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スピカ

月と星 2020.04.17

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こんにちは。星空案内人の木原です。
地域によってはサクラの時期はまだこれからかもしれませんが、既に多くの地域でサクラが咲き、その姿は私たちの気持ちを少しでも前向きにしてくれる気がします。サクラに限らず、タンポポにスミレ、ホトケノザとたくさんの花が咲いている時期ですね。いつも通る道が野花によって彩られ、小さいけれど精一杯咲いている姿を見ると、なんだか心が癒されます。今回は、私たちの身近にある植物と星座に関するお話です。

星座のモチーフとなっているものは、神様や人間、動物、道具といった私たちの身の回りにあったものや信仰されていたものがほとんどです。では、身近にある植物も星座になっているのでしょうか?実は、答えは「ノー」です。現在、正式に星座として定められている88星座のうち、植物がモチーフとなっている星座は1つもありません。バラ座やオリーブ座といった星座があってもおかしくないと思うのですが1つもないのです。不思議ですね。

「なぜ、ないのか」と尋ねられると、残念ながら「分からない」としか言えません。あくまで個人的な想像ですが、地上で命を張り巡らせ豊かな自然を生み出していた植物を、地上と分離させて天に昇らせるという考え方は、当時の価値観ではありえなかったのかもしれません。ただ、主役ではなく脇役として植物が描かれている星座はあります。そのタイプの星座は全部で4つあり、その1つにおとめ座が握っている麦の穂があります。

おとめ座のモデルとなったのは豊穣の女神デメテル。彼女が地上に実りをもたらすことを表現するために、左手に麦の穂を持っていると考えられています。地上の植物たちが息を吹き返し始めたこの時期、宙に青白く輝く星が1つあります。その星の名前は「スピカ」。ギリシャ語で「穂先」という意味を持ち、その名の通りおとめ座が握る麦の穂先の位置で輝いています。星座の世界では珍しい、植物に由来をもつ星を今の時期は見ることが出来ます。

写真提供:平井智

機会があれば、春の宙で輝くスピカを見つけてみてください。スピカは1等星でとても明るく、スピカから少し宙高いところにオレンジ色の星が1つあるのみで、近くに他の明るい星はないため見つけやすいと思います。スピカの力強い輝きは“今年も無事に地上に実りがもたらされ、食物に不自由しませんように・・・”という願いが込められているような気がします。地上の豊かな恵みをもたらす女神の星座に見守られながら、色鮮やかな草花は今日も元気に生きています。

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木原美智子

星空案内人
広島県出身。瀬戸内の宙を見て育ちました。好きな季節は、コスモスが咲き、凜とした空気が漂う秋。宙を見上げるのが好きなので、星だけじゃなく宙にあるもの、宙に関わる文化に興味があります。ペンギンと野球も好き。

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