こんにちは、漁師をしている三浦です。今日はわかめについてのお話です。
みそ汁の具材の代表格のわかめですが、みなさんはわかめの旬をご存知でしょうか? 3月から5月にかけて成熟期に入り、刈り取りシーズンとなるため、まさにこれからがわかめの最盛期。
わかめは北海道南部、本州、四国、九州と広範囲に分布しているのですが、代表的な主な2大産地は岩手県と宮城県をまたぐ「三陸わかめ」、徳島県の「鳴門わかめ」です。現在口にしているわかめのほとんどが養殖されたもの。自然に成長する天然物は限られるため珍しく、大変貴重なため流通には出回りません。
生わかめ、海水で湯通しをした天日干し、湯通しをして塩漬け、灰にまぶして乾燥、板状に広げて天日干しなどの形で流通しています。
わかめを含めた海藻類は、昔から日本人の生活には欠かせない物でした。食だけじゃなく、奈良時代の律令制の元で「租税」として納められていた歴史があります。昔はわかめのことを「海菜(にぎめ)」と呼び、租税として納められた余剰分の海藻類は一般にも売りに出されていたそう。佃煮やおひたしなど、私たちが普段の食卓に出す料理にして食べていたそうです。昔も今も、わかめは日本人にとって生活に浸透している物のひとつだったんですね。
また、人間にとっての春は、わかめにとっての秋。
わかめを含めた海藻類の多くは秋に芽生え、冬に成長をします。秋から春まで、大潮でも日中はそこまで潮がひかないため、冬の間は日光に直接当たらずに成長ができますが、春の彼岸以降からは干潮時に日光にさらされる場合があることや、春に成長の最盛期を迎えるために少しずつ枯れていきます。このことから、春はわかめたちにとって秋の季節にあたるのです。
養殖の場合、めかぶから出る胞子を採取して麻紐に種がつくように採苗を行い、秋頃にわかめの本仕込みへ。
小さいわかめの葉が出てきた麻紐は、一直線になるように海に設置した養殖用のロープにぐるぐると巻きつけて、海面より上に出ないように土俵などをつけて少しだけ沈めます。乾燥に弱いため、あまり海面スレスレだと波の動きによって日があたり乾燥して芽が成長しなくなるのです。
そして、冬の間にぐんぐん成長するので少しずつ間引きをしながら量を調整して、春頃に本格的な刈り取りをしていきます。
海で成長しているときのわかめは、実は茶褐色のような色をしているのをご存知でしょうか?普段見ている緑色にするには、お湯に通すこと。もしも、生わかめがありましたら、お鍋でわかめしゃぶしゃぶをして色の変化を実感していただきたいです。私は、はじめてわかめの色が一瞬で茶色から緑に変わる変化を見たときにとてもびっくりしました。
ところで、春といえば筍の季節でもあります。刻んだわかめと筍と一緒に炊いた混ぜごはんがおいしい。そして、わかめを入れた味噌汁、わかめの茎を煮付けた佃煮。あっさりとした朝ごはんに良さそうなメニューなので、わかめをふんだんに使ったメニューをお試しあれ。
三浦尚子
漁師・ライター
神奈川県出身、岩手県在住。春が好き。ほっとする暖かさと、生き物が活発に芽吹いていく空気が心地よく感じます。趣味はカメラとおいしいごはんを食べること。夜明け頃の海が好きで、ときどき海の写真を撮っています。
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