新月の日から、月と太陽は少しずつ時間がずれてゆき、三日目頃から西の空にみえ始めるのが三日月です。三日月はCの逆向きで、月の右を見せて寝ています。逆に二十六夜はCの字になります。
春と秋の違い
春の三日月は舟のようにゆったりと寝ていて、秋の三日月は立って見えます。夏や冬はその中間で、ほどよく傾いています。季節によって変わる三日月の傾きにも注目してみてください。
繊月
三日月の別名でもっともよく知られているのは、繊月(せんげつ)です。実際の三日月はかなり細く、日没後のわずかな時間で、沈んでいってしまいます。
若月
見え始めたばかりの若い月なので若月(わかつき)。月が出ると書いて朏(みかづき)。
蛾眉
美しい曲線を描く蛾の触覚のように見えるので蛾眉(がび)、女性の細い眉に似ているので眉月(まゆづき)。
他には、ようやく明かりが生まれるという意味の哉生明(さいせいめい)、月が光っていない陰の部分(魄)が生まれるという意味の始生魄(しせいはく)など、難しい言い方もあります。
英語ではクレッセント、フランス語ではクロワッサンです。
光琳梅と月落ち桜

光琳梅(こうりんうめ)は梅と三日月をデフォルメした愛らしいデザイン。梅がにっこりと笑っているようにみえることから通称、「笑い梅」といいます。梅もほころび、それをみる人々の顔もほころびます。月落ち桜は、三日月と桜を組み合わせた家紋です。
波に三日月

波と三日月は、しばしば描かれる題材です。これは17世紀の陶工野々村仁清の代表作、三日月波文茶碗の写しです。三日月が見えるのはわずか1時間ほど。波間に沈む一瞬の時間を見事に写し取っています。
文責・高月美樹