漬物男子、田中友規です。
瓜というのはなんと種類の多いことだろう。
きゅうり、ゴーヤ、ズッキーニ、冬瓜、そしてメロンにすいかも全部ウリ科。ウリ科は水分をたくさん含んでおり、身体を冷やす効果があると言われています。
夏場に食べたくなる、酢を使ったさっぱりとした料理にどれもよく合います。
今日のテーマは、その中でもちょっと変わった立場の南瓜(かぼちゃ)です。
収穫は夏なのに、美味しいのは冬?
南瓜の煮物や天ぷらは、甘くほっこりした食感がどうも夏にはしっくりきません。夏場に食べる南瓜ってどんなものでしょう。
スーパーには海外産の南瓜もたくさんあり、一年中どこでも買える南瓜。
通常、国産南瓜の栽培は3月ごろに種を蒔き、早ければ6月ごろから収穫だそう。
しかしこんなに早い時期から収穫して夏の南瓜って美味しいの?
調べてみると、実は南瓜が美味しくなる秘密は収穫期と味の旬に時間差があることだという。夏に収穫した若い南瓜を追熟することで、冬にはグッと甘みを増した美味しさに変化するそう。
なるほど、僕たちはあまり普段から追熟という言葉に馴染みがないが、身近な野菜も追熟していることも少なくない。玉ねぎやニンニクがヒモに結ばれてぶらさがっている風景がまさにそれだし、低温冷凍庫で貯蔵しグッと甘みが増したじゃがいもやにんじんは本当に美味しい。
中でも南瓜は大きいので、じっくり時間をかけて追熟すれば美味しくなる野菜の代表格なのだ。
じゃあやっぱり南瓜を食べるなら冬ですな、と結論づけるのはちょっと待って。
夏の南瓜はシャキッとした食感とすっきりとした甘みがいいのです。
おそらくほとんどの方が、生で南瓜を食べたことはないと思いますが、思いの外、水分が豊富で、かりっしゃくっとした歯応えはキュウリのようで、やっぱりウリ科の野菜だなぁと食感から伝わってきます。
同じウリの仲間なのであれば、調理する手順は同じ。
薄切りにした南瓜が重なり合わないように全体に塩を振り、しっかりと水分を抜きます。1時間もすればしんなり。あの硬い南瓜の印象がぐっと物腰柔らかく、生で食べられますよ、という雰囲気が出てくるのだ。塩で揉んだだけでも美味しく食べられますが、おすすめは酢漬けです。軽い食感と酸味がよく合います。
実は僕はサラダを作っている感覚なのだが、よくよく考えるとこれも漬物。
日本の漬物とほとんど同じ調理法なのですが、僕はこれを「南瓜のマリネ」と呼んでいます。マリネの語源はマリーン=海。海水につけて食材を保存したことに由来していると言われているわけで、これはこれで漬物ですよね。
「かぼちゃの浅漬け」が老舗の漬物屋でも扱っている人気商品のひとつであることは知っていたのですが、どうも手が伸びなかったのは「南瓜の漬物はご飯に合うか」にいまいち確信が持てなかったのだ。
僕の結論からすると、夏の南瓜のマリネにはパンが合う。
マヨネーズをちょっと添えて、クロワッサンでもトーストでも。
キュウリとズッキーニの間くらいをイメージしてもらえればわかりやすいだろうか。ハムやベーコンを乗せてもいい。
南瓜は、夏と冬で別の野菜。そんなふうに考えてもいいのかもしれない。
夏の南瓜を楽しんだら、今度は冬の南瓜が気になってきた。
いまから何を作ろうか、ほくほくした気持ちを追熟しながらレシピを考える6月なのでした。
田中友規
料理家・漬物男子
東京都出身、京都府在住。真夏のシンガポールをこよなく愛する料理研究家でありデザイナー。保存食に魅了され、漬物専用ポットPicklestoneを自ら開発してしまった「漬物男子」で世界中のお漬物を食べ歩きながら、日々料理とのペアリングを研究中。
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