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冠座かんむりざ

月と星 2020.06.14

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こんにちは。星空案内人の木原です。

梅雨の時期となりましたね。俳句などで使われる季語に「梅雨の星」という言葉があります。梅雨時の晴れ間、雲の隙間から見える星のことを指すそう。雲の切れ間から、ちらちらと星が見える様子は確かに梅雨らしい光景です。そして梅雨といえば傘は必須アイテム。最近は星柄の傘を差す人が増えてきて、その小さな星空を見かけるとなんだか嬉しくなります。

宙では春の星座から夏の星座たちが主役になってくる頃です。夏の星座には、さそり座やはくちょう座など一度は聞いたことのある星座がたくさんありますが、今回は冠(かんむり)座を紹介したいと思います。春の星座であるうしかい座の隣に位置し、夏の星座のトップバッターを担うような存在です。

冠座は7つの星が半円を描くように並んでいて、目立つ明るい星はないものの、その綺麗な並びから一度覚えると印象に残りやすい星座です。そして何よりも「冠」という名前がこの星座の美しさを引き立てています。冠座を作る星の1つ1つはダイヤでしょうか。星の色が白っぽいから真珠?それとも綺麗な花を結った花輪なのかも。モチーフが何であれ、半円型の星の並びを「冠」と名付けた古代の人の感性がとても素敵です。これが「冠」ではなくて別の名前だったら、きっと印象は変わっていたでしょう。

とても美しい星の冠は、ギリシャ神話に登場する酒の神ディオニソスが妻アリアドネとの結婚記念にプレゼントした冠だと言われています。アリアドネの死後、冠は宙に掛けられ星座となりました。結婚の記念が宙でずっと輝き続けるなんてとてもロマンチック。実は、アリアドネはディオニソスと結婚する前に、想いを寄せる人に裏切られる出来事があり傷心していました。ディオニソスが贈った美しい冠は、悲しみにくれる彼女の心を元気付けてくれたかもしれません。

夫婦の永遠の愛を表すかのように宙で輝き続ける冠座。この美しい姿がずっと保たれることを願うばかりですが、現実はそうもいかないようです。冠座を作る星々は宇宙空間の中で別々の離れたところに存在し、それぞれいろんな方向へ動いています。そのため何万年も時が経つと、宙での星の位置が変わり星座の形も変化してしまうのです。この現象は冠座に限らずあらゆる星座に起こります。

永遠に思えた星空の世界ですら案外そうでもないことに気付かされると、今を生きている時間を大切にしなければいけないな、と感じます。

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木原美智子

星空案内人
広島県出身。瀬戸内の宙を見て育ちました。好きな季節は、コスモスが咲き、凜とした空気が漂う秋。宙を見上げるのが好きなので、星だけじゃなく宙にあるもの、宙に関わる文化に興味があります。ペンギンと野球も好き。

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