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かさねの色目 櫨はじ

にっぽんのいろ 2020.11.14

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いよいよ紅葉が始まりました。いち早く紅葉を始めるのはウルシ科の樹木たち。

私が森でよく目にするのはツタウルシです。うっかり触るとかぶれるので厄介な蔓性植物ですが、高い樹木に絡みつく赤はよく目につき、ハッとするような美しさを見せてくれます。

ヤマウルシも、こんなふうに真っ赤に染まります。

山深み窓のつれづれ訪ふものは
色づき初むる櫨の立ち枝  西行

ウルシ科のハゼノキ(櫨の木)は、かつて実から木蝋(もくろう)をとるために盛んに栽培され、細工物の艶出しや蝋燭(ろうそく)の原料とされてきました。いわゆるジャパンワックスです。その野生化したものが現在、本州の野山に生えているハゼノキです。昔はヤマウルシやヤマハゼなど、ウルシ科の樹木を総称してハゼと呼んでいたようです。

かさねの色目の櫨(はじ)は黄櫨色(はじいろ)の略で、表は朽葉、裏が黄。やはりハゼノキからとれる染料で、正式にはヤマハゼ(山黄櫨)からとれる黄色です。ウルシ科の樹木はどれも紅葉が美しいのですが、なかでもハゼの場合は、最初が黄色で、次第にオレンジになり、最後には真っ赤に染まっていきます。その美しさが愛されたようで、和歌にも多く詠まれています。

もずのゐる櫨の立枝のうす紅葉 たれ我が宿の物と見るらむ 藤原仲実

ハゼノキは年数を経ると、芯が鮮黄色になり、その芯材の煎汁を使って染めたものが黄櫨染(こうろぜん)で、天皇が儀式で着用する胞衣に用いられ、もっとも高貴な色とされていました。黄櫨染は櫨(はじ)に蘇芳をかけた、深い赤みのある黄色です。

黄櫨染(こうろぜん)

中国で黄色は皇帝の色とされ、嵯峨天皇がそれに準じて黄櫨染を禁色としたようです。陰陽五行で、春は東の青(木)、夏は南の朱(火)、秋は西の白(金)、冬は北の黒(水)ですが、そのすべての循環を司るのが黄(土)で、黄色は中央にあって、統治するものの象徴でもありました。輝く太陽でもあるのでしょう。

季語で、秋の風は金風(きんぷう)ともいいます。爽やかで、ここちよい風。
寒くもなく、暑くもなく、最高の秋日和が続き、寒暖の差が多くなってくると、いよいよ紅葉の季節の到来です。

ヌルデやヤマウルシなど、ウルシ科の樹木を見分けやすい季節でもありますので、この機会にぜひ見つけてみてください。

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高月美樹

和暦研究家・LUNAWORKS代表 
東京・荻窪在住。和暦手帳『和暦日々是好日』の制作・発行人。好きな季節は清明と白露。『にっぽんの七十二候』『癒しの七十ニャ候』『まいにち暦生活』『にっぽんのいろ図鑑』婦人画報『和ダイアリー』監修。趣味は群馬県川場村での田んぼ生活、植物と虫の生態系、ミツバチ研究など。

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