜という古くからの月見があります。
十三夜は、旧暦九月十三日の月見のこと。今年は10月18日になります。十五夜につづく月ということで、後(のち)の月と呼ばれることも。
十五夜の月見は日本で生まれたならわしではなく、古くに中国から伝わりました。十五夜になる旧暦八月十五日は長雨や台風の季節で月が雲に隠れ見えなくなってしまうことがよくあります。
そこでひと月ほど遅らせ、晴れることの多い旧暦九月十三日を十三夜とし、 月を見るならわしがつくられました。 日本の気候に合わせて生まれた十三夜は、日本生まれの月見というわけです。
ここでふと疑問に思うのが、どうしてまんまるな(もしくはそれに近い)月ではなく、少し欠けている「旧暦十三日」の月なのでしょう。
それは、完璧ではない未完成ゆえの美しさが、日本人の心に響いたからだと考えられています。そう言われると、まんまるの月も確かに素晴らしいけれど、これから満ちていく月には、ほどよく品のある独特の美しさがあるような気がします。
中秋の名月の後には、ぜひ十三夜の月も見上げてみてください。
月を思わせる「にっぽんのいろ」
暦生活ではInstagramやTwitterで毎日日本の伝統色「にっぽんのいろ」を配信していますが、その中から月を思わせる「にっぽんのいろ」を少しだけ選んでみました。夜空に輝く満月の色、月の光で白く染まる空の色など、どこか儚げで美しい色がありました。
こころもち灰を含む、淡い黄色。とても柔らかい印象の色で、夜空に浮かぶ月の優しい色のようです。この色の元になっているのは、ミカン科の黄蘗から染め出される黄蘗色です。黄蘗色を淡くしたものが淡黄蘗です。色の奥に、月にまつわる物語が見え隠れするようです。
無彩色ながらも上品な、銀色に近い明るい鼠色。月光が照らす海のような色です。「墨に五彩あり」といわれる水墨画の世界では、薄い順に「清、淡、重、濃、焦」とされ、この色は「淡」にあたります。銀灰色(ぎんかいしょく)や絹鼠(きぬねず)とも呼ばれます。
月見に欠かせないすすき。秋にすすきの先端に吹く花穂(かすい)は、動物の尾に似ていることから「尾花」と呼ばれています。山野を彩るススキのような色が、美しくも物憂げな印象を与えます。
月光のような明るい白に、清らかな空の青みが差した色合い。月そのものではなく、月が出てくる際に白く染まる東の空の色をさします。月の出を待つ人々のワクワクする気持ちと、シンとした静寂感を醸し出す不思議な色です。
月の満ち欠けを楽しむ日めくりカレンダー
宙(そら)の日めくりカレンダー2022
宙(そら)の日めくりカレンダーは、1枚めくるたびに発見があるカレンダー。「今夜は流星群が見えるかもしれない」と知って、ちょっと夜空を見上げてみたくなる。毎日めくるうち、月や星が身近に感じられてくる。そんな、宙に親しむきっかけとなる日めくりカレンダーを目指しました。
いかがでしたが?中秋の名月には、まだまだ語りつくせない魅力がありますが、いったんここでこのページはおしまいです。
仕事で疲れている時や嫌なことがあった時、月がのぼっていると少しだけ心が落ち着き、目元が柔らかくなるような気がしてます。優しい月の光は好みに合っているようです。
一人で見上げる月も風情があっていいし、家族や友達と一緒に見るのもいいですね。どうか、今年も見られますように。
「#暦生活お月見」も、よければぜひご参加ください。よろしくお願いします(*^^*)
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