こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。
寒さの中にも少しずつ、暖かさを感じる日が増えてきました。
外を歩いていると、草花が芽吹いているのを見つけたり、日の出の時間が早くなっていることに気が付いたり……。
自然界の中には、長い冬の終わりと春の訪れを告げる、さまざまな知らせを見つけることができますね。
雪が身近な地域では、そんな知らせの一つに「雪解」があるのではないでしょうか。
「ゆきどけ」、もしくは「ゆきげ」とも読まれるこの言葉は、初春(2月)の季語として俳句の世界でもよく使われます。
春という季節への期待や希望を、端的に表現しているといっても良いかもしれません。
雪国や山岳地帯では、冬の間に降り積もっていた雪が春になって暖かさとともに少しずつ解け出してくると、川には流れの勢いが増して、湖などは水の動きが感じられるようになってきます。
気温の上昇はもちろんですが、北風に代わって吹くようになる東風(こち)が、雪を解かすのだと言われています。
確かに、この季節に吹く風は冷たいときもありますが、どこか柔らかさを感じるときもあるものです。
昼間は特に、木々や草花、建物の上にあった雪が解けて日の光に水滴が輝いている様子が、神秘的な美しさを感じさせてくれますね。
植物の芽吹きとともに、次第に動物たちの動きも活発になってくるこの頃は、まるで氷の下で眠っていた、命のぬくもりが目を覚ましているようにも思えます。
言葉ひとつを耳にしただけで、自然界の中の「春の訪れ」をここまで想像させてくれるのが、日本語の素敵なところだとしみじみ感じます。
そしてふと思ったのは、言葉通りに自然界の「雪解」だけでなく、人の心にもたらされる「雪解」もあるのではないかということ。
人の一生の中では、まるで冬のように思える時期も確かにあって、固まってしまった根雪のように心が凍り付いてしまうこともあるかもしれません。
でも、きっとそれも季節と同じように巡ってゆき、ずっと続くわけではないのです。
暖かいぬくもりを与えてくれる太陽や、やさしく吹いてくる東風のような存在に、心が目を覚まして動き出すこともあることでしょう。
それを信じて希望を失わなければ、必ず「雪解」の時は訪れるはず。
自然界も雪解を迎えるこの季節にこそ、そのことを何度でも思い出してみてくださいね。
紺野うみ
巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。
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