こんにちは、料理人の庄本彩美です。今日は「秋鯖」のお話です。
秋が旬の魚と言えば、さんまや鮭が有名だが、鯖も忘れてはならない。
秋(10〜11月頃)にとれた鯖を「秋鯖」、冬(12〜翌2月頃)にとれた鯖を「冬鯖」と呼ぶそうだ。この時期は、鯖の脂が最ものっていて美味しいと言われている。

鯖料理といえば味噌煮や塩焼き、酢締めされたものがイメージされるが、おすすめしたい一品がある。それは「鯖そうめん」という滋賀・長浜の郷土料理である。
シンプルに焼き鯖とそうめんが味付けされたものなのだが、以前友人に有名なお店に連れて行ってもらい、私は鯖そうめんの虜になってしまった。
その店は長浜駅すぐの所、かつて宿場町として栄えた黒壁の街並みの一角にある。
表通りを曲がると、店の方から味醂と醤油を煮詰めた食欲をそそる香りが漂っていた。懐かしい佇まいの古民家の前には、鯖そうめんを求める行列がずらりとできて、とても期待が膨らんだ。

座敷に座りメニューを頼むと、すぐに鯖そうめんは運ばれてきた。甘露煮にされた鯖がどんっと乗り、その煮汁で味付けされたそうめんが、整然と盛り付けられている。
鯖に箸を入れてみると、ほろほろと身が崩れた。2日かけて煮込んでいるらしく、中までしっかり味が染み込み、骨の硬さも気にならない。
そうめんはつるつると喉越しがよく、ほぐした鯖と一緒に箸が進む。上にかかった山椒の爽やかさが全体の濃さを軽くしていて、とても好みの味だ。
そうめんを使っているのでメイン料理かと思っていたが、どちらかというとおかずの立ち位置になるらしい。私はお米が恋しくなってしまった。

長浜の鯖そうめんは「五月見舞い」という風習から来ている。春になると農家に嫁いだ娘を気遣い、田植えの繁忙時期に焼き鯖を嫁ぎ先へ贈るというものだ。農繁期で忙しい際、簡単に調理できる料理として重宝されていたそうだ。
鯖そうめんのことを考えると、私はついスーパーで鯖を探してしまう。鮮魚コーナーをぐるっとまわってみると、これは鯖好きの京都だからか、様々な鯖が販売されていることを知った。生鯖に塩鯖、しめ鯖もある。さらに魚の種類もいくつかあることに気がついた。

日本では一般的に鯖は「真鯖」のことを指すそうだ。真鯖は背の部分にサバ柄と呼ばれる模様があり、お腹は白い。産卵を終え、秋に北の冷たい海から南下してきた鯖はまるまると太って脂が乗っており、旨みがぐんぐん増している。煮ても焼いても口の中でとろける美味しさだという。
他にも、腹部にごまのような斑点がある「ゴマ鯖」とはっきりした模様の「タイヘイヨウ鯖」があるそうだ。
ゴマ鯖は一年中ほとんど味が変わらず、真鯖より少なくあっさりしているのが持ち味だそう。真鯖の味が落ちる季節に、それに代わって大量に漁獲されるため、夏が旬となるという。
ノルウェー産の「タイセイヨウ鯖」は真鯖とは違う味だが、脂が多く真鯖と並んで日本の食卓では一般的になっているそうだ。

家庭で鯖そうめんを作る際には、お店のように、身の中まで味を染み込ませるのは難しいかもしれないが、脂が乗っている鯖なら、短時間の料理でも鯖の柔らかさを楽しめるだろう。まずは真鯖で作ってみて、次回はタイヘイヨウ鯖で試してみようか。食欲が落ちがちな夏場は、旬のゴマ鯖を使ってあっさり楽しむのもいいだろう。
これから「秋鯖」の季節が来る。旬の秋鯖をさまざまな料理法で楽しんでみてほしい。そして、イチオシの鯖そうめんの美味しさにも、ぜひ出会ってみてほしい。

庄本彩美
料理家・「円卓」主宰
山口県出身、京都府在住。好きな季節は初夏。自分が生まれた季節なので。看護師の経験を経て、料理への関心を深める。京都で「料理から季節を感じて暮らす」をコンセプトに、お弁当作成やケータリング、味噌作りなど手しごとの会を行う。野菜の力を引き出すような料理を心がけています。
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