◎春分 3月20~4月3日 「タンポポとスズメ」

いよいよ春分、本格的な春がやってくる時節です。春分の日は、暦の上では春のちょうど真ん中。この日を境に暦の春は後半へ突入します。
「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、このころからようやく気温の乱高下で振り回された三寒四温を脱して、暖かな春の陽気になってきます。とはいえ思わせぶりな春は、お花見のころまでは急に冷え込むこともあるので、油断は禁物なのですが。
さて、七十二候に目を向けると、二十四節気「春分」の初候は「雀始巣(すずめはじめてすくう)」です。たしかに小鳥の声がだいぶ賑やかになってきました。辺りでもカラ類、ヒワ類の野鳥が活発に飛び交っています。スズメの声も聞こえてきて、元気いっぱいの様子。このころスズメが巣作りを始める、という候です。
日当たりのいい場所では、タンポポの花も見られます。黄色くふっくらと咲いたタンポポは、春を象徴する花といえましょう。地面近くに咲いて、茎がストロー状で柔らかい。小さな子供の目にも入りやすく、しかも手折りやすいから、幼いころから親しみを感じられる花でもあります。
タンポポが咲くあたりでは、頭上でスズメも盛んに鳴き声を聴かせているはずです。ああ春だなあ。思わずうっとりと佇みたくなる瞬間です。
気づけばだいぶ日足も伸びてきました。それもそのはず、春分の日は夜と昼の時間が同じ、天文上でも重要な日です。これからは昼間の時間が少しずつ長くなっていきます。夏の真ん中の日、夏至まで長くなり続け、一年でいちばん昼間が長い日を迎えるのです。

日が長いと、気持ちがゆったりとしてうれしいものです。午後の散歩も、慌てなくてすみますね。お洗濯物もじっくり乾かせるのでありがたい。
タンポポが咲ききって綿毛の種を飛ばすころまで、スズメは巣作りと子育てに大忙しなことでしょう。そっと見守りたいと思います。
いっぽう人の世界では年度末を迎え、おおわらわな日々を過ごす人も多いはず。季節の変わり目は、暮らしの節目とも重なります。実は自然界では、季節の廻り舞台がダイナミックに変化する時季でもあります。忙しくてもちょっと自然に視線を移せば、春のパワーを享受できること間違いなしです。

平野恵理子
イラストレーター、エッセイスト
1961年静岡県生まれ。著書に『五十八歳、山の家で猫と暮らす』『歳時記おしながき』『こんな、季節の味ばなし』ほか多数。好きな季節は、季節の変わり目。現在は八ヶ岳南麓在住。
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