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春菊しゅんぎく

旬のもの 2022.01.24

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料理人の川口屋薫です。 今日は冬が旬の『春菊』のお話です。

春菊の名前の由来は、春に花が咲き、葉の形が菊に似ているためと言われています。
四季、季語、菊の意味合いから、和の衣を羽織ったような名前ですが、原産地はヨーロッパの地中海沿岸で、ハナゾノシュンギクの変種とされています。ヨーロッパでは黄色や白色のグラデーションがかった花で観賞用として楽しまれていましたが、アジアでは、野菜として改良され、日本には室町時代末に中国から伝わったと言われています。
私達に必要とされたからこそ、約450年もの歴史を繋いで来れたのかもしれません。

春菊は、日照時間が短く、風邪が流行る冬の季節にぴったりの野菜です。
ビタミンC、β-カロテン、ビタミンKや鉄、カルシウム、カリウムなどのミネラルが豊富に含まれていて、風邪予防、皮膚、粘膜、骨を丈夫にしてくれる働きがあります。
昔は薬として重宝されていましたが、今は健康な体づくりに欠かせない緑黄色野菜になっています。

春菊好きな方には、あの香りがたまらないと思います。α-ピネンなど10種類からなる精油成分は、檜や紫蘇にも含まれているものもあり、胃腸の働きを良くしたり、リラックス効果が期待できるそうです。
さらに、春菊独特の苦味と甘味に魅了される人も多いだろうと思います。

さて、春菊の生産量一位になった大阪府に住んでいる私は、おいしさの秘密をもっと知りたくなり、栽培の盛んな泉州地域へ車を走らせました。江戸時代から続く先祖代々の土地を受け継ぎ菊菜(関西ではキクナとも呼ばれています)を作る、西阪農園さんに会いにいきました。

西阪農園さんのハウス 写真提供:川口屋薫

代表の西阪さんはこう言います。
「おいしい菊菜を作って、食べてもらいたい」

この気持ちが強まったのは、西阪農園さんのハウスが、2018年に大阪を襲った台風で全壊してしまったことがきっかけでした。その後、ボランティアの力を借りながら少しずつ立て直しを図り、今では土づくりから収穫、出荷を今までの常識にとらわれずに、農業に向き合い続けていました。そんな話を聞いていると、コロナ禍が始まった時の私達の状況と重なり、胸が熱くなりました。

西阪農園さんが育てた菊菜 写真提供:川口屋薫

コロナ禍をきっかけに、仕事、プライベートを考える転機を迎えた人はきっと多かっただろうと思います。おうち時間が増えたことで、調理に手間をかけたり、食材にこだわり、旬のものを生活に取り入れたくなったりとライフスタイルを根本から見直すきっかけをもらったような気がします。

だからこそ、西阪さんのような農家さん達の存在がありがたく、おいしい野菜が生まれるのかもしれません。それは、素敵な循環だなぁと感じます。

西阪農園さんのハウス 写真提供:川口屋薫

ちなみに、健康な春菊や菊菜は細胞がしっかりしているそうです。たしかに、野菜も生き物だから、人間と一緒ですね。

さて、おいしい春菊や菊菜を食べてみたくなりますね。
どのように料理したら良さを引き出せるのでしょうか?

菊菜 写真提供:川口屋薫

西阪さんは、「まずは生でもおひたしでも何もつけずに食べて、味を感じてみてください」と教えてくれました。
爽やかな香り、梨のような甘さ、旨味になる苦味、余韻のように感じるコク..まるで野菜や、農家さんと心の中で会話しているような感覚になります。
この経験を繰り返していくと、感性が磨かれ、自然とおいしい春菊や菊菜に出会いやすくなるのです。

葉の厚さややわらかさを見るのも良くて、健康な春菊、菊菜はみずみずしく、生き生きしています。
そこで今日は、冬に甘味が増す人参、蕪、大根などを使ったサラダをご紹介します。

春菊(菊菜)のサラダ

写真提供:川口屋薫

材料(2人前)

• 春菊(菊菜) 60g
• A人参、蕪、大根、りんご、八朔など お好みの量


(柚子ドレッシング)
• 柚子の絞り汁 大さじ2
• オリーブオイル 大さじ1
• 砂糖 小さじ2
• 塩 小さじ1

写真提供:川口屋薫

作り方

① Aの野菜を薄切りにして、軽く塩を振ります。
② 春菊(菊菜)を軽く水洗いして、キッチンペーパーで水気を拭き取ります。手でちぎり、葉、茎と分けて盛り付けます。
③ 柚子ドレッシングの調味料を全て加えて、混ぜ合わせます。
④ Aの野菜をキッチンペーパーに包んで、軽く絞って水気を切ります。
⑤ 春菊(菊菜)のそれぞれの部分ずつ、食べて味の違いを味わってから、最後に他の野菜と混ぜて、ドレッシングを和えて召し上がってください。

春菊は、ギザギザの葉としっかりした茎で摘み取り型が特徴です。
それに対して菊菜は、葉のユラユラとした丸っこい葉とやわらかい茎の株取り型が特徴なので、菊菜を使う場合は、生でサラダや軽く火を通すくらいが合いそうです。
牡蠣鍋にさっとしゃぶしゃぶにすると、鮮やかな緑色になり、生とはまた違う食感と風味を感じることができると思いますよ。

写真提供:川口屋薫
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川口屋薫

料理人
Le btagev(ルブタジベ)代表。大阪出身。料理人。珍しいやさいの定期便をしています。風薫る季節5月が過ごしやすくて一番好きです。イタリア在住中、ヨーロッパ野菜に恋し、日本の野菜が恋しくなったのをきっかけに野菜に関わる仕事をしています。 趣味 囲碁

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