毎朝の朝ごはん。皆さんは何を食べているでしょうか。パン派ご飯派?はたまたグラノーラ?サラダ?色々あるとおもいますが、一日のはじまりにはできれば良い朝食を摂りたいですよね。
養生の観点からの良い朝食とは、温かく、薄味で脂っこくないものが良いとされます。腹持ちを良くするために少々の油は必要ですが、朝からこってりしたものを食べると、消化にエネルギーを消耗してしまい、元気に活動できません。朝食には消化しやすく、エネルギー効率が良いものがおすすめです。
そんなときは「おかゆ」が、いいですよ。

朝は一日の中で一番体温が下がっているとき。そんなときに冷たい食事をしては、快適に動き出せません。冷えている体に冷たい食事をすると、まず体は食べたものを温めることを先にしなくてはいけません。冷たいうんちも冷たいおしっこもでませんよね?これは体の中の熱が食べ物に奪われたということです。
熱はエネルギーですから、体のエネルギーが食べ物に移ったとも言えます。温かい食事を取っていれば他に使えたエネルギーが、食べたものを温めることに奪われてしまうのです。そして消化そのものにもエネルギーが必要なので、冷たい食事は、温める、消化するという2つの作業をすることで温かい食事を食べる時以上に消耗するわけです。

なので、温かくてあっさり味のおかゆはぴったりなんです。原料のお米は、薬膳では冷やしも温めもしない平性で、胃腸を整え元気を補い、疲労を回復し、心を落ち着けてくれる食材です。私の恩師はよく、軟便や下痢、食欲不振を訴える患者さんに、「おかゆは胃腸薬になるからね。お腹の調子が悪くなったらおかゆを食べましょうね」と、伝えていました。
朝食をおかゆにすると、「お腹が空くんです」という方がいらっしゃいます。こういう方は、満腹に慣れ過ぎているのかもしれません。本来体は満腹状態よりも“ちょっとお腹が空いている状態のほうが正常”ぐらいに思っておくほうが良いと思います。そのほうが体も軽く、頭もスッキリしますからね。

お腹は空いていいんです。そもそもお腹は空かないといけません。空いているということは胃が空っぽなので、掃除が出来て、休めているということです。まあ鳴るのが恥ずかしいとかはわかりますがね。それもしばらくすると慣れて、酷くグーグーならなくなりますよ。
・便通がよくなった
・体重が減った
・頭痛が減った
・生理痛がなくなった
・健康診断の結果が良くなった
・肌がきれいになった
・胃もたれの改善
・暴食しなくなった
・菓子パンやお菓子を欲さなくなった
これらは実際に朝ごはんをおかゆにすることで寄せられた皆さんの声です。皆さん特別な養生はしておらず、薬膳の知識もあるわけではなく、ただ、朝食をおかゆに変えただけです。私はこれらをおかゆの“福作用”と呼んでいます。おかゆは懐が深いので、どんな食材とも相性がいいのも嬉しいですね。

温かいおかゆを朝、食べることで、その他、消化を促し元気を補えて、体温を調整して病気への抵抗力を上げてくれます。様々な具材を加えることで炭水化物だけでなく、タンパク質や栄養素の摂取バランスもよくなります。また、食物繊維を含んだ糖質が血糖値を安定させ爆食いを防ぎ、腸内環境を改善。あったかさと心地よさがリラックスを促し、トッピングを変えることで飽きずに楽しめ、低カロリーかつヘルシーな食材のため、ダイエットや健康管理にも適しています。おかゆを日々食べることで、心も体も元気になれます。

うるち米は、薬膳的に寒熱の偏りが無い平性の性質を持ち、冷え性の人ものぼせ気味の人も安心して食べられます。健脾益気、和胃除煩、止瀉止痢という働きを持ち、胃腸を整え元気を補い、下痢を改善します。朝ごはんにおかゆを摂ることで、元気に活動できるでしょう。また、具体的な薬膳効果を求める場合は、具材の選択にも注意を払い、体調や季節に合わせたものを選びましょう。

禅宗では粥に十の功徳があるとされます。正式には「粥有十利(しゅうゆうじり)」といって、「色、力、寿、詞清弁、宿食除、風除、飢消、渇消、大小便調適」の十の徳があるとされますので、やっぱりおかゆを見直したいですね。
粥有十利
1. 色:顔や肌の色つやが良くなる
2. 力:体力と気力の回復
3. 寿:長寿となる
4. 楽:胃に優しく、食べ過ぎず楽
5. 詞清弁:明朗で言葉が清くさわやかになる
6. 宿食除:食べたものが残らず
7. 風除:風邪を防ぐ
8. 飢消:飢えを癒す
9. 渇消:のどの渇きを癒す
10. 大小便調適:便通を良くする
こんなに健康効果が期待できるおかゆですが、一つ気をつけて頂きたいことがあります。それは「噛むこと」。意外かもしれませんが、おかゆも噛んで食べるんです。柔らかいおかゆでも食物繊維を多く含む米をちゃんと吸収するにはしっかり噛むことが大事ですよ。噛むことで裁断されて、胃腸の仕事を減らせて更に休ませることが出来ますからね。

もう一点ありました!おかゆは、あくまで生米を炊いて作るものです。そうすることで米が弾けてより消化しやすくなります。炊いた米に湯を足してつくるのは雑炊やおじや。これらはお茶漬けの延長にあるものですね。おかゆよりも更にしっかり噛むことを意識しないと、水分が多いので米粒のままの飲み込んでしまいがちです。そうすると消化に良いどころか胃腸の負担となりますので、気をつけましょう。
温かいおかゆを朝ごはんに食べて元気に一日をスタートさせましょう!

櫻井大典
国際中医専門員・漢方専門家
北海道出身。好きな季節は、雪がふる冬。真っ白な世界、匂いも音も感じない世界が好きです。冬は雪があったほうが好きです。SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず人気に。著書『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』 (ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)など。
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