こんにちは。
俳人の森乃おとです。
年の瀬を迎えた今回は、冬場のガーデニングの主役と言われるハボタンをご紹介します。
元々はキャベツの仲間の野菜でしたが、江戸時代に日本に渡来して観賞用に品種改良され、冬の寒さに美しく色づいた葉が、大輪のボタン(牡丹)の花を思わせるまでに変身を遂げました。それで、ハボタン(葉牡丹)とかボタンナ(牡丹菜)と呼ばれるようになりました。
江戸時代初期に渡来、古典園芸植物に
ハボタンは、アブラナ科アブラナ属の二年草または多年草です。原産地は西部ヨーロッパ。非結球性(葉が丸い球にならない)ケールがそもそもの原種と考えられています。そこからハボタンやキャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなどの仲間が生み出されました。
ケールが日本に渡来したのは江戸時代の初め。オランダ経由で伝わったようで、当初は「紅夷菘」(オランダナ)と呼ばれました。
本草学者の貝原益軒は、1709年に刊行した『大和本草』において、オランダナについて「葉は大きくて、艶がなく白っぽい。花はダイコンに似る。味はよい」と記しています。
しかし、当時の日本では緑色の葉を生食する習慣がなかったため、野菜としては広まらず、もっぱら観賞用の植物と位置付けられました。
江戸時代は古典園芸ブームと言われ、珍奇な色や形の植物をつくり出す品種改良熱が盛んでした。渡来したばかりのオランダナも、もちろんその対象になりました。
ハボタンという名前が最初に文献に登場するのは、山岡恭安が1778年に刊行した『本草正譜』。約70年間で、ボタンの花のように葉が渦巻いた新品種が開発されたということになります。
黒色の品種や矮性(わいせい)種も登場
ハボタンの観賞期は11~2月。品種改良は江戸、名古屋、関西と各地で取り組まれ、最初に生まれたのは、江戸で作られた関東丸葉系。次いで明治になって名古屋で、葉の縁が縮緬(ちりめん)のように縮れた名古屋縮緬系、そして両方の特長を備えた関西丸葉系の3系統が作られました。
それぞれの系統には、赤や青、紫の色の素になるアントシアニンを葉に含むものと、葉緑素以外の色素を持たないものとの2種類があります。
近年は、「ブラックハボタン」と呼ばれるシックな黒色の品種や、中心部が濃い赤や紫に染まった華麗な品種も登場。さらに矮化技術の発達で、高さ5㎝に満たない可愛らしいミニ・ハボタンも作られるようになり、人気をさらに高めています。
「踊りハボタン」も楽しめる
冬の間楽しんだハボタンをそのまま植えておくと、ずんずん太い茎が伸びて葉の集まりを押し上げ、ツリーのような姿になります。そして4月中旬には葉の間から細長い花茎が出て、アブラナと同じ黄色い4弁の十字花をたくさんつけます。
花が咲き終わるのを待ち、花茎を切り取ると、5月にはそこから脇芽が出ます。脇芽はクネクネとうねりながら伸び、それぞれの先端に葉の集まりをつけます。
幾つかの小さなハボタンが踊っているように見えるので、「踊りハボタン」と呼ばれます。
ボタンの花というよりは、群れ咲く大輪のバラの花を見ているような風情です。
ちなみにハボタンはキャベツの仲間ですので、本来はおいしく食べられます。しかし園芸種は農薬などが使われていることが多いため、やはり観賞を楽しむだけにとどめておきましょう。
清崎敏郎の句では、大晦日の夜にハボタンを飾り終え、正月を迎える準備がすっかり整った落ち着きが伝わってきます。
花言葉は「祝福」「慈愛」、ほかには「利益」「物事に動じない」など。正月の植物にふさわしく、縁起の良い言葉が並んでいます。皆さま、良いお年をお迎えくださいますように。
ハボタン(葉牡丹)
学名Brassica oleracea
英語名ornamental cabbage
アブラナ科アブラナ属の二年草・多年草。西部ヨーロッパ原産。花期は4~5月で、アブラナと同じ黄色い十字花をつける。葉が寒さで色づく11~2月が観賞期。
森乃おと
俳人
広島県福山市出身。野にある草花や歳時記をこよなく愛好する。好きな季節は、緑が育まれる青い梅雨。そして豊かに結実する秋。著書に『草の辞典』『七十二候のゆうるり歳時記手帖』。『絶滅生物図誌』では文章を担当。2020年3月に『たんぽぽの秘密』を刊行。(すべて雷鳥社刊)
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