こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
朝晩の空気が少しずつ涼しくなり、なんとなく夜の時間が楽しみになってくる、秋。
窓を開ければ、どこからか虫の鳴く声が響いてきて、耳を澄ませていると心が穏やかに整う気がしてきます。
そういえば幼い頃、秋になると繰り返し歌った『虫のこえ』という唱歌にも、♪あきの夜長を鳴き通す、ああおもしろい虫のこえ♪、というフレーズがありました。
私たちが秋の気配を感じ取る理由には、空の高さや雲の形や空気の涼しさなど、さまざまなものがありますが、その中のひとつに「夜の長さ」も含まれているのではないでしょうか。
「なんとなく日が短くなってきたよね」「最近、暗くなるのが早いね」――そんな会話も、誰かと一緒に秋を実感できる瞬間です。
夜が日に日に長くなっていく様を表現する言葉――「夜長」は、現代の日常生活の中ではあまり登場しないかもしれませんが、聞いただけでも不思議と秋の存在感を十分に思い描くことができる気がします。
実際に、短い言葉で情景や想いを表現する俳句の世界では、この言葉が秋の季語として使われているのだとか。
そして、似た使い方の季語が、他の四季にも同じようにあるのをご存知でしょうか?
春の日永(ひなが)、夏の短夜(みじかよ)、秋の夜長、冬の短日(たんじつ)。まるで、兄弟姉妹のような言葉ですよね。どれも、季節ごとの時間の長さや感じ方が、手に取るように分かるのが素敵です。
ちなみに、具体的な「秋の夜長」の期間を挙げるとするならば、昼と夜が同じになる秋分の日(2022年は9月23日)から、冬の始まりである立冬(2022年は11月7日)までの間を指す場合が多いようです。
他の季節と比べても、なんとなく駆け足で過ぎ去ってしまうように思える秋ですが、せっかくやっと過ごしやすく、心地よい気候になってきた頃。
ぜひ考えてみたいのは、「今年は、夜長(長い夜)をどう過ごすか?」ということについてです。
読書の秋で、溜め込んでいた、読みたかった本を読んでみたり。
食欲の秋で、美味しいお茶やお菓子を、こっそり楽しんでみたり。
運動の秋で、涼しい夜に外を走って、健康的に体を動かしてみたり。
「夜長」は、秋がくれた素敵なボーナスタイムのように、好きなことや後回しにしてしまっていたことに時間を使ってみたい気もします。
皆さんも、改めて「自分のやりたかったこと、好きな時間の過ごし方ってなんだっけ?」と、心に問いかけてみませんか。
季節の移り変わりを、心と体で思い切り感じながら過ごすひとときは、人生をより幸せに充実させてくれるものです。
秋は、まだ始まったばかり。
身の回りにある、美しい自然の風景にも目を向けてみながら、たくさんの「素敵なもの」を体感し、経験する季節にしてくださいね。
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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