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茶摘みちゃつみ

旬のもの 2024.05.02

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こんにちは。巫女ライターの紺野うみです。

恐らく多くの方が小学校で習い歌ったであろうこの歌、みなさまも記憶に残っているでしょうか?

♪夏も近づく 八十八夜
野にも山にも 若葉が茂る
あれに見えるは 茶摘みぢやないか
あかねだすきに 菅(すげ)の笠♪

爽やかな、初夏の茶畑で見られる光景を歌った『茶つみ』という歌ですが、今から百年以上前に小学校の教科書に載せるため作られた「文部省唱歌」です。
そののどかで明るい雰囲気と、まさに茶摘みを行いながら口ずさめるような心地よいリズムは、不思議と今の時代に聞いても古さを感じさせません。

♪日和つづきの 今日此の頃を
心のどかに 摘みつつ歌ふ
摘めよ摘め摘め 摘まねばならぬ
摘まにや日本の 茶にならぬ♪

これまでもこれからも、日本のどこかで茶摘みをしてくれている人が、きっと笑顔で歌っているように思える、そんな歌ですね。
今は茶葉の収穫を機械で行っているところが多いのかもしれませんが、かつてはお茶摘みと呼ばれる人がひとつひとつ茶葉を摘みとり、それをお茶師と呼ばれる人が手もみして加工することによって、私たちのもとへ届くお茶っ葉になっていました。

歌に出てくる茜色のたすきをかけた「お茶摘み」さんの姿からもなんとなく分かるように、茶摘みは繊細な手仕事を得意とする女性が行い、力も必要な手もみを行う「お茶師」さんは男性の役割だったことが多いのだとか。
紺色の着物に茜色のたすき姿が映える、初夏の茶畑に女性たちが並ぶ姿は、「今年もこの季節がやってきたなぁ」と、日本ならではの季節を感じさせる美しい光景だったに違いありません。

茶摘みの時期は、歌にもあるように立春から数えて88日目から100日目の頃から始まり、一気に10日間ほどで摘み終えてしまわなければならなかったそうです。
この季節は、きっと近隣の女性たちが一堂に会して、皆で協力しながら茶摘みを行ったのではないでしょうか。

手摘みの場合「一心一葉」と言って、一番上の芽と二枚の葉だけを丁寧に摘み取ることができるため、硬い部分が混ざったり葉切れが起きたりすることもなく、品質の良いお茶になります。
今でも高級な茶葉は、手摘みにこだわって作られていることが多いようです。

お茶はもともと非常にデリケートな食品で、湿気・温度・酸素・光などの影響を繊細に受けて、品質が変化しやすいもの。
だからこそ、葉を収穫する段階からこだわり抜いて丁寧に作られ、鮮度も保管状態も良い状態で私たちの手に届いたものは、驚くほど美味しいお茶になるのです。

私も昔、こだわって作られた高級なお茶をいただいたことがあったのですが、「えっ、お茶ってこんな味だっけ? こんなに美味しいの?」とカルチャーショックを受けたことを覚えています。
そういえば、私も緑茶と言えば、最近は手軽なペットボトルのものばかり口にしていたように思います。
なんだか無性に、急須で丁寧に淹れた、本当に美味しい茶葉を使った一杯のお茶を飲みたくなってしまいました。

忙しさに追われる現代人にとって、手軽で安価な食品が意味を持つことも確かに分かりますが、改めて考えてみると「大切に作られた本当に美味しいもの」「身体が喜びハッとするようなもの」を口にすることは、私たちの人生にとってかけがえのないひとときなのではないでしょうか。

私も今年は、きちんとお茶屋さんに足を運んでお気に入りの茶葉を探し、急須で美味しい緑茶を淹れてたくさん味わいたいなと思っています。
自分へのご褒美に、大切な人との一息に、お客様へのおもてなしに……。
ひとりの日本人として、茶摘みの光景を思い浮かべながら、心と体を労わる時間を持てたら素敵ですね。

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紺野うみ

巫女ライター・神職見習い
東京出身、東京在住。好きな季節は、春。生き物たちが元気に動き出す、希望の季節。好きなことは、ものを書くこと、神社めぐり、自然散策。専門分野は神社・神道・生き方・心・自己分析に関する執筆活動。平日はライター、休日は巫女として神社で奉職中。

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