こんにちは。和菓子コーディネーターのせせなおこです。
今年の冬は特に寒さが続き、何度も雪に出会いました。寒さが苦手な私はなかなか厳しい冬を過ごしています。しかし、暦の上では春。和菓子屋さんに行くと春の和菓子が咲いていて、心がパッと明るくなります。
和菓子屋さんで今年一番に見つけたのは、桜の花びらがちょこんと座った道明寺桜餅。私は九州出身なので、やっぱり道明寺タイプの桜餅に馴染みがあります。ピンク色のもち米の周りには洋服を纏うかのように桜の葉っぱが巻いてあります。まるでお雛様のようで、見ているだけでかわいらしい気持ちに。
桜餅が誕生したのは1717年。なんと約300年も前に生まれたお菓子です。そして、生まれた理由がとっても斬新。長命寺というお寺の門番だった山本新六さんが、隅田川沿いの桜の落ち葉を「何かに生かせないだろうか」と桜の葉っぱを塩漬けにしたことがはじまりだったのだそう。しかし、葉っぱだけでは売れなかったので、小麦粉を解いて焼いた薄い生地であんこを挟んだものを包んで売るとこれが大人気に!作っても作っても売れていく、江戸の名物となりました。現在でも当時と同じ姿のまま「長命寺桜餅」として売られています。
その後、”どうやら江戸で桜餅が流行っているらしい!”と、噂を聞いた大阪の和菓子屋さんが道明寺粉を使って作られたのが「道明寺桜餅(関西風桜餅)」です。私は東京に住むまで道明寺桜餅しか知らなかったため、東京で”関西風”や”道明寺”と表記してある桜餅をみると「どういうこと!?!?」と最初は少しパニックに陥っていました。
桜餅は口に近づけると桜餅独特の香りがフワッと漂います。カプッと口に入れると、甘い生地とやさしくなめらかなこしあん、そこに少ししょっぱい桜の花びらがアクセントになって一気に春がやってきます。
暦の上では春、でも実際はまだまだ寒い…そんな春がやってくるのを待つこの時期が一年の中で一番お気に入りだったりします。やってくるとすぐに去ってしまうから。何かを待ち侘びる時間を愛おしいなと思います。和菓子の良さはそんな待ち遠しい時間を共に彩ってくれること。春までもう少し和菓子と共にわくわくして過ごしたいものです。
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